住宅

「雨漏りリスクの高い劣化」低気密低断熱住宅ルポ⑭

こんにちは。一級建築士の神長宏明です。私は、エアコンを24時間つけっぱなしでも月々の光熱費が1万円以下で済む高気密高断熱住宅を設計していますが、住んでいるのは【低気密低断熱住宅】です。この連載では、低気密低断熱住宅の住み心地を数回に分けてレポートしていきます。14回目は、耐震性能が低いと雨漏りのリスクが上がってしまう話です。

神長家の概要
■家賃:約9万円/月(3,250万円のローンを組んだときと月の返済額は大体同じ)
■立地:宇都宮駅から車で15分
■築年数:築30年(1991年8月竣工)
■延べ床面積:125.44㎡(37.94坪)
■断熱性能:築年数と天井断熱材の状況から昭和55年基準と推定(昭和55年区域区分Ⅲ・栃木県・Q値4.7)。無断熱ではなく、断熱材は気持ち程度入っている状態

間取りは、一般的な玄関ホールを挟んで、LDKと和室に分かれている。2階の15帖の洋室は神長さんの仕事部屋として使っている

わが家に忍び寄る雨漏りリスク

最近、地震が多いですね。
築30年のわが家は低断熱・低気密に加え、耐震等級1の低耐震の家。マンションに住んでいた時と比べ、小さな地震でもかなり揺れを感じます。大雨、台風のニュースを見るたびに、娘が「家が壊れたらどうしよう」と心配しています。子どもからしたら、精神的ストレスを感じているわけですね。
今回は、地震で外壁に影響はないかどうか、外壁の調査をしました。

外壁に走る無数のひび割れ

私はこれまで学校施設などの耐震診断・老朽度調査・大規模改修工事・東日本大震災復旧調査で約80棟の調査業務を行った経験があります。そのときと同じ視点(気持ち)でわが家の外壁(モルタル仕上げ)も調査。
具体的には、ひび割れ、モルタルやタイルの浮き、雨漏り、シーリングの劣化などを見て回りました。

一番多かったのは窓廻りのひび割れです。2階だと外壁落下の危険性があります。

LD南東側の窓まわりにひび割れ発見(2021年12月11日撮影)

コンクリート系、セメント系の壁はひび割れしやすいといわれていますが、下の写真のようにLD北東側には破損レベルの亀裂も見つけました。

約3.3㎜外壁が膨れ上がるくらいひび割れ、浮いている

ひび割れの原因は地震です。耐震性能が低いので、家が激しく揺らされて外壁にひび割れが生じたのでしょう。
ひび割れは、隣り合う下地同士の強度が異なる場所や、下地の継ぎ目(ジョイント部)などによく発生します。なかでも、窓や玄関ドアなどの開口部周辺は特にできやすいです。

外壁のひび割れが耐震性能を低下させる要因にはなりませんが、雨漏れや外壁&外壁下地の腐食の進行、外壁の落下のリスクが高まります。

サイディングの外壁は雨漏りリスクに注意

わが家はモルタル外壁なのでひび割れが目立ちますが、サイディング外壁の家はシーリング(コーキング)の劣化が起こります。サイディングは基本的に一枚0.45m×3mの大きさなので、繋ぎ目にシーリングというゴムのようなものを注入します。

このシーリングですが、8年以上経つと劣化し始め、10年を超えてくると徐々に裂けてしまいます。

築16年の家(窯業系サイディング仕上げ)。シーリングが避けており、防水機能がなくなっている

下記の写真はバルコニー部分に窯業系サイディングを採用した例です。分かりにくいのですが、写真で見える部分だけでも、シーリング箇所が多くあるのが分かります。

ベランダ廻りのみの窯業系サイディングを使用した

なので、私が設計する家には左官材(塗り壁)を採用するようにしています。

塗り壁の外壁にはつなぎ目(シーリング)は発生しません。

クリーム色の「ジョリパットネオ」の塗り壁

黒の「ジョリパットネオ」の塗り壁

目地が一切ないと、外壁がすっきりしてきれいだと思いませんか?

私は過去に80棟ほどの学校施設などの老朽度診断をしてきました。その経験のなかで、雨漏りなどの原因がシーリングの劣化であることがほとんどでした。サイディング自体は長持ちするかもしれないけれど、「シーリングの寿命は長くはない」ことは知っていただきたいです。

ひび割れしにくい施工方法

最後に、塗り壁のひび割れをなるべく少なくする施工方法をお伝えします。

塗り壁の外壁も内壁も共通して言えますが、「ノンクラック工法」という施工方法を採用しています。
写真左側の青・赤・緑の3つのサイズの石膏ボードを使用すると、赤の上下でひび割れが発生しやすくなりますが、紫のように石膏ボードをくり抜くことで継ぎ目を少なくし、揺れによる建材同士の干渉をなくしています。

左側の赤の上下でひび割れが発生しやすい

上の紫の状態。窓廻りに中途半端な石膏ボードを使わないことで継ぎ目が出ない。結果、ひび割れしにくい

また、釘を打ったところは地震時にひびが発生したり、わが家の外壁のように割れが発生したりします。基本的に防水シートを施工しているので、釘の劣化によって室内への漏水・雨漏りにいきなりは繋がりませんが、上記で述べた通り、外壁(サイディング)が雨水を含み膨張やひび割れを起こすと、外壁が落下することもあります。なので、釘の頭にはサイディングと同色の補修液をはみ出さずに塗るとよいでしょう。

施工方法は会社によって違うので、担当者に聞いてください。

施工の質は新築時に判断できない

最後に、連載⑫、⑬、⑭と続けて経年劣化の状況をレポートしてきました。
そこから言えることは、施工の良し悪しは年数が経ってはじめて証明されるということ。当時は今のように高断熱・高気密や耐震性能を上げる技術が普及しておらず、施工が間違っているなんて思わなかったのかもしれません。しかし、現在は数十年先も安心して暮らせる家のつくり方を学べる土壌が整っています。

これから家づくりをする人へのアドバイスとして、工務店が建てた家の中でも少し年月が経っているものを見ることをおすすめします。その時に、不具合(連載、今回のようなハウスダストによる汚れ、外壁のひび割れなど)が起きていた場合、現在はどのように建材の選定を行い、施工の改善をしているかを聞いてみましょう。

大切なのは、職人や業者任せなのか、自社でしっかりと検証して過去の事例から改善策を立てているかどうかだと思います。

■コラム「子どもたちの成長」■

劣悪な温熱環境を除けば、戸建て住宅に住んでからマンション暮らしのときよりも家族の幸せを強く感じる瞬間が多くあります。その1つの理由に「庭」があります。夏は、約13坪の庭でキュウリとブロッコリー、バジルなどの家庭菜園を育てました。

花が大きくなってきたブロッコリー

バジルやイタリアンパセリなど、ハーブや野菜を家族みんなで育てている

キュウリは毎日、1本ずつ双子たちが順番に採っている。1本ずつの理由は、明日の楽しみができるから(2020年夏撮影)

収穫したキュウリを根昆布のだしで揉んで漬物をつくっているのですが、自分たちが採ったキュウリは美味しく感じるのか、よく食べています。

今回まで、家の劣化の話がメインでしたが、家の年数とともにそこに住む家族も成長していきます。ずっと住みたい家はどんな場所なのか、どんな過ごし方をしたいのかを家族で話し合う時間は、家づくりのなかでとても大切なことだと思っています。

次回は、「極寒の温熱シミュレーション」についてお話します。

・妻の口癖が「寒い」になった
・子どもと大人の温熱環境は違う
・子どもとのスキンシップの質
・夫婦のスキンシップの質

前回の記事:連載⑬「天井に表面結露発生!?」

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