「3つの換気設備の正しい知識」換気-空気の道をデザインする④

家にいる時間が圧倒的に増えることによって、俄然注目を浴びるようになった“換気”。設備設計者として第一線で活躍し、多くの著書を執筆している山田浩幸氏が、家における正しい換気の方法について解説します。

はじめに

人が家のなかで快適で安全に過ごすために、換気は重要な要素です。最近ではリモートワークの普及が進み、自宅で過ごす時間が確実に増えました。適切な換気はウイルス感染症対策にも有効であるといわれています。
 では、換気は具体的にどのように行えばよいのでしょうか? 本稿では、「換気の目的とメカニズム」「換気の方法(自然換気と機械換気)」「夏の換気・冬の換気」について、設備設計者として数多くの建物にかかわり、『世界で一番やさしい建築設備』『エアコンのいらない家』『建築設備パーフェクトマニュアル』『ストーリーで面白いほど頭に入る建築設備』(いずれもエクスナレッジ刊)の著者としてもおなじみの山田浩幸氏(yamada machinery office[ymo])に、それぞれのポイントを解説していただきました。

4 第3種換気の盲点-給気口-

 機械換気は第1種・第2種・第3種換気の3つに大別されます。戸建住宅で一般的なのは第3種換気です。第3種換気は、給気は自然換気、排気は機械換気という組み合わせ。機械排気によって部屋のなかを負圧にし、給気口から新鮮な空気を取り入れることで室内の換気を実施します。

第1 種換気とは、給気も排気も機械で行う方法。すべてが機械制御されているため、正確な換気が行える。第2 種換気とは、給気は機械、排気は自然で行う方法。給気口で汚染物質が除去されるため、常にきれいな空気を必要とするクリーンルームなどで採用されている。第3 種換気とは、給気は自然、排気は機械で行う方法

 第3種換気は全国的になじみのある換気方法かと思いますが、意匠設計者のなかにはその一角を担う「給気口の重要性」について理解が不足している方が少なからずいらっしゃいます。給気口が正しく設置されていないと、いくら換気扇を回しても室内の換気は正常に行われません。給気口の注意点も含め、第3種換気のポイントは以下のとおりです。

A:給気口を設ける位置
B:給気口の大きさと数
C:屋外フードの種類
D:換気扇の種類

 

A:給気口は壁の上部に

 給気口で特に注意してほしいのが、取り付け高さです。「壁面のノイズになる」という意匠上の理由から給気口を床面近くに設ける意匠設計者がいますが、これには大きなリスクが伴います。

 そのリスクとは、住まい手が給気口をふさいでしまうというリスクです。冬であれば「給気口からの冷気が足元を冷やすから」、通年であれば「給気口から室内の音が外に漏れるから」。そんな理由で給気口がふさがれてしまうことがよくあるのです。給気口がふさがれた状態では、いくら換気扇を回しても換気は成立しません。

 したがって、給気口から入ってくる外気は、ときに住まい手を不快にさせる可能性があるという想定に基づき、その位置はなるべく不快感を覚えさせない場所に設定しておく必要があります。具体的には、壁面の上部がお勧めです。意匠にこだわりたいのであれば、デザイン性の高い給気口などを使用して対処するとよいでしょう。

 このほか、「家具などで塞がれないような位置とする」「給湯器の廃ガスが入らない位置とする」「駐車場などの排気ガスが入らない位置とする」「エアコンの室外機の排熱が入らない位置とする」という点を頭に入れておきましょう。

給気口は壁面の高い位置に取り付ける。室内側は床面から1,600~1,800㎜程度とする。取り付け位置が高すぎると、エアフィルターの取り外しに手間がかかるので注意。「納谷森」では、1世帯当たりφ150の給気口が3カ所設けられている[B][写真:福岡将之]

キッチンの給気口も高い位置に取り付ける。 給気口と排気口の位置が近いとショートサーキット(外部から取り入れた新鮮な空気がすぐに排出されてしまうこと)が生じてしまうが、「納谷森」では、あえて給気と排気の距離を近づけて、外気の取り入れによる不快感をなくすように配慮している[写真:福岡将之]

B: 給気口の数は部屋の大きさに比例する

 給気口に必要な面積は部屋の大きさに応じて変わります。法律上の規定はありませんが、私の場合は部屋面積30㎡当たりφ150の給気口を最低2個以上設置するという基準を設けています(可能であれば3個)

 その場合、確保できる風量(排気量)は350〜400㎥/h程度です。給気口から十分な空気が入らないと、換気扇の能力がスペックどおりに発揮されません。それが、結果的に不十分な換気を生みだす原因となります。

戸建住宅における正しい換気(第3種換気)の例。自然換気と同様に、風の流れを1方向での経路で想定でする。給気が機能していないと、いくら換気扇が動いていてもまったく換気がされない。ここでは、リビング・ダイニングに2個の給気口を設置している。加えて、給気の風道にストレスを与えないことが重要。建具にはアンダーカットを設けたりする

 近年は、キッチン換気扇のパワーが強力になっています。それゆえ、給気口の面積が不足している室内でキッチン換気扇を回すと、室内が負圧になり玄関扉や窓の隙間からヒューヒューと音が聞こえてくることもあります。あるいは、エアコンからポコポコという音が発生することもあります。その場合は負圧の状態を解消するために、少しだけ窓を開けるようにしてください。

 

換気に関する詳しい内容は、YouTubeの動画でも視聴可能です。ぜひ、ご覧ください。

⑤につづく

③に戻る

こちらの記事もおすすめ

【PR】アイカ工業「フィオレストーン」の玄関部材を発売

2022/05/02

アイカ工業は、高級人造石「フィオレストーン」を使用した玄関部材「フィオレストーン框かまち」を発売しました。天然水晶が主成分で独特の奥行き感と光沢をもつため、マイホームの顔となるエントランス空間を華やかに演出します。

【PR】まるで壁が開くような親子ドア「GRANDE(グランデ)」

2022/07/27

室内ドア「フルハイトドア®」の製造・販売を行う神谷コーポレーション湘南は、従来のデザインとはまったく違い、壁自体が開いたように感じられる親子ドア「グランデ」を横浜ショールームに展示しています。

飛沫を吸う!?対面でも安心して会議ができるテーブル

動画 家具2020/10/16

コクヨ株式会社は、2020年10月13日、オフィスでの会議で生じる飛沫を吸引し室内への飛沫の拡散を防止する会議用テーブル「エアトリーブ」を発表しました。2020年12月より受注開始予定です。

【PR】「Nasta Interphone」 颯爽と現る。

設備2022/10/27

インターホンの固定概念を覆す製品が誕生しました。「Nasta Interphone」。防犯・宅配・スマホ…これからの暮らしに欠かせないキーワードに対応しつつ、住宅の顔を彩るにふさわしい美を備えています。「Nasta Interphone」で暮らしと住宅のデザインを変えましょう。

ワイヤレス給電技術「AirPlug™ 」が建築界に登場。

2022/10/26

ワイヤレス給電技術を手がけるエイターリンクが、最大17mの長距離でも効率よく給電できる世界初の技術「AirPlug™」を実用化しました。「竹中工務店静岡営業所」では「AirPlug™」を採用。オフィスの温熱環境維持に貢献しています。ワイヤレス給電は建築の在り方を変える大きな可能性を秘めています。

Pick up注目の記事

Top