神長家の概要
■家賃:約9万円/月(3,250万円のローンを組んだときと月の返済額は大体同じ)
■立地:宇都宮駅から車で15分
■築年数:築30年(1991年8月竣工)
■延べ床面積:125.44㎡(37.94坪)
■断熱性能:築年数と天井断熱材の状況から昭和55年基準と推定(昭和55年区域区分Ⅲ・栃木県・Q値4.7)。無断熱ではなく、断熱材は気持ち程度入っている状態
低気密低断熱住宅は築30年でどうなる!?
人間の体と同じように、家も歳を取れば劣化や不具合が出てきます。ただし、家の場合は新築時に工夫すれば、防げる不具合もあります。今回は低気密低断熱住宅ならではのいや~な劣化現象を紹介します。
天井のクロスはハウスダストまみれ!?
わが家のリビングの1階天井を見上げると、ビニルクロスが黒っぽくなりチェック柄になっています。一応、アルコールなどで拭くと汚れは落ちます。
この黒ずみはホコリやチリの付着によるものだと考えられます。
リビングはキッチンが近いので油汚れの可能性もありますが、2階の仕事部屋も1階ほどひどくはないですが黒ずみができています。
ハウスダストによるアレルギー持ちの家族はいないので具体的な悪影響はありませんが、見映えはよくありません。
結果から言うと、このような黒ずみの原因は2つあると考えられます。
①乾燥と静電気&樹脂を多く含む建材へのホコリやチリの付着
②表面結露によるホコリやチリの付着(連載⑬で解説)
わが家は①が原因の可能性が高いと考えています。
ここからは、①の黒ずみの発生メカニズムを解説します。
静電気がハウスダストをおびき寄せる!?
前提条件として、ホコリやチリなどは、乾燥して静電気が多く帯電する部分や樹脂を多く含む部分に付着しやすい性質があります。そこで、わが家の天井がなぜチェック模様の黒ずみなのか、乾燥具合などを調べてみました。
下記は、黒ずみがない部分と黒ずみがある部分の含水率です。
※写真ではきれいに見えますが、実際は黒ずんでいます。
含水率の違いがなぜ出るのかを答える前に、黒ずみがチェック柄になっている理由を天井仕上げがない状態の写真で解説します。
この写真から、ハウスダストの影響をあまり受けていないのは、野縁(写真の青い部分)と接している天井面であることが分かります。
含水率の違いは、温度変化の影響です。気密性能が低いため天井裏で気流が発生し、冷やされたり温められたりを繰り返しています。天井材が野縁(木)と接している部分(青)は影響を受けにくく、それ以外の部分(赤)は温度変化の影響が大きくなります。
これらが原因で、野縁が接していない天井面が乾燥しやすく、静電気が発生し、ホコリやチリなどのハウスダストが集まったと考えられます。
余談ですが、わが家の天井は電磁波を発する照明まわりは特に黒ずんでいます。
2階天井裏に登ってみると…なんと、照明まわりに断熱材がありません!涙
2階の天井は断熱材がない状態ですので、夏場に赤外線カメラで見てみると断熱材がない部分の温度は特に高いです。
■コラム■築45年の「無気密無断熱」実家の黒ずみ
この記事を書いて、「実家の天井も同じところがあるかもしれない」と写真撮影に行ってきました。
下記は築45年の「無気密無断熱」実家のキッチンの天井です。
冬に石油ストーブを使うので水蒸気は大量発生していますし、父は喫煙者でしたので、わが家よりも天井の黒ずみはひどいです。野縁と接する部分はわが家と同じく黒ずみがひどくないので、含水率が影響してそうです。
45年前も、30年前のわが家の新築当時も、気密が低いことでこんな黒ずみができてしまうのを想像もできなかったはずです。今回の天井の黒ずみ問題の原因が低気密と分かった実務者や建て主は、くれぐれも同じ悲劇を起こさないでほしいものです。
次回は、「仮説②の天井面の表面結露」についてお話します。
テキスト:神長宏明(ラファエル設計)
次回予告
・汚れの付着は表面結露が原因かも
・天井面は常に結露している!?
・気流止めがない家の内部を徹底解説
前回の記事:連載⑪「寒い!レンジフード問題」はコチラ