神長家の概要
■家賃:約9万円/月(3,250万円のローンを組んだときと月の返済額は大体同じ)
■立地:宇都宮駅から車で15分
■築年数:築30年(1991年8月竣工)
■延べ床面積:125.44㎡(37.94坪)
■断熱性能:築年数と天井断熱材の状況から昭和55年基準と推定(昭和55年区域区分Ⅲ・栃木県・Q値4.7)。無断熱ではなく、断熱材は気持ち程度入っている状態
低気密住宅は表面結露のリスクが高い
天井にチェック柄の黒ずみがあるわが家。前回の連載⑫では乾燥と静電気による黒ずみの検証をしました。
今回は、天井の表面結露によるハウスダストの付着の検証をしてみます。
「表面結露」と聞くと窓ガラスのイメージをする人が多いと思いますが、実は天井でも起こっている可能性が高いです!
■気流止めがないと室内に外気が侵入する
低気密住宅で表面結露が起こる原因は「気流止め」がないことです。
気流止めについて、簡単に説明します。
日本の家の多くは、床下に断熱材を入れる「床断熱」を採用しています。
床断熱の場合、基礎と土台の間に「通気パッキン」を設けて、床下空間を通気します。
ちなみに基礎断熱の場合は通気しないように穴が塞がっている「気密パッキン」を使います。
つまり床断熱の場合、1階の床下は外気が行き来するので室外(外気に接する床)となります。どんなに外壁に断熱材を入れていても、冷たい空気や湿気を含んだ熱気が間仕切壁の中を通って室内に侵入します。このように床下からの外気の侵入を防ぐために気流止めが必要になるのです。(下図)
昔の家も、令和に建てられる家でさえも、気流止めを施工されないことがあります。特に床板を支えるために大引きの上に木材を載せる根太工法の場合は注意が必要です。
■気流止めのない家は表面結露が起こりやすい!?
気流止めが分かったところで、天井の表面結露の話に戻りましょう。
まず、わが家は床断熱で、悲しいかな、気流止めはありません!
そのため1階の天井裏に気流が発生します。冬場は冷気が侵入し、天井が冷やされます。
冷たくなった天井に室内の暖かい空気が触れたらどうなるでしょうか・・・?
はい、「結露」が起きます! たとえ結露が起きなくても天井面は極めて湿度が高い状態になります。
ここで、私たちが住む以前にわが家で起こり続けていた表面結露について仮説を立ててみます。
1階リビングと2階の北西洋室にはエアコンがありましたが、2階仕事室にはエアコンがついていた形跡はないので、冬の間、非暖房でとても冷えていたと考えられます。
そうなると、2階の床面と1階天井裏の間では気流の影響も加わり、1階の天井裏に面する部分は冷やされます。
2020年12月16日を例に分析してみましょう。
暖房したLDKは室温18.4℃、湿度は39%でした。
気流などによって天井裏が表面温度4.2℃以下に冷やされると天井面は結露します。
上記の結果から、1階リビングの天井面は長年表面結露を繰り返していたのではないかと思われます。
さらに、低気密低断熱のわが家は外気の影響を受けやすいため、室内の天井だけでなく、床・壁の表面温度も低温になります。また、24時間換気もありませんから、冬に室内干しや加湿器をつけると結露が起きやすい状態になります。
ちなみに、黒ずみがチェック柄になっていたのには、野縁が関係します。
冬場(2020年11月10日20時ごろ)の天井の温度を測定してみました。
野縁は蓄熱材のような役割をするので、野縁は温度変化が小さいのです。
以上の考察から、わが家の黒ずみは連載⑫の静電気だけでなく、今回の結露などさまざまな現象によってできたものだと考えられます。
これらの表面結露は、気流止めがきちんと施工された高気密高断熱住宅であれば気流が生じないので天井裏や小屋裏などが冷やされることはなく、結露が起こる心配はないでしょう。
次回は、「外壁の劣化現象」についてお話します。
テキスト:神長宏明(ラファエル設計)
・築30年の劣化現象 外壁編
・サイディングをお勧めしない理由
・子どもたちのささやかな成長
前回の記事:連載⑫「30年分の黒ずみ」