〝火育〟で生まれる焼きスギ
以上のように、木材による防耐火設計の技術は日々進歩を遂げており、建築物の木造化・木質化はより身近になっています。ただし、建築実務者としては、木材がどのように燃えるのか、を理解して設計の仕様を決定すべきであり、逆に、それを理解すれば、木材の可能性を引き出すことが可能であるともいえるでしょう。その一例として、安井氏が実践する焼きスギづくりについて解説しましょう。
YouTube動画付き。スギの美味しい焼き方
「改めて、木材が燃えるには、3つの要素(可燃材料・酸素・熱)が必要です。これらをうまくコントロールすれば、手軽に焼きスギを製造することができます。長尺のスギ板を三角形に組み合わせて、内部に着火してスギの表面を炭化させるという方法で、外壁として使うために、昔は大工自らがこの手法を用いていました。火炎の煙突効果による燃え上がりや、木材の延焼防止性能(裏面に燃え抜けない)、輻射熱の除去による速やかな消火、といった性質を利用しています」(安井氏)。
「仕上がりもきれいで、表面から水分が抜けるので腐食しにくく、耐久性と美観性に優れた外壁材となります。焼きスギづくりには、木と火の関係を肌感覚で学ぶという目的もあります。私はその学びを〝火育〞と呼んでいます。木と火のよい関係性を学び、それを具体的に実践することこそが、木造化・木質化の未来を切り開いていくものだと信じています」(安井氏)。
安井式焼きスギで仕上げた「八ヶ岳の秘密基地」
※ 縦羽目板張りの一種で、幅が同寸か同寸に近い板を、重ね部分が互い違いになるように張る。上に張る板の重ね代を見込んで一定の間隔を開け、板が重なって隠れる部分に下の板を釘打ちした後、頭をつぶした釘などで上の板を表から留める
おわり
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