「建築業と林業の連携」在来軸組でつくる木の保育所③

国産材(JAS製材)を用いた非住宅の木造建築は注目すべきトレンドの1つ。ここでは、 古川泰司氏(アトリエフルカワ一級建築士事務所)が設計を手がけた「わらしべの里共同保育所」を紹介します。主として埼玉県産材を用いた準耐火建築物で、燃えしろ設計を活用した木のインテリアが特徴的です。

製材所とのつながりが重要

 「わらしべの里共同保育所」では、埼玉県の秩父材(スギ)を中心に用いた結果、木材全体に対する県産材の使用率は84%に達しています。「この程度の規模であれば、一般的な工務店でも材料を調達できます。無垢の製材を用いて歩留まりをよくすれば、山に還元される金額が大きくなり、森林の健全な保全につながります」と古川氏。

 ただし、工期が限られるプロジェクトではネットワークが大切、と古川氏は説きます。今回は埼玉県産材だけでは納期に資材調達が間に合わず、棟木を支える通し柱には柳川製材所(静岡県)、大梁の一部は協和木材(福島県)に協力を仰ぎました。

 

 

学童室の小屋裏。燃え代を45㎜確保した垂木が455㎜ピッチで整然と並ぶ。天井仕上げの「JパネルQF」(鳥取CLT)は、中間層の木材を含めてすべて節埋め(化粧面は埋木処理・中間層はパテ処理)しており、火は30分以上燃え抜けない 

 

 「日本の山がもつポテンシャルを、どのように活用するかが課題となっています。山や製材とのネットワークは工務店任せにせず、すべての設計者がもつべきではないでしょうか」(古川氏)。

 

中庭を囲むように廊下を配置。日中は子供たちが元気に走り回るトラックとなる。サッシはすべて外付けで納めている

 

 建物を使いはじめて1年余り。長谷川氏は「敏感なセンサーをもつ子どもたちは、木が次第に身体になじんできた様子を感じ取っているように見えます。やはり子どもたちの居場所には、木が必要だと思います」と語ります。

 

6 寸勾配の大きな屋根が空間全体を包み込む。軒の出が深く、外からは中の様子が伺いにくい。屋根仕上げはガルバリウム鋼板小波板で、雨樋には「スタンダード半丸105」(タニタハウジングウェア)を使用

 

 古川氏も「木の空間が、子どもたちを伸び伸びとさせていることは確か。『木育』が注目され、小規模保育の場所も必要とされるなかで、木との触れ合いと、森の恵みを届ける機会を増やしたい」と展望を語ります。

 

支援センターは6寸勾配の切妻屋根。木材と鋼材を組み合わせた複合梁を1,820㎜ピッチで配置することで、約7×11mの無柱空間を実現している

 

 実際に木の空間に身を置き、木に触れる機会が増えれば、木材の需要はいっそう伸びるはず。「わらしべの里共同保育所」は、国産材活用のさらなる可能性を見せてくれています。

 

学童室の丸太柱に寄りかかる古川氏。「この建物の総工事費は約1億9,000万円。延べ面積は789.17㎡(238.24坪)。坪単価は約75万円です。資材調達や設計を工夫すれば、準耐火建築物でも、木の意匠性を生かした保育所を、比較的安価に設計することは可能なのです。内装制限がかかるなかで木材を使用する方法としては、燃え代設計による準耐火建築物とする以外に、A:スプリンクラー設備を設置して内装制限を解除する方法[令128条の5第7項]、B:不燃木材を使用する方法もあります」

 

Information

 「わらしべの里共同保育所」が生まれたきっかけにもなった『木の家に住みたくなったら』(2011年)は2021年6月、『木の家に住もう。』として大幅に改定されて出版されています。

 

 

「本の内容の見直しに当たっては、“木を切る”こと、すなわち“木を使う”ことの大切さを強調しました。それは次世代の森を育てるということ。その想いを表現すべく、木を育てる男の絵を付け加えています」(古川氏)

 

※ 保育所(児童福祉施設)では、準耐火建築物の場合、「その用途に供する2階の部分の床面積が300㎡以上」であれば内装制限の対象となる。この建物では、2階の床面積が45.54㎡であるため、内装制限の対象とならない。準耐火建築物(耐火建築物)でない場合は、建物全体の床面積が200㎡以上となるため、内装制限の対象となる

 

取材・文=加藤純・建築知識 建物写真=傍島利浩 書籍写真=平林克己

 

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おわり

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