住宅

お財布にも地球にも優しい「ほぼオフグリッド」って?

オフグリッドとは、電力会社から電力の供給を受けず、電力を自給自足する暮らしのこと。こう聞くとハードルの高いものに思えますが、「ほぼオフグリッド」なら取り入れたくなるかも。この記事では、オフグリッドの基礎知識と、「ほぼオフグリッドハウス」の事例もご紹介。

オフグリッドとは?

住宅の電気は、発電所から送電線で運ばれてくる仕組みになっています。オフグリッドは、電力会社に頼らずに電力を自給自足している状態のこと。「グリッド」とは電力会社が街中に張り巡らせた送電網のことで、送電網が「オフ」な状態、つまりオフグリッド住宅は「送電網に繋がっていない住宅」という意味になります。

電力が必要な場合には、屋根に搭載した太陽光パネルで発電した電気を使用します。最近では、自然災害の備えや環境に配慮した暮らしの一環として住宅に導入する人が増えつつあります。

 

オフグリッドのメリット・デメリット

オフグリッド住宅に住むメリットは、なんといっても環境に配慮したエコな暮らしができるということ。電力会社で発電する際にエネルギー源として使われているのは、石油・石炭・液化天然ガスなどの、地球温暖化の原因となるCO2排出量が多い化石燃料がほとんど。また、発電所でつくられる電気は莫大なため、家庭用に小さくしてから送電する必要があります。さらに、運ばれている間にも電気抵抗や熱に変わっていってしまうため、電気は徐々に減りながら送られています。

現在、日本では約5%がロスされていると言われています。これは、1年間で約458.07億kWhにもなります。これだけの電気をつくるには、100万kW級の発電所がフルに稼働して5年以上かかってしまいます(国立研究開発法人 科学技術振興機構調べ)。この「送電ロス」の非効率さが、長年指摘されてきました。

その点、オフグリッド住宅は電力会社からの電気供給を受けずに自分の家で自然エネルギーを使って暮らすスタイルなので、化石燃料を使わず、CO2排出量も減らすことができます。

一方、初期コストがかかる点がデメリットといえます。通常であれば、送電線をそのまま住宅につなげば、特別な設備を設置しなくても電気を引くことができますが、オフグリッド住宅は、これを1つの住宅内で完結する必要があるので、おのずとさまざまな設備(太陽光パネル、蓄電池、インバーターなど)が必要になるのです。

 

「ほぼオフグリッド」なら無理なくエコな暮らしができる!

停電するリスクは負えない、でも環境に優しい暮らしがしたい“子どもがいるから完全なオフグリッドは難しいかも…”そんな人にぴったりなのが「ほぼオフグリッドハウス」。太陽光発電で電気を自給自足しつつ、電力会社とは契約しておき、蓄電池の残量がなくなったら電力会社から電気を供給してもらうという方法です。もちろん、晴天が続いて発電量が多ければ売電も可能。ゼロエネルギー住宅(ZEH)に近い仕組みです。

「環境に負荷がかからない暮らしがしたい、だけど無理はしたくない…」そんな人にぴったりです。

 

超高性能な外皮+太陽熱利用で、電気・ガス代はほぼゼロ円

実際に、ほぼオフグリッドハウスに住む人の暮らしを覗いてみましょう。

埼玉県の住宅街に建つこの住宅には、設計事務所「アトリエビオ」の新井かおりさん夫婦と、子ども2人が住んでいます。約30坪というコンパクトな敷地ですが、真南向き道路で、冬も十分な日射を取り入れることができます。オフグリッドハウスに必須の外皮性能も抜群。

新井さんの住宅「Luce.」の外観。木製の塀やバルコニーが、外観に優しい表情を与えてくれている

5.4kWの太陽光パネルで電力を、太陽熱温水パネルで給湯をまかなっていますが、日照時間が短いときのために電気やガスは引いており、完全なオフグリッドにはしていません。この年はコロナ禍で在宅時間が増え、(2019年より)2割ほど電気使用量が増えたそうですが、1年を通して電気の売電と買電を比較すると、ガス分がまかなえるくらいのプラスになり光熱費はほぼ水道代だけという結果になっています。初期コストがかかっても、ランニングが減り、非常時にも安心です。

家の大きさは引越しする前に住んでいたマンションの1.5倍の大きさ(気積比)になったそうですが、電気もガスも使用料は約6割に減ったそうです。

玄関近くに設置されている蓄電池やインバーター(直流電流を交流電流に変換する機械)の置き場。庇があるので、雨の日のメンテナンスもラク

新井さんの自宅のガス・電気代のコスト表

 

エネルギーの使い方を少し変えるだけ。今までの”当たり前”からオフグリッド!

新井さんの自宅の2階。内装材には自然素材を積極的に採用している

暮らしぶりはふつうの家と何も変わらないように見えます。なぜそんなに省エネができているのでしょうか。

「電気は熱を作るのが苦手なので、炊飯器・電気ポットをまず変えました。自動炊飯対応のガスコンロを選び、専用土鍋を揃えれば、電気と同じように火加減も自動でご飯を炊いてくれます。しかも土鍋だから電気ジャーで炊くよりも断然美味しい!ジャーで保温するご飯はおいしくないと感じていたので、冷めたら電子レンジで温める。その方がエコで、美味しくていいことばかりです。」(新井さん)

ドライヤーや電気ポットなど、電気は熱をつくる時に大きな電気量を必要とします。そのため、オフグリッドライフでは熱をつくるための電気をなるべく少なくする必要があるのです。

「電気ポットはやめて、可愛いホーローのやかんを買い、必要な時だけガスで沸かすことにしました。晴れているときは「エコ作」をベランダに置いて太陽の光でお湯を沸かします。飲み比べると解りますが、太陽で沸かしたお湯はまろやかで美味しいです!太陽の光だけでほくほくの焼き芋やクッキーも焼けますよ!しかもタダです(笑)」(新井さん)

太陽熱調理器「エコ作」(寺田鉄工所)。太陽光を集熱し、200℃近い温度で食材を焼くことができる

「切って、干すだけのドライフルーツもはまっています。太陽のエネルギーがぎゅっと詰まっていますよ! 」(新井さん)

また、新井さんの自宅では、冬季の暖房はペレットストーブを採用しています。エアコンの暖房は効率が悪い上に暖まらないので、暖房はペレットストーブを使っています。ペレットストーブは温熱絵的にも、感覚的にもとても心地よくて、”暮らしの質が数段あがった感じ”がしたそう。杉やヒノキのペレットを使用するので、ストーブをつけるとほのかに木の香りがして、さらに落ち着き感が増します。

新井さんが実際に使用しているトヨトミ社のペレットストーブ。シンプルながらかわいらしいフォルムが特徴

「木の香りはリラックス効果の他にも集中力を高めたり、抗菌効果もありますし、何より地球にやさしいです。この暮らしをして一番変わったことは”あたり前を見つめ直す”ということ。電気などのインフラも、一度手放すことにより気づくことがたくさんあります。」(新井さん)

グラフは真冬と真夏の家の中の温湿度の様子。計算により、家電を含めたリアルゼロエネルギーハウスとなり、CO2排出量も大幅に削減できるということがわかった。また、一年を通して安定した快適な環境にあるので、風邪を引かなくなったそう

「オフグリッドは、不便そうなイメージをもつ人がいるかもしれませんが、設備やエネルギーの使い方を少し工夫するだけです。快適かつエコで、楽しく豊かな暮らしになりますよ。」(新井さん)

完全なオフグリッドには抵抗があっても、「ほぼオフグリッド」ならハードルがぐっと低くなります。今では、ベランダなどに置ける小型のソーラーパネルも販売されています。興味がある人は、まずは生活のなかの電力の一部を自給自足してみることから始めてみませんか?

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