建築 建材 インタビュー

西方里見と山田憲明の住宅用資材でつくる大規模木造③

“断熱・気密”の西方里見氏と“木構造”の山田憲明氏が設計を手がけた大規模木造「道の駅ふたつい」(秋田県能代市)。木造住宅で使われる汎用的な資材で計画された複合施設です。今回は、計画の概要と工事中・完成後の様子をレポート。地域産材を使った大規模木造の設計手法を徹底解説します。

断熱性能は省エネ基準の2倍

建築物省エネ法による省エネ基準への適合義務化が段階的に進められています。延べ面積が2千㎡以上の「道の駅ふたつい」はすでに適合義務化の対象となっており、一次エネルギー消費量を削減すべく、建物の断熱性能を高める必要がありました。

「道の駅ふたつい」の一次エネルギー消費量(BPIm)は0.91と、基準である1.0を下回っており、このうち一次エネルギー消費量が多くなりがちな空気調和設備(BEIm/AC)は0.71を達成しています。冬に暖房が停止したとしても、人体へのリスクが少ない室温12℃を確保できるほどの断熱性能となっています。

このような高い断熱性能を下支えするのは、木造住宅に広く用いられている部材・工法です。躯体(屋根・外壁)は高性能グラスウールでの充填断熱。アーチ屋根では、垂木間に150㎜厚の断熱層を形成しています。

 

断熱

アーチ屋根のディテール。現しとしたアーチ梁の上弦材は、母屋・垂木越しに野地板(水平構面)とつながります。垂木間には高性能グラスウール16K 150㎜(太陽SUN/パラマウント硝子工業)を充填し、断熱性能を確保(上)。屋根仕上げはガルバリウム鋼板。谷折り部は漏水のリスクを考慮して、曲げ板金を熱圧着で増し張りしています(下)

 

アーチ屋根の断熱工事を行っている様子。垂木・母屋間に防湿フィルム別張りの高性能グラスウールを充填した後に、透湿防水シートを隙間なく張り込んでいる

 

窓については、熱の流出入が懸念される大きなカーテンウォールの設計がポイントになりますが、ここでも木造住宅用のアルミ樹脂複合サッシが主力となっています。ガラスは冬の熱損失防止と日射取得率確保の観点から、遮熱Low-E複層ガラス(Uw2 ・33 以下)を採用しました。

 

「道の駅ふたつい」の正面玄関。アーチ状のカーテンウォールは熱の大きな流出入が懸念されるが、住宅用のアルミ樹脂複合サッシを組み合わせて断熱性能を高め、雪深い冬の季節でも快適な室内環境を実現している。外から見える、ライトアップされたアーチ梁には温かさを感じる

 

「住宅で使用される高さ約2m以下のサッシを組み合わせて、カーテンウォールを構成しています。その大部分はFIX窓ですが、必要な箇所は排煙上有効な開口部(突出し窓)としています[※]」(西方氏)。

 

※ 延べ面積が500㎡を超える特殊建築物では排煙設備を設置する必要がある[令126条の3]。この場合は、床面積500㎡以内ごとに防煙壁(間仕切壁もしくは垂壁)で区画し、区画部分には排煙口(排煙上有効な開口部)を設置する必要がある

 

「道の駅ふたつい」は木造住宅の最先端技術を駆使した、エコで快適な大規模木造建築。普及拡大が期待される地域密着型の木造建築について、“道しるべ”と形容できる存在感を示しています。

                                                                        

西方里見[にしかた・さとみ]

1951年秋田県能代市生まれ。’75年室蘭工業大学建築工学科卒。’81年西方設計工房を開所し、’93 年西方設計に改組。2004 年設計チーム木(協)代表理事に就任。木造高気密・高断熱建築の先駆者として知られ、『住宅が危ない! ③「外断熱」が危ない! 』『最高の断熱・エコ住宅をつくる方法 令和の大改訂版』『西方里見が選んだこの建材・設備がスゴい』(いずれもエクスナレッジ刊)など著書多数。「道の駅ふたつい」は木の建築大賞(’22 年)、「東北住建 新社屋」[写真]はウッドデザイン賞(’22 年)など受賞歴も多数

 

山田憲明[やまだ・のりあき]

1973年東京都生まれ。‘97年京都大学工学部建築学科卒業後、同年に増田建築構造事務所入社。2000年~’12年同社チーフエンジニアを務める。同年山田憲明構造設計事務所設立。‘13年~早稲田大学非常勤講師。第22回JSCA賞作品賞「国際教養大学中島記念図書館棟」、第14回木の建築賞 木の建築大賞「南小国町役場」、第23回木材活用コンクール 最優秀賞(農林水産大臣賞)「大分県立(昭和電工)武道スポーツセンター」、最優秀賞(国土交通大臣賞)「住友林業筑波研究所新研究棟」、2021年日本建築学会賞(作品)「上勝ゼロ・ウェイストセンター」などの木造建築において受賞歴多数。主著に『ヤマダの木構造 改訂版』(エクスナレッジ刊)がある

 

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おわり

 

講演動画(山田憲明)—【建築知識】大径のJAS製材でつくる木造建築ー

 

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