建築 設備

「エアコンによる結露と温度ムラを考える」これからのカフェ・飲食店設計術③

飲食店における空調設計は、目に見えないものですが、飲食店の評価を大きく左右するもの。最近では、換気の重要性も非常に高まっています。ここでは、空調や換気を重視した飲食店の設計について解説します。

エアコンを隠す際には結露と温度ムラに注意する

 飲食店の設計で悩ましいのが、“設備の存在感をいかに消すか”ということ。業務用エアコンは大型のものが多く、設計によってはインテリアの邪魔をしかねません。ニッチなどを設けて吹き出し口を見せない方法もありますが、結露や風ムラの発生が懸念されます。

 天井面の近くに吹き出し口を設置し、風を遠くまで送る“コアンダ効果”を狙った設計手法もありますが、これも結露の原因となってしまいます。こういった設計をする際には、結露防止型の吹き出し口を採用するとよいでしょう。樹脂製で、室内温度に近い風を天井面に送れるので、結露が心配な場合に活用したいものです。または、かっこいいエアコンの採用も検討しましょう。

 

エアコンをニッチに隠す場合

 エアコンを天井に隠し、吹き出し口も見えないようにする設計は、意匠性は高いものの空気温度のムラが生じるうえに、結露もしやすいので注意が必要。加えて、壁際から空気を室内へ流し込む場合には、壁際に座った人に風が強く当たり不快に感じさせてしまう、なんてことも。結露防止型の吹出し口を採用するなどして対策するとよいでしょう。結露防止型の吹出し口は、空研工業協立エアテックから登場しているので、チェックしてみましょう。

 

 

コアンダ効果で遠くまで風を届ける場合

 “コアンダ効果”を利用してエアコンの吹出し口を天井面になるべく近づけ、風を遠くまで送る設計手法です。コアンダ効果とは、気体や液体の噴流の軌道が近くの壁面に吸い寄せられる現象。天井面近くに空気を吹き出すことで気流は天井を這い、落下が抑制されながら空間の奥にまで到達するという原理を利用します。エアコンの数をなるべく少なくしたいときには有効です。ただしこの方法も天井面が結露しやすいため採用する際には要注意です。

 

解説=堀池瞬(堀池瞬建築事務所)

 

意外なところで利用されている“コアンダ効果”

 コアンダ効果が用いられるのは建築だけではありません。自宅でプロが手がけたようなスタイリングができる“ヘアスタイラー”にも採用されています。本体に搭載されているモーターが回転することで、バレル(髪を巻く部分)高圧領域ができ、高速の気流がバレルの隙間から本体に沿って噴射されることで、コアンダ効果をつくりだすのです。これによって、髪が自動的に本体に巻き付き、美しい仕上がりが可能になります。身近なところでも利用されているコアンダ効果を、ぜひ建築でも活用してみましょう。

参照:ダイソン公式HP

 

空間にすっきりとなじむ空調。 

 飲食店で採用されることの多い店舗用空調機室内ユニットには、「天井埋込み式」と「天井カセット式」の2種類があります。前者は、機器が天井内に隠蔽されるため、空間意匠を最優先にしたい飲食店の場合に採用されることが多いですが、施工コストが高くついてしまうのがデメリット。一方で、後者は、施工コストは安く抑えられるものの、機器が露出しているため空間の中で悪目立ちし、空間意匠を大きく損なってしまうという欠点があります。

 

 これに対して、Silent-Iconic/日立グローバルライフソリューションズは、施工コストを抑えられる「天井カセット式」でありながら、内装に馴染みやすいシンプルなデザインを実現。天井空間でもスケルトン空間でも活躍できる高い意匠性で、意匠設計者・飲食店オーナーの内装へのこだわりに応えます。

 

④につづく

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