建築 設備

「オープンキッチンの設計を考える!」これからのカフェ・飲食店設計術④

飲食店における空調設計は、目に見えないものですが、飲食店の評価を大きく左右するもの。最近では、換気の重要性も非常に高まっています。ここでは、空調や換気を重視した飲食店の設計について解説します。

オープンキッチンにする際に気をつけたいこと

 最近の飲食店では、厨房を隠さない“オープンキッチン”スタイルが増えつつあります。調理の様子を客に見せ、調理中の香りや音などもじかに感じてもらうことでエンターテイメント性を高められることが特徴です。

 オープンキッチンを採用する場合に、ちょっと気になるのが冷蔵庫の存在です。業務用冷蔵庫はサイズが大。そのまま設置すると空間の中で存在感が際立ち、インテリアを損う異物と化すことも。冷蔵庫を建築となじませたり、デザイン性の高いシンプルな冷蔵庫を採用するなどして空間の統一性を図りたいところです。

 

冷凍庫と建築を一体化させる

 業務用冷蔵庫を建物と一体化させて空間になじませた事例。店内のスペースが限られていたため、冷蔵庫を隠すのではなく、壁の中に埋め込んだかのように化粧することで、インテリアを損なわないように工夫しています。冷蔵庫は壁の寸法に合わせた特注品。内装業者や厨房機器業者と打ち合わせながらつくられました。タイルを張る際には、冷蔵庫の扉を一度外し、内装業者がタイルを化粧したあとに再度扉を取り付けました。

 

建築と一体化させた冷蔵庫。ハンドルのデザインもシャープなものを選定、空間の美観を損なわないようにした

タイルと壁が完全に一体化して見えるように、冷蔵庫に直接壁に使用しているタイルを張っている。冷蔵庫に張ったタイルと壁に張ったタイルの面がきれいにそろうよう、寸法の調整がなされた

 

「グランイート銀座」 設計:BaNANA OFFICE

 

インテリアの邪魔をしないシャープな印象の冷蔵庫

 「冷蔵庫・冷凍庫・冷凍冷蔵庫(縦型)シリーズ」(フジマック)は、ドアにハンドルのないシンプルなデザインが特徴です。業務用冷蔵庫はサイズが大きくオープンキッチンなどに設置すると空間に馴染みにくいという欠点がありました。本製品はハンドルや余計な装飾を極力省くことですっきりとした佇まいを実現。

 そのデザイン性が評価され2018年度グッドデザイン・ベスト100も受賞しています。また、高い加工技術によってステンレス製の扉をフラットな表面とし衛生面に考慮したり、取手の省略化によってキッチン内での人の通り抜けをスムーズにしたり、機能性においても優れています。

 

同社の冷蔵庫を厨房にレイアウトした「刷毛じょうゆ 海苔弁 山登り」(設計:BaNANA OFFICE)。ほかの厨房機器もステンレス製のもので統一することで、外から厨房が見えた状態でも意匠が保たれている

 

オープンキッチンは空気の流れに注意

 オープンキッチンの設計では、「負圧」と「正圧」に注意しなければなりません。厨房の空気が大量に客席に流れ込んでしまっては、せっかくの食事が台無しに。厨房には必ず換気扇を付けて厨房を負圧にし、空間全体に空気が流れないようにする工夫が必要です。

厨房を負圧の状態にすることで、外から取り入れた空気を換気扇で外に排出す るという空気の流れをつくることができる。給気と排気の量が極端に異なると、 開き扉が開けにくくなるなどの不具合が生じることがあるので要注意

 

解説=堀池瞬(堀池瞬建築事務所)

 

天井埋め込み型の可能性を広げる高機能スピーカー

 天井埋め込み型のスピーカーは、意匠性は高いが露出型に比べて部屋全体に音がいき渡りにくいという難点がありました。「EdgeMax」(BOSE)は、天井埋め込み型でありつつも露出型スピーカーと同等の部屋全体を包み込むような音環境(カバレージパターン)を実現。少ない本数で部屋全体の音の広がりをカバーできるのもポイントです。

 

 

 屋外に取り付ける場合は、全天候型の「FreeSpace FS4CE」(BOSE)が最適。ユーザーの希望があれば、建物の大きさや用途に合わせた適切なシステムを提案してくれるのも心強いです。

 

 

おわり

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