建材

“絵画”のように色鮮やかなステンレスの建材

金属の熱処理を生業としてきたメイネツが、ステンレスに色を付ける「塩浴着色処理」という唯一無二の技術を開発した。従来のステンレスとは一線を画す、個体差があり、自然の風景を思わせる絵画のような佇まいは、建築の表現に新しい可能性をもたらす。ステンレスの新しい使い道を考えてみよう。

“塩浴処理”でステンレスに幻想的な色模様を描く

色鮮やかで絵画のように佇むステンレス—。ステンレスに対する固定観念を覆す新しい試みが生まれました。

ステンレスといえば手すりやカウンターなどに利用され、銀色の輝きが建築空間に高級感を添える建材として知られています。しかも、耐食性が高く、よほどのことがない限り、その輝きは経年変化で失われることがありません。

これに対して、自動車産業が栄える愛知県刈谷市で、金属の熱処理を生業としてきたメイネツは、ステンレスに色を付ける「塩浴着色処理」という唯一無二の技術を開発しました。その個性豊かな表情は、一般的なステンレスとは一線を画すものであり、どこか印象派の絵画、を思わせるような幻想的な風景を想像できるでしょう。

 

「塩浴着色処理」によって着色されたステンレス。一般的なステンレスとは一線を画す青みがかった色合いのなかに、黄色やピンクなどの淡い色が差し色として立ち現れている[写真=井上秀兵]

 

「塩浴着色処理」とは、高温(約850℃)に熱した塩浴(ソルトバス)のなかに、金属を職人が道具を使って含侵させることで、金属の表面に酸化被膜を形成し、着色をすることなく、ほかの表面処理では得られない色合いやテクスチュアを表現すること。手作業により描き出される色模様には個体差があり、絵画のような希少な存在感を醸し出すことができます。

 

高温(約850℃)の塩浴に、ステンレスを一枚ずつ浸して、着色している様子。人為的な制御は不可能なので、一枚ごとに独特な紋様が描かれる[写真=倉本あかり]

塩浴にステンレスを浸せば、煙が立ち上がり、一瞬のうちに表面の色味が変わる。耐食性はやや低下するので、現状では、室内や湿度の低い場所での使用を推奨している[写真=倉本あかり]

 

製品の種類はオーステナイト系ステンレス鋼の代表格の“SUS304”[※1]を用いた「朧―oboro―」と、フェライト系ステンレス鋼の代表格の“SUS430”[※2]を用いた「霞―kasumi―」の2種類。加えて、それぞれの製品に、0.5㎜厚のものと1.0㎜厚のものが用意されており、それぞれに個性的な表情を浮かべています

 

写真左が色味が鮮やかな「朧」。写真右が色味が淡い「霞」。いずれも絵画のような佇まいを見せる [写真=井上秀兵]

 

※1 クロムを18%、ニッケルを8%含み、良好な耐食性、加工性、溶接性など多くの優れた特性を備えている
※2 18%のクロムを含み、“SUS304”に比べると性能は劣るものの、加工性に優れており、コストパフォーマンスが高い

 

「朧」は、薄暮を思わせるような青色を基調としつつ、月明りのような黄色が映えるカラーリングが特徴。色が濃いため、その対比が目立ち、力強さが感じられます。「霞」は、青色を基調としつつも、朝日が照らしているようなピンク色が混ざったカラーリングが特徴。パステルカラーがもつやさしさが感じられます。

 

板の厚さ(0.5㎜厚・1.0㎜厚・1.5㎜厚)によって表面の色合いが変わる。板厚の薄いほうが、色の対比が顕著になる[写真=倉本あかり]

 

「朧」と「霞」。いずれも、要望によってステンレスの形状やサイズをその都度、デザインすること可能。板材やモザイクタイルとして壁面に張ったり、丸鋼や角形鋼管として、手摺に使用したり、空間のアクセントとしての利用が考えられます。

「朧」と「霞」の製品開発にも関わった、北海道などの寒冷地で、外国人向けの別荘やホテルの設計を手がけている須藤朋之氏(SAAD/建築設計事務所)は、高級リゾートホテル「Fenix Furano」の一角をなすレセプションの背面壁に採用。ホテルを印象付ける存在として機能しています。

 

レセプションの背面壁に縦張りされたH400×W120㎜の「朧」。一枚ごとに表情が異なるという点において、カウンターの腰壁を彩る北海道産カラマツの羽目板、との調和が読み取れる[写真=益永研司]

実際には0.5㎜厚のものと、1.0㎜厚保のものを交互に張り合わせた。一部折り曲げることで光の反射による表情の違いを出し、壁面にリズムをもたせ、壁と床の取合いに埋め込んだラインの間接照明で幻想的に演出

 

参考記事:須藤朋之氏による解説記事「寒冷地で別荘をつくる方法」こちらから。

 

近年では、木材をはじめとする、個体差のある自然素材が住宅・非住宅問わず、好まれるようになってきています。メイネツの「塩浴着色処理」は、こうした建材(工業製品)のトレンドをとらえたもの。「朧」と「霞」という、自然の風景を想起させる言葉の響きも重なり合います。ステンレスの新しい使い道が誕生したのです。

 

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