住宅 建築 インタビュー

「自然との調和」寒冷地で別荘をつくる方法ー①

自然豊かな北海道、特にニセコや富良野では、外国人の不動産投資が活況。自然と一体化したダイナミックな建築が数多く計画されています。今回は、外国人向け別荘の設計を数多く手がける須藤朋之氏(SAAD/建築設計事務所)に、建築計画や断熱・気密の考え方をお伺いしました。

外国人の不動産投資が活況な背景

外国人富裕層の日本への不動産投資が活発化しています。それにはさまざまな要因が考えられます。「日本は安全で、かつ、自然が美しく、質の高い水資源に恵まれている」「日本人には〝おもてなし〞の精神が根付いていて、サービス精神が旺盛」といった理由に加えて、日本は現状、諸外国とは異なり、外国人名義でも不動産(土地・建物)の取得が可能な法制度となっていることも大きいのです[※]。ここ数年は円安基調が続いており、外国人の不動産投資を後押ししていると想像できます。

 

※ 「外国人土地法」(1925年)では、外国人の土地取得を政令で制限できると規定しているが、日本国憲法29条が保障する財産権を侵害する可能性があるため一度も運用されたことがない

 

なかでも、自然豊かな北海道は、不動産投資が活況な地域。ニセコや富良野などは、別荘や宿泊施設のいわばメッカ。その理由を、現地で数々の建築設計を手がけてきた須藤朋之氏(SAAD/建築設計事務所)は次のように語ります。

「ニセコや富良野は、ウィスラー(カナダ)やシャモニー(スイス)といった世界有数の冬期リゾート地と比較しても、積雪量が多く雪質も素晴らしい。加えて、標高1千m程度の山岳地帯に立地しており、市街地とスキー場との距離が近い点もいい。海外では市街地からスキー場まで車で3〜4時間くらいかかりますが、ニセコや富良野では、それほど時間を要しません」。

 

CASE1 RC造外断熱 大きな跳ね出しとRC造の打ち放し/ES2425

急斜面に計画されたゲストルーム付きの別荘「ES2425」。RCラーメン構造2階建て(地下1階)で、RCの柱で1・2階の荷重を支えています。外装材は地元産のカラマツ。幅200~250㎜と見付けの小さい羽目板を縦張りにしてシャープな印象に。板の重なりによってできる影とのコントラストも目に映えます。

「ES2425」はRCラーメン構造。水平な耐圧盤の上に柱(450㎜角)を立てて大きな跳ね出しを実現している。 建物の外形は1・2階ともにシンプルな矩形

2階は1階にそのまま積層されているのではなく、蝦夷富士と呼ばれる北海道の名峰・羊蹄山が正面に見える角度(約40°)に振って計画。リビングから向かって左側は、全面開口越しに大きなルーフバルコニーとなっているが、視線の抜けを考慮し、手摺の位置を向かって左側に寄せている。空間全体は、造作家具とカーテン、床段差などによって緩やかに分けられたひとつながりの空間

「ES2425」は外断熱を採用しており、外壁・屋根・天井ともに押出法ポリスチレンフォームとして、RCラーメン構造の躯体に追従するように断熱層を形成し、十分な気密性を確保している。外壁仕上げの大部分に採用されたカラマツには、撥水性の高い木材保護塗装「ノンロットクリア」(三井化学産資)を用いて仕上げ、耐久性を高めている

リビングよりルーフバルコニーを見る。室内からの景観に配慮し、バルコニーへの出入口・手摺を左側に寄せているので、正面に羊蹄山の眺望を楽しむことができる。室内は壁がRC打ち放し仕上げ、天井がラーチ合板仕上げ。床面の窓際には、床下から温風を吹き上げるガラリが設けられている

室内の仕上げにはRC外断熱ならではのコンクリート打放し仕上げを採用。型枠には天井仕上げと同じ、ラーチ合板を採用し、テクスチュアの統一性とRCそのものの意匠性を高めた。1階ゲストルーム(寝室)。斜面に近い位置に配置されているので、大開口越しに自然との一体感が感じられる

2階の浴室。内壁は構造用合板型枠によるRC打放し仕上げ、天井と浴槽天板には木材(ヒノキ)を使用して和の雰囲気を演出。雪景色を見ながらリラックスできる

 

斜面に建築を跳ね出し、自然に近づける

建築計画としては、建築基準法の集団規定や単体規定に関する制約も少なく、デザイン提案の自由度は高いと言えるでしょう。都市計画区域外での計画に該当するケースもありますが、延べ面積が3千㎡以下の場合は、開発行為の対象外[都市計画法29条]。

「彼らの多くは、海外の大都市にあるタワーマンションの高層階で生活しています。リビングには大きな窓が設けられ、そこからは都市の風景を一望できます。こうした眺望性の確保を前提としたうえで、タワーマンションでの生活では実感しにくい、自然との一体感を高められるようなデザインを好む傾向にあります」。

「具体的には、傾斜地に建物を計画するケースなど、建物を敷地の傾斜や形状に極力呼応させるようにしています。建物全体を地面からオーバーハングさせたようなダイナミックな建築に大きな魅力を感じるようです」(須藤氏)。

 

須藤朋之[すどう・ともゆき]
2005年Southern California Institute of Architecture[SCI-Arc](Los Angeles, USA)学科卒業。’05〜’07年Amphibian Arc(Los Angeles, USA)に勤務。’09年Architectural Association School of Architecture[AADRL](Londond, UK) 修士課程修了。’09〜’13年にフロリアン・ブッシュ建築設計事務所( Tokyo, Japan)に勤務。’14年に独立後、’15年にSAAD/建築設計事務所設立

 

写真=益永研司

 

②に続く

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