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日本一 ペットにやさしいエコハウス

日本エコハウス大賞で受賞した住宅を徹底解説! 1回目は、第5回日本エコハウス大賞でグランプリを受賞した「水戸の家」。設計・施工を手がけた茨城県水戸市のサンハウスの野辺さんの自邸である。つくり手であり、住まい手でもある野辺さんは大の動物・爬虫類好き。温度変化に敏感なペットたちのことを思ってつくられた家が、日本一のエコハウスになったわけとは?

日本エコハウス大賞とは

『建築知識ビルダーズ』が主催する意匠と性能の両面で優れた住宅を表彰する設計実例コンテスト。魅力的な外観、コンパクトな空間や自然素材、光を考慮した設計力と、温熱・耐震設計を兼ね備えた総合力を評価されました。サンハウスが手がけた水戸の家は、代表の野辺氏の自邸である。建築知識ビルダーズNo.40にも詳細を掲載。

「水戸の家」は、茨城県水戸市の住宅街に建っています。この家では、家族4人に加えて、柴犬、ハムスター、カメレオン、ヒョウモントカゲモドキ、ローソンフトアゴヒゲトカゲ、ウーパールーパー、ツノガエル、バジェットガエル、も一緒に住んでいます。

 



野辺家に訪れるとまず目が留まるのは、外観の美しさ。前面道路側の前提はコモンスペースとし、カエデやコバノトネリコなどの草花を植え、近隣に緑をおすそ分けしています。そのほか、芝や石を引き詰めたアプローチなど天然の素材を用い、風土に根差した住まいを目指しています。外壁は、黒く塗装したスギ板を縦張りにしています。水戸に古くから伝わる黒染め物の水戸黒から着想を得たそうです。

「水戸の家」は野辺さんの自邸のため実験的に、床下エアコンと、温水パネルを設置したが、高断熱・気密性能であったことと、日射取得が十分にできたためほとんど必要なかったそう



どんな場所に建っているの?

「水戸の家」が建つ水戸市の気温は、冬はマイナス5℃で平均気温は新潟市とほぼ同じのため、爬虫類たちが暮らすには少し厳しい環境です。一方で、平均日射取得量は高いエリア。そのメリットを生かすために、南側に大きな窓を配置し、ダイニングやリビングに日射がしっかりと入るように設計されています。窓から入ってきた日射は、足元の500㎜厚のタイルに蓄えられます。蓄熱して暖かくなったタイルは、夜でもじんわりと熱を放出してくれます。野辺さんが育てている爬虫類のなかでもヒョウモントカゲモドキやローソンフトアゴヒゲトカゲは、南側の窓のそばにいます。



冬場は日射を得るだけでは、せっかく室内に熱が入っても、熱はすぐに外に逃げてしまい、室内が十分に暖まりません。そのため、断熱性能を高めるための断熱施工がしっかりと施されています。

【壁の断熱】

高性能グラスウール「マグブローライト22K」(マグ・イゾベール)120㎜と、「付加断ボード32K60㎜×2枚(マグ・イゾベール)を用いた付加断熱

【屋根の断熱】

・高性能グラスウール「マグブローライト22K」を330㎜入れた充填断熱

【基礎断熱】

・立ち上がり部分:EPS「パフォームガード」100

・スラブ下前面部分:EPS「パフォームガード」50

 

窓の断熱性能にも抜かりはありません。窓辺にいるヒョウモントカゲモドキたちが寒さを感じないようにしなければなりません。そのため、メインの南側の窓は、Low-Eトリプルガラスの木製サッシ(ノルド)を採用しています。



「水戸の家」の家全体のUA値は、0.28W/㎡Kを実現しています。この数値は、省エネ基準やZEH以上の断熱性能で、HEAT202020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会)が定めるG3をクリアした、超高断熱住宅といえます。そのかいあって、2020年の冬は日射取得だけで無暖房で過ごせたそうです。



爬虫類たちが夏バテしない家

夏場の対策を見てみましょう。冬場に味方だった日射は、夏は暑さをもたらす敵になります。そのため、夏は日射を遮る工夫が必要とされます。「水戸の家」では、夏は日射を遮りながら、冬は日射取得ができるように日照シミュレーションで計算し、1,340㎜の軒を設けています。ヒョウモントカゲモドキの住まいにも、日射が直接入らないので安心です。

また、日射を遮っただけでは、軒だけでは防ぎ切れなかった熱や内部発熱などで室内の温度は上昇してしまいます。ですので、エアコンを使った冷却が必要です。「水戸の家」では、冷房用のエアコンはダイニング横の階段吹抜けの上部に取り付けてられています。冷たい風は、重く、下に向かって流れるので、その性質を利用して、家全体に冷たい空気を行き渡らせています。高い断熱性能のおかげで、室内に外の熱が入りづらく、室内の温度は魔法瓶のように一定に保たれます。「夏場のエアコンは28℃の設定の予定で、建築計画をしていましたが、実際には湿度の高さが気になり、26℃で連続運転をしています」(野辺さん)。

爬虫類をどこからでも見られる間取り

「水戸の家」は、高い断熱・気密性能のため、冷暖房機器を各部屋に設けていません。そのため、部屋と部屋を仕切る壁が少なくコンパクトな間取りになっています。生活のメインの空間となるLDKは、床や天井の高さでゆるやかに分断されています。キッチンに立ったときと、ダイニング席に座った状態や、畳リビングに座ったときの目線の高さが合うように高さを調整しています。もちろん、窓辺の爬虫類たちをいつも気にかけることができます。

キッチン、ダイニング、リビングの高さを変えている

カメレオンの飼育スペースは2階浴室の隣。カメレオンの飼育には、適度な湿度と乾燥、紫外線、温度が必要なため、風呂上がりに浴室の湿気を流入させたり、あえて西側に窓を設けて温室として飼育環境を整えたりして、建築的な工夫で暖房なしでも飼育できる環境を整えている。また、一種換気の顕熱型を用い、ペットのニオイ対策を行っている

カメレオンの飼育には通常暖房は必須だが、「水戸の家」は冬は暖かいため専用の暖房も必要ない

お風呂の奥にカメレオンの飼育スペースがある

平面図



また、プライベート性の高い寝室や水まわりはすべて2階にまとめられています。グリッドを意識したシンプルなプランにすることで、耐震等級3、耐風等級2を実現。切妻屋根には太陽光パネルも設置し、生涯にわたって経済的な安心感もある家になっています。開きすぎず、閉じすぎない落ち着いた心地よさを感じる家で、子ども2人と野辺さん夫妻の4人だけでなく、温度変化に敏感なヒョウモントカゲモドキやカメレオンといった爬虫類たち、柴犬、ハムスターと一緒に快適に過ごしているそうです。


ハムスターは家族がくつろぐリビングの造作棚の一角に住んでいる。ハムスターのハムタちゃんも年中通して家のなかの温度が一定なので快適そうに暮らしている

造作のソファの下はハムスターの遊び場にもなる

「水戸の家」の気密性能は、0.3㎤/㎥。気密が高いことは家の隙間が少ないこと。冬は寒く、夏は暑い空気が入ってこないので、部屋の温度を快適な状態で保つことができる


水戸の家の魅力をつくり手であり住まい手でもある野辺さんがyoutubeで紹介されています。

日本エコハウス大賞2019受賞者二人による審査プレゼン再現!!
https://www.youtube.com/watch?v=FiCNWk_kO68

 

DATA
水戸の家
所在地:茨城県水戸市
家族構成:夫婦+子ども2人+動物たち
構造:木造軸組構法
敷地面積:249.5㎡(75.47坪)
延床面積:106.8㎡(32.31坪)
1階床面積:50.3㎡(15.22坪)
2階床面積:56.5㎡(17.09坪)
施工年数:20195
設計・施工:サンハウス
断熱性能:UA値=0.28
耐震等級:等級3(許容応力度計算)
省令準耐火:適合

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