雑壁のコア抜きは鉄筋を切断しない
空調設備や床暖房などを増設する場合、設備配管を引き回すためにやむなくRC躯体に貫通孔を設けるケースもあります。管理組合に承認を得たうえで、雑壁のコンクリートをコア抜きします。ただし、雑壁といっても配筋が施されているため、鉄筋を切断しないようにする必要があります。レントゲン撮影を行って鉄筋の位置を画像化して確め、鉄筋を避けるようにしてコンクリートのコア抜きを行いましょう。
STEP1 レントゲン撮影を行う
X線レントゲン発生装置を使って、貫通孔を想定している、スケルトン状態のRC躯体を撮影する。断熱材は、機器が床に対して垂直に固定できないほか、基準を取るための位置取りが難しいので撤去した
STEP2 鉄筋の位置を確認する
撮影されたレントゲン画像。白く映し出されているのが鉄筋の配筋。撮影の前に、レントゲン写真に写っているXY軸と円弧、鉄筋をはっきりと映し出すため、外壁側に黒いシートを張り付ける
STEP3 鉄筋の位置を壁に記入する
鉄筋の位置を確認し、鉄筋の位置を壁に記入する(赤)。同時に貫通孔の位置も記入する(黒)。ここでは、給湯器からの追い焚き用の管および床暖房用のペアチューブを通すため、直径5㎝ほどの貫通孔を設けることにした
STEP4 コンクリートのコア抜きを行う
コンクリートのコア抜きを行う。壁にピンを打ち込んで、ボルトでコア抜きを行う機械を壁に固定。丸い歯を高速で回転させて、孔をあける。1本当たり20~30分ほどの時間がかかる。抜き取られたコンクリートは廃棄するが、経年で進行するコンクリートの中性化の判定や、耐震診断における圧縮試験に使用することも可能
STEP5 設備配管を通す
貫通孔に設備配管を通す。白い配管が給湯器追い焚き用や床暖房用、オレンジ色の配管が給湯および給湯還り用、グレーの配管がガス管
サイザル麻は遮音と高級感の演出が可能な床材
マンション・リノベーションにおいて床材の選択は悩みの種といえるでしょう。マンションの管理規約によって、フローリングを敷くことができないケースがあるからです。その場合は、カーペットなどの素材を検討することになりますが、意外と使えるのが、麻袋の素材として使用される“サイザル麻”です。十分な遮音性能があるほか、野性味の溢れる表情を表現できます[※1]。ストッキングなどを引っ掛ける場合もありますが、足触りも良好です。
階段および居室ともに床材にサイザル麻を使用。遮音性能に優れているので、乾式2重床とはせずに、直床とした。ただし、コンクリートスラブの上には遮音マット「サイレント・トライマット」(特殊建販)を敷き込み、遮音性能を十分に高めている[※2]。空間全体としては、最上階を含むメゾネット住戸であり、階段室を囲む躯体に吹付け硬質ウレタンフォームによる断熱を施している[①参照]
解体後の様子。コンクリートスラブが露出している。この上に、遮音マットを張る
手摺壁もオーク突き板のパネル張り。手摺子はやや色の濃いオーク無垢材で、現場造作
各務謙司さん[カガミ建築計画/カガミ・デザインリフォーム]は、1級建築士およびマンションリフォームマネージャー。都心を中心とした高級マンション・リノベーションの設計提案を得意としています。工事費が1,000万円を超える高額リノベーションの実績は100件を超える。主著に『世界にひとつだけのプレミアム・リノベーション』『最新版 驚異のリフォーム・リノベーション術』(いずれもエクスナレッジ)。自身のブログ「建築家が考えるプレミアムリフォーム・リノベーション」を通じて精力的に発信しています。
※1 マンションにもよるが、“フローリング以外の床材は可”とする管理規約もあり、その場合は、大理石を使用することも可能である。ただし、軽量衝撃音が大きく、クレームの対象になりやすいので、遮音マットの敷設や乾式2重床にするなどの遮音対策が必要である
※2 3階と4階の床は22㎜厚の「サイレント・トライマット KS-LPM220」、階段の床は5㎜厚の「サイレント・トライマット TS-FP50SB」
つづく