はじめに
人が家のなかで快適で安全に過ごすために、換気は重要な要素です。最近ではリモートワークの普及が進み、自宅で過ごす時間が確実に増えました。適切な換気はウイルス感染症対策にも有効であるといわれています。
では、換気は具体的にどのように行えばよいのでしょうか? 本稿では、「換気の目的とメカニズム」「換気の方法(自然換気と機械換気)」「夏の換気・冬の換気」について、設備設計者として数多くの建物にかかわり、『世界で一番やさしい建築設備』・『エアコンのいらない家』・『建築設備パーフェクトマニュアル』・『ストーリーで面白いほど頭に入る建築設備』(いずれもエクスナレッジ刊)の著者としてもおなじみの山田浩幸氏(yamada machinery office[ymo])に、それぞれのポイントを解説していただきました。
7 低温低湿な冬の換気
冬は室温を維持しながら、湿度を下げないようにするのが換気時のポイントです。過剰な換気は冬の乾燥した冷気を室内に大量に取り込むことになり、ウイルスやアレルギー物質の繁殖にとって好条件が整います。『建築物環境衛生管理基準の設定根拠の検証について』(東賢一/近畿大学)によれば、こうした物質は湿度が40%を下回ると活性化するといわれています。
したがって、乾いた冷たい空気を取り入れながらも、湿度と温度を下げない工夫が求められます。販売されている壁掛けエアコンには、加湿機能をもつものがほとんどありません。エアコンで室温を上げれば、熱交換時に室内の湿気が外部に捨てられ、室内の湿度は低下します。そのため、エアコン稼働時は加湿器も併せて稼働させることをお勧めします。
冬の晴天時の湿度は20〜30%程度です。湿度40%以上を目標とするならリビングなどの広い部屋では加湿器は2台設置(加湿量500㎖/h)して常時運転すると、おおむね、この目標をクリアできます。ただし、湿度を上げすぎると(50%を超えると)、断熱性能が低い窓廻りなどに結露が発生しやすくなります。湿度の上げすぎには十分に気をつけてください。
前述のとおり、給気口の取り付け位置にも配慮しましょう。冬は給気口からの冷気が住まい手に直接当たるおそれがあります。基本の取り付け位置は壁面の上部ですが、可能ならば壁掛けエアコンの近くに給気口を設置すると、こうした問題も解消されます。給気口から取り込んだ冷たい空気とエアコンからの暖気が同じ気流のなかで混ざり合うため、冷気の侵入が緩和されるのです。給気口には断熱仕様の製品を採用するとなおよいでしょう。自然換気と機械換気をうまく併用することによって、室内の空気を効率よく入れ替えることで、ウイルス対策を行うことをお勧めします。