神長家の概要
■家賃:約9万円/月(3,250万円のローンを組んだときと月の返済額は大体同じ)
■立地:宇都宮駅から車で15分
■築年数:築29年(1991年8月竣工)
■延べ床面積:125.44㎡(37.94坪)
■断熱性能:築年数と天井断熱材の状況から昭和55年基準と推定(昭和55年区域区分Ⅲ・栃木県・Q値4.7)。無断熱ではなく、断熱材は気持ち程度入っている状態
夏、なんとか快適に過ごしたい!
■エアコン1台で2階を快適にする実験
引っ越したとき、わが家には1階リビングと2階の寝室の2カ所にエアコンがついていました。連載②で触れましたが、私の仕事部屋である2階の15帖の洋室にはエアコンがありません。夏場は昼夜問わず、部屋にいると熱中症になりかけたので、寝室のエアコンの冷気を仕事部屋まで流せないか工夫してみました。
■発泡スチロール&扇風機対策。効き目はいかに!?
2階寝室のエアコンを強運転にし、扉を開けました。冷気を階段下に逃がさないように、ニトリの冷気ストップマットを階段の登り口に立てました。そして、扇風機を寝室の前と、廊下に1台ずつ置いて冷気を隣の仕事部屋へ送り込もうと試みました。
結果は、冷房をしていない仕事部屋の室温が33℃から32℃になる程度で全然ダメでした(涙)。※測定時間は14時ごろ
■なぜ、涼しくならないのか?
悔しいので、本当に冷気が流れていないのかを赤外線カメラで見える化してみました。
2階は冷房をしている奥の寝室しか涼しくなっていないことが分かります。
場所は変わりますが、下記はコンビニの冷蔵品の赤外線画像です。
コンビニの画像を通して伝えたいことは、冷たい空気は重たいため、隣の部屋へ流れにくいということです。1階で冷房をかけていても、アイス売り場と同じように冷たい空気はずっしり重いため、2階まで上がってきません。
また、階段ホールや仕事部屋は、断熱性能が低いため太陽の熱でまるで暖房をガンガンかけているような状態です。涼しくなった寝室のドアを開けたくらいの小さな開口面積では、たくさんの冷たい空気を流すことはできません。
予想はできていましたが、エアコン1台で2階の3つの部屋を涼しくさせることは不可能でした(苦笑)。
ちなみに、同じ日の高気密高断熱の家(平屋28坪)の温度変化のグラフです。
上のグラフは外気温34℃の時の各部屋の温度を示しており、下のグラフは1日の温度変化を示しています。この家では、床下のエアコン1台(設定温度26℃)だけで、全室25~26.9℃以内になっています[※]。それに比べて、わが家は冷房をしている部屋以外は31.8℃でしたから、ほとんど外気温に近いと同じということになりますよね。
※一般的に、冷たい空気は重いため、床下エアコンから吹き出された冷気で部屋中を冷やすことは難しい。この家では、床下に設置したエアコンの冷気を、吹き出し口から出し、天井の吸い込み口から吸引する方法で部屋中に空気を撹拌させているため、床下エアコンでも冷気が下に溜まらない。
■光熱費が1.4倍に上がってしまった
冷房が効かないので仕方なく仕事部屋にエアコンを設置することになりました。6万円の出費です(涙)。
そして……
一番小さい6帖用のエアコンを1台追加しただけで、8月の光熱費は+6,000円の2万円になってしまいました!マンションのときは、エアコン2台で1.4万円だったので、約1.4倍の光熱費アップです。冬の光熱費はもっと高くなるので今から怖いです。
たかが6,000円と思った方にお伝えしますと、
この6,000円アップは35年ローン(変動金利)で考えると、200万円分高い住宅を建てたときの月々の返済額に相当します。毎月6,000円分の光熱費を追加で払うくらいなら、200万円分で住宅の断熱性能を上げて、快適に過ごしたほうがお得だと思いませんか?
私が普段設計している高気密高断熱住宅は14帖のエアコン1台で全館冷暖房をするので、24時間つけっぱなしでも、8月の冷房費は2,000円~3,000円です。この差額があれば、毎月家族で外食できますよね!
テキスト:神長宏明(ラファエル設計)
次回予告
・天井に潜入して断熱材の調査
・床下にもぐって断熱材の調査
・現在の家でも暑くて寒い?
・モデルハウスの室外機の数を知ってる?
前回の記事:連載③「子育て家族には戸建てが一番な理由」