住宅

「過酷な冬の住環境」低気密低断熱住宅ルポ⑮

こんにちは。一級建築士の神長宏明です。私は、エアコンを24時間つけっぱなしでも月々の光熱費が1万円以下で済む高気密高断熱住宅を設計していますが、住んでいるのは【低気密低断熱住宅】です。この連載では、低気密低断熱住宅の住み心地を数回に分けてレポートしていきます。15回目は、性能の低い家の冬の実況レポートです。

神長家の概要
■家賃:約9万円/月(3,250万円のローンを組んだときと月の返済額は大体同じ)
■立地:宇都宮駅から車で15分
■築年数:築30年(1991年8月竣工)
■延べ床面積:125.44㎡(37.94坪)
■断熱性能:築年数と天井断熱材の状況から昭和55年基準と推定(昭和55年区域区分Ⅲ・栃木県・Q値4.7)。無断熱ではなく、断熱材は気持ち程度入っている状態

間取りは、一般的な玄関ホールを挟んで、LDKと和室に分かれている。2階の15帖の洋室は神長さんの仕事部屋として使っている

わが家の冬の寒さを実測

低気密低断熱の一戸建て賃貸に住んで2年目の冬、サーモカメラで分析した状況をレポートします。わが家はここまで寒い!

布団敷きは危険!? 極寒の寝室空間

2022年1月2AM547分の宇都宮市の外気温は極寒のマイナス3.2℃。

愛する妻と、可愛い双子の寝息が聞こえる寝室に行ってみましょう。

上記の画像は2階寝室です。明らかに寒そうで父としては申し訳ないと思うばかり…。

寝室には10~13畳用のデロンギのマルチダイナミックヒーター(MDHU15-PB)を置いています。設定温度は23℃ですが、6畳の寝室の室温は15.6℃……(涙)。

この製品のうたい文句が“たとえ外気温が変化しても設定した温度を+-0.5℃の範囲でしっかりキープできるから、常に快適な室温で過ごせます”なのですが、設定温度よりもマイナス7.4℃も室温が低い(笑)。

測定ポイント(SP)を見てみると、枕元の壁の表面温度は設定温度よりさらに低い10℃前後です。人が寒いと感じるのは隙間風ではなく、寒い壁や床や天井に体温を奪われるからです。

SP1と3は双子たちの顔。枕もと(SP4~5)は9.3℃。妻の枕もと(SP2)は9.1℃。ちなみに、私の枕もと(SP6~8)は6.9~8.2℃。一番寒い場所なので私が担当です(笑)。

床上80㎝(SP9~12)は、10.3~11.7℃、床上140㎝(SP13~15)は11.1~12.8℃、床上180㎝(SP16~17)は13.6~14.3℃で徐々に温度が上がります。
わが家では布団敷きよりロフトベッドで寝たほうが暖かそうです(笑)。

暖房24時間連続運転だけど寒いリビング

次に1階リビングを測定します。エアコン設定温度は22℃で、24時間連続運転です。

2022年1月12日AM6時。リビングは18.5℃でした。ちなみに、玄関ホール5.8℃、寝室15.6℃、外気温マイナス3.2℃で、家の中での温度ムラがものすごくあります。

リビングの赤外線画像です。エアコン暖房を24時間稼働しているので寝室よりも表面温度は高いですね。

壁の表面温度は、身長160㎝の大人の顔付近(SP9)は14.6℃。一方、身長120㎝の子どもの顔付近(SP8)は10.9℃で、約4℃も違います。

 

ちなみに、同時刻で別の地域の気温を比べてみると、

那須町(マイナス4℃)、日光市(マイナス4℃)

福島市(マイナス1℃)、秋田市(マイナス1℃)

盛岡市(マイナス6℃)、仙台市(マイナス1℃)

青森市(マイナス1℃)函館市(マイナス6℃)

宇都宮市(マイナス5℃)は、青森よりも寒く、函館とほぼ変わらない外気温にも関わらず、低気密低断熱住宅なので、家の中は極寒サバイバルです。

※上記はGoogle天気によるものです。わが家の玄関外にある測定器ではマイナス3.2℃で誤差が生じています。

 

ちなみに、暖房を24時間連続運転しているためか、冬の光熱費は56,009円です!

財布の中もサバイバル状態です。

内訳はこちら

電気代

12月3日~26日で31,390円
12月27日~1月2日で12,504円

31日分で電気代は合計43,894円+12月分のガス代12,115円

よって、12月分光熱費56,009円です。

 

参考までに、私が設計・施工している超高気密高断熱住宅は、AM10時から暖房を切っているにもかかわらず、下記のような快適な温度を保っています。

2022110日の1554分頃のリビング上部。窓枠(樹脂)も21℃で壁と変わらない温度。

2022110日の1554分頃の2階子ども部屋。コーナー(入隅)部もほぼ温度変化なし。表面温度が一番下がる窓周辺部も21℃程度をキープしています。

気になる光熱費は…

11月22日〜12月17日で20,707円(749kwh)です!※オール電化なのでガス代はなし。

売電が9,516円(366kwh)なので、実際には光熱費11,191円ですよ(笑)

45坪なのでわが家よりも7坪くらい大きい家ですが、その差は歴然です。

 

この家だけでは?と思う方のために別のお宅の光熱費も記載しておきましょう。

わが家と同等の38坪のお宅の光熱費は…
11月22日〜12月21日で16,949円です!
売電 6,783円なので実際の光熱費は10,166円ですね。

家族構成とか居住時間、熱交換換気扇の種別によって変わるので、同じ条件での比較は難しいのですが・・・

これらの高性能住宅はすべて24時間換気扇は第1種熱交換換気を設置しているので、その費用も含まれています。

ちなみに、わが家は24時間換気はないので、換気に関する電気代は発生していないのです。それでもこの差…(涙)。

 

現在、新居(もちろん超高性能な住宅)を計画中ですが、一刻も早くこのサバイバル環境から抜け出したい思いです。

次回は、「子どもから見た低性能な住宅のリスク」についてお話します。

・子どもと大人の温熱環境は違う
・家族の笑顔を奪う家
・ドア、開けっ放し問題

前回の記事:連載⑭「雨漏りリスクの高い劣化」

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