住宅

「クロゼット内の異臭」低気密低断熱住宅ルポ⑧

こんにちは。一級建築士の神長宏明です。私は、エアコンを24時間つけっぱなしでも月々の光熱費が1万円以下で済む高気密高断熱住宅を設計していますが、住んでいるのは【低気密低断熱住宅】です。この連載では、低気密低断熱住宅の住み心地を数回に分けてレポートしていきます。8回目は、クロゼットの異臭の原因を突き止めます。

神長家の概要
■家賃:約9万円/月(3,250万円のローンを組んだときと月の返済額は大体同じ)
■立地:宇都宮駅から車で15分
■築年数:築29年(1991年8月竣工)
■延べ床面積:125.44㎡(37.94坪)
■断熱性能:築年数と天井断熱材の状況から昭和55年基準と推定(昭和55年区域区分Ⅲ・栃木県・Q値4.7)。無断熱ではなく、断熱材は気持ち程度入っている状態

間取りは、一般的な玄関ホールを挟んで、LDKと和室に分かれている。2階の15帖の洋室は神長さんの仕事部屋として使っている

 

クロゼット内で異臭発生

■夏、クロゼット内は蒸し風呂状態

住み始めて1カ月ほど経った8月。2階仕事部屋のウォークインクロゼットを開けると、もわっとした熱気と同時になんともいえない嫌な臭いが漂いました。

2階仕事部屋にあるクロゼット

 

■湿気の原因は「ルーバー窓」
原因はすぐに分かりました。ウォークインクロゼット内にある窓です!

2階ウォークインクロゼットの窓

この窓は「ルーバー窓」「ジャロジー窓」といわれるもので、一昔前の家によく取り付けられているものです。レバーハンドルを回すとガラス部分の開閉ができ、「換気」ができるので、洗面室や勝手口などに使われています。
このルーバー窓が原因で悲劇を呼んだのです。

■ルーバー窓の悲劇
ルーバー窓は、閉じたとしてもガラス同士がくっついているだけなので、どうしても隙間ができてしまいます。
このルーバー窓の隙間から夏場の湿度が高い外気がクロゼット内に入り込んでいたのです!

ここで、ルーバー窓を開けていれば「排気」ができるのでは? と思う人もいるでしょう。
換気は2つ以上の窓(空気の入口と出口)がないと行われません。

換気には空気の出入口が必要

わが家のクロゼット内には「ルーバー窓」しかないため、空気の入れ替えがうまくできません。なので、入ってきた空気が排気されずクロゼット内でよどみ、異臭が発生していたのです。

では、このクロゼットの湿気問題をどうすれば解消できるのか探っていきます。

クロゼットの湿気対策

■ 除湿剤は効果がない!?
クロゼット内の湿気対策に除湿剤「水とりぞうさん」を設置しました。

しかし、ルーバー窓から湿度の高い外気がどんどん入ってくるため数日で満杯になってしまいました……。おそるべし夏の湿気!

「水とりぞうさん」が数日で満杯になった

■クロゼットのドアを開けてみる
窓が1つしかないクロゼット。どうすることもできないので、湿気がこもらないようクロゼットのドアを全開にして空気の流れをつくりました。

2階仕事部屋のウォークインクロゼットは、湿気対策でドア全開

この方法がかろうじて有効なのは、仕事部屋に窓が4つあるのでクロゼットも含めて部屋の換気ができるようにと考えたからです。

クロゼットのドアを開けることで空気を流す

 

■換気ではなく冷房で除湿
空気を流すという意味では効果はありましたが、季節は夏!
これらの窓を開けたところで、湿度80%以上のジメジメした空気が入ってくるため、湿気対策にはなりません。

最終的にクロゼットのドアを開けた状態で、エアコン冷房をして仕事部屋とまとめて除湿をしました。夏は外気の湿度が高いので、湿気対策をするには自然風での換気では効果はなく、冷房するしか解決策はないのです。

ちなみに、冬の外気は湿度が低いので湿気対策にはなりますが、寒くて窓を常に全開の状態は難しい。春頃も花粉の影響を考えると厳しいでしょう。

こうしてわが家のクロゼットは開かずの間ではなく、“閉じずの間”として仕事部屋に君臨しています……。

仕事部屋なので、来客時のみドアを閉める

 

余談ですが、ルーバー窓の隙間が割と大きいので蜘蛛などの虫がよく侵入してきます(恐怖)!

 

次回は、異臭続きでトイレの話です。

テキスト:神長宏明(ラファエル設計)

次回予告
・換気ができないトイレ
・トイレの臭いが部屋に逆流!?
・換気のメカニズムを知ろう

前回の記事:連載⑦「冬もカビが生える浴室」はコチラ

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