住宅

「視線が自然と坪庭へと導かれる高低差の設計」昼の庭と夜の庭の美しい佇まい②

建築家・彦根明氏と造園家・荻野寿也氏がデザインを手がけたコートハウス「SGY」。建物のどの位置からも中庭の植栽を眺められ、居心地の良さは抜群です。昼も夜も。ここでは「SGY」の魅力と設計手法について、3回に分けて紹介します。

 

「SGY」は3.3寸勾配の大屋根空間に、中庭と2つの坪庭が設けられています。断面詳細図からは庭を楽しむためのさまざまな工夫を読み取ることができます。

1: ダイニングの奥に設けられた小さな腰窓は目の高さを考慮して位置を設定。壁仕上げを枠見込み部分に巻き込む納まりとしているので、視線が自然と坪庭へと導かれる 2:子ども室の腰窓はデスクに座ったときの視線に合わせて設定 3:ダイニング・リビング・寝室のサッシは既製品のアルミ樹脂複合サッシ「サーモスII-H」(LIXIL)を採用。サッシ高さはいずれも規格寸法の最大高さ2,200㎜で統一 4:スポットライトはダイニングや寝室から見えないように開口部の上に設置。月明かりのような自然な光で中庭全体をライトアップしている。スポットライトを地面に設置する方法では、光の方向が不自然であるうえ、地面が明るくならないので、庭全体の“明るさ感”が乏しくなる。ここでは、広角配光(70°)のスポットライト「OG 254 354」(オーデリック)を選定。挟角配光のスポットライトに比べて、樹木・中庭全体を光で包み込むことができる。色温度は落ち着きが感じられる電球色(2,700K)としている


子ども室の中庭側にはデスクを設置。視線の高さにスリット状の腰窓(突出し窓+FIX窓)を設けていて、背丈のあるアオダモやマンサクなどの緑を眺められる


中庭からダイニングを見る。外壁は焼きスギ板(DS-05 磨き 幅135/シンリン共同)の縦羽目板張り。アルミ樹脂複合サッシは「サーモスII-H」(LIXIL)のブラックを採用し、新緑の植栽が映えるシックな表情に仕上げた。横長の開口部越しに造作の本棚やダイニングテーブルなどが見え、お洒落なブックカフェのような雰囲気を漂わせている


ダイニングの天井はスギ板(森呼吸135幅/カネサダ横尾木工所)仕上げ、床は表面に2㎜厚の挽き板を張り付けた複合フローリング「ベリティス プラス 真銘木フローリング/ウォールナット」(パナソニック ライフソリューションズ社)仕上げとした。夜間に中庭がライトアップされると、“上から下へ”の光で植栽とウッドデッキ「木もちe-デッキ」(小川耕太郎∞百合子社)がライトアップされる。地明かりが得られ、昼間よりも、内と外の領域が曖昧に感じられる。樹形もはっきりと見える(手前の高木はコナラ)


リビングから中庭を見る。床レベルが1FLよりも800㎜下がっているので、庭と空が開口部越しに見える。一部連窓となった開口部や両脇の化粧柱、窓下の腰壁を濃色系で統一しているので、壁面全体が庭を切り取るフレームのように見える


写真=中村風詩人

①に戻る

③につづく

 

こちらの記事もおすすめ

【PR】「図面を書く意味とは?」建築教育のリアル①

住宅 建築2021/11/30

「建築学科を卒業したにも関わらず、実務設計の知識がない!」と新人教育で嘆く実務者の声をよく聞きます。この連載では、「実施設計を行い、実際に家を建てる」というユニークな授業を行う学校法人フェリカ学園 フェリカ家づくり専門学校で教える教師に取材。連載1回目は、実践的な授業の中身と図面に描かれる線の大切さについてです。

依頼先選びで9割が決まる!家を建てようと思ったら見てほしい6つの動画

2021/04/09

全国の工務店が集まって本と動画をつくるプロジェクト「工務店編集会議」が、YouTubeで家づくりのアドバイスをしています。家を建てようと思ったら、住宅展示場に行く前に見てほしい6つの動画を紹介します。

究極のオフグリッドハウス ーDLTHUT-①

建築 建材 設備2022/10/11

「DLTHUT」は地域産材をフル活用した木造建築であり、太陽光発電やLPガス、最先端の水処理再生技術を駆使した究極のオフグリッドハウスです。一次エネルギーの安定的な確保やそれを建築につなぐインフラの維持が問題になるなか、「DLTHUT」はこれからの建築の在り方を表現しています。

電気代を深堀りしたら見えてきた!① ウクライナ侵攻は我が家の電気代に影響するの?

連載2022/06/24

最近、電気代が高くなった・・・そう実感している人は少なくないでしょう。電気は、私たちの暮らしに欠かせないエネルギー。その価格に無関心ではいられません。この連載では、電気代を深堀りし、これからの住まいと暮らしを考えていきます。

「“火”に強い木の内外装」安井昇の木造化・木質化と防耐火④

建築 連載2021/02/05

木材を燃えにくくする  B(木材を燃えにくくする)とは、木材に対してホウ酸やリン酸などの難燃化が可能な薬剤を加圧注入して、木材を不燃化する方法です。不燃成分の働きによって、木材への着火を防止できます。 …

Pick up注目の記事

Top