住宅

「内外をあいまいにする中庭と坪庭の平面計画」昼の庭と夜の庭の美しい佇まい①

建築家・彦根明氏と造園家・荻野寿也氏がデザインを手がけたコートハウス「SGY」。建物のどの位置からも中庭の植栽を眺められ、居心地の良さは抜群です。昼も夜も。ここでは「SGY」の魅力と設計手法について、3回に分けて紹介します。

「SGY」は中庭と2つの坪庭を内包するコートハウス。設計は、『最新版 最高に美しい住宅をつくる方法』など、数々の著作をもつ彦根明氏+狩野翔太氏(彦根建築設計事務所)、植栽は『荻野寿也の「美しい住まいの緑」85のレシピ』の著者として知られる荻野寿也氏(荻野寿也景観設計)が手がけています。

 平面図(上が1階・下が2階)からも読み取ることができるように、京都の川床をイメージした中庭を囲む回遊性に富んだ間取りで、建物内のどこからでも庭の樹木を眺められます。1階はスキップフロアとして庭や空の見え方に変化をもたせています。床レベルをダイニングより800㎜下げたリビングでは、庭と空が視界に飛び込みます。それは、開口部や吹抜けの配置も庭の見え方を意識してのもの。場所によっては、中庭と坪庭の双方に視線が導かれるので、森のなかに佇む別荘にいるかのような感覚が得られます。

 

1階平面図

1: 敷地の形状に合わせたコートハウス。3.6×7.2mの中庭(テラス)を望む壁面はすべて開口部となっており、周囲の視線を一切気にすることなく、どの位置からも中庭の植栽を眺めることができる。浴室とリビング・ダイニングの一角にも坪庭を設けた  2 :全体がスキップフロアになっており、リビングと寝室は、ダイニング・キッチンよりも床レベルを800㎜下げている。目線の高さが下がることで、庭と空が見える  3 :中庭の中央には京都の川床をイメージしたウッドデッキを設置。ウッドデッキの両側には、川に見立てた砂利が敷き詰められ、4つの植栽帯が点在する  4:道路に面する玄関ポーチ廻りと建物東側にも樹木を植え込む。アオダモやドウダンツツジといった株立ちの樹木などが美しい外観を街並みに提供する


 

5 :階段を2か所に設置。行き止まりがなく、子ども室を通り抜けて建物内を自由に移動できる 6 :玄関ホール・リビングの吹抜けや、子ども室の腰窓からも庭の景色を楽しめる

 

 上の写真からも読み取れるように、夜になれば、内と外のつながりをより一層感じられるでしょう。それを可能にしているのは、光と影の方向を意識した照明計画。庭のライトアップといえば、地面からのアッパーライトが主流。ただし、下からの光は方向が不自然であり、地明かりがないので、ウッドデッキや砂利、グランドカバーをはっきり見せられません。

 一方、「SGY」では、建物上部に取り付けたスポットライトで庭をライトアップ。上からの光は、月明かりと同様なので自然な印象を与え、地面の明るさ感も申し分ありません。窓越しの庭を美しく見せられます。

写真=中村風詩人

②につづく

 

こちらの記事もおすすめ

「都心の真ん中に立つ活動の場」働き方とまちづくり①

建築2022/04/15

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、リモートワークなどの柔軟な働き方が一気に浸透しました。この連載では、新たなライフスタイルに合わせ多様化する働き方やそれらを受け止めるワークプレイス、またその周辺を取り巻くまちとの関わりについて紹介します。

「マンションの断熱改修」各務謙司マンションリノベ①

住宅 建築2021/06/15

『世界にひとつだけのプレミアム・リノベーション』の著者であり、都心を中心に、マンション・リノベーションの設計を手がける各務謙司氏。間取りとインテリア、家具・ファブリックのデザイン・コーディネートに加え、法規・断熱・構造・設備・遮音などに関する知識を紹介しましょう。

「木でつくる燃えにくい建築」安井昇の木造化・木質化と防耐火②

建築 連載2021/01/08

 建築物の木造化・木質化における防耐火設計について具体的に考えてみましょう。目標は、木材の特性を正しく理解したうえで、 〝火炎を燃え拡がらせない〞〝火炎で建物が壊れない〞〝火炎を建物の内外へ燃え抜けさ …

建築知識ビルダーズNo.47が発売!中身をチラ見せ!

動画 住宅2021/11/24

建築知識ビルダーズNo.47が、11月27日(土)に発売します。今号の特集は、「住宅トレンド解剖図鑑 2022年版」。全国のハウスメーカー、工務店、設計事務所のモデルハウスや社屋を取材し、そこから見えてきた住宅トレンドを徹底解剖します。

「外廻りのデザイン」スノーピークの家づくり②

住宅 建築2022/05/13

アウトドアブランドとして人気が高いスノーピーク。“衣・食・住・働・遊”のフィールドをあまねく網羅し、特に、住宅関連では“野遊びできる家。”をコンセプトに、規格住宅や街並みの監修を含むアーバンアウトドア事業を展開しています。今回は主に、外廻り空間をデザインするためのルールについて紹介します。

Pick up注目の記事

Top