連載

「夏の湿度コントロール方法」低気密低断熱住宅ルポ⑳

こんにちは。一級建築士の神長宏明です。私は、エアコンを24時間つけっぱなしでも月々の光熱費が1万円以下で済む高気密高断熱住宅を設計していますが、住んでいるのは【低気密低断熱住宅】です。この連載では、低気密低断熱住宅の住み心地を数回に分けてレポートしていきます。19回目に続き20回目は、夏を快適に過ごすための方法についてお話します。

神長家の概要
■家賃:約9万円/月(3,250万円のローンを組んだときと月の返済額は大体同じ)
■立地:宇都宮駅から車で15分
■築年数:築30年(1991年8月竣工)
■延べ床面積:125.44㎡(37.94坪)
■断熱性能:築年数と天井断熱材の状況から昭和55年基準と推定(昭和55年区域区分Ⅲ・栃木県・Q値4.7)。無断熱ではなく、断熱材は気持ち程度入っている状態

間取りは、一般的な玄関ホールを挟んで、LDKと和室に分かれている。2階の15帖の洋室は神長さんの仕事部屋として使っている

 

連載18回目19回目では、温度と湿度の関係、そして快適な湿度についてお話ししました。今回は、夏を快適に過ごすために、ある程度の温度で湿度が低い状態をどうやってつくればよいのかを説明します。

湿度を下げるにはエアコンがベスト

まず、湿度を下げるには「エアコン」を使うのがコストのうえで最も合理的です。そのためには言わずもがなしっかりと断熱・気密を高めることが大切です。

次に、エアコンの容量算定を間違えないこと。高気密高断熱住宅にしてもエアコンの容量が不足していると除湿しきれない状態となってしまいます。わが家と同じくじめじめした状態になります。ちなみに、家の大きさがほぼ同じ低気密低断熱のわが家と、高気密高断熱住宅(Q1.0住宅鶴田)を比べると、わが家は6帖用エアコン+リビングの6帖エアコンでも、その部屋だけしか設定温度にならない状態。一方、高気密高断熱住宅の場合は14帖用のエアコン1台で家全体を涼しくできています。

空気を循環させること

次に、エアコンへの空気循環をうまくできないと、家全体の除湿がうまくいきません。そのため、サーキュレーターを活用したり、エアコンが冷たく重い空気(絶対湿度が高い空気)を吸い込みやすい状況にしたりするとよいでしょう。

湿度をしっかり管理したい場合は、換気設備の検討を

湿度コントロールをしっかりしたい場合は第1種換気か、ダクト式の第3種換気にするとよいです。24時間換気のある家で特にダクトレスの第3種換気を付けている場合は、勝手に外気が入ってくるので湿度コントロールが難しくなります。換気をする(排気)=外気を取り込む(給気)という状態だからです。

ひし形の熱交換器の左上が外気吸込みOA、右上が屋外への排気EA、左下が室内からの吸込みRA、右下が室内への給気SAです。温度が変わっているので、きちんと熱交換されている様子です。

通風する前に外気の湿度を確認しよう

最後に通風についてお話します。お客様には、「外気と室内のどちらの環境が快適か考えてください」と言っています。環境とは絶対湿度のことです。私のモノサシでは、夏は絶対湿度を11g/㎏以下にすることが重要だと考えています。なので、室内が11g/㎏以上になったときに、春や秋の中間期は外気がそれ以下になることがあるので通風や換気は有効です。一方、梅雨時期の夜間に通風をすれば室温は下げられますが、外気の湿度が高いので「外気温25℃、相対湿度80%、絶対湿度16g/㎏の通風」は有効ではないと判断しています。

 

次回は、湿度つながりで冬の結露について解説します。

次回予告
・夏型結露と冬型結露の違い
・それって本当に過乾燥?
・冬の快適な温度と湿度

前回の記事:「快適な湿度を探る」低気密低断熱住宅ルポ⑲

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