建築 設備

「3密にならない間取りのコツ」これからのカフェ・飲食店設計術①

飲食店における空調設計は、目に見えないものですが、飲食店の評価を大きく左右するもの。最近では、換気の重要性も非常に高まっています。ここでは、空調や換気を重視した飲食店の設計について解説します。

 飲食店の設計において、店内の快適性を直接左右する空調は、特に重視したいポイントの1つです。とりわけ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡がるなか、カフェやレストランなどの飲食店は換気についてこれまで以上に気を配らなければならない状況となっています。

 これから新たに飲食店をつくる場合は、換気に十分配慮するとともに、店内の温度を快適に保てる適切な換気・空調計画が求められるでしょう。とはいえ、これらに配慮しただけでは魅力的な空間が実現するわけではありません。世の中のトレンドや最新の機器を把握し、非日常感を演出できる上質な空間を設計したいものです。

オープン空間で密を解消する

 建物の外でカフェや食事を楽しめる“オープンテラス”が人気を集めています。ヨーロッパなどでよく見られる形式で日本の飲食店でも増えつつあります。道路法32条に基づいて申請を行い、許可が下りたら「占有料」を支払えば導入できる仕組み。それを利用して、「POTASTA 千駄ヶ谷」では店の前にベンチを設置し、外でコーヒーやサンドイッチを楽しめるようにしました。

上・下/「POTASTA 千駄ヶ谷」の外観。折戸を開ければオープンテラスとして使える。オーニングを設置しているので雨の日も安心

折戸とする場合は、閉めた際のスペース確保が必要となるので要注意

「POTASTA千駄ヶ谷」設計:BaNANA OFFICE

 

 こうした流れのなか、国土交通省は2021年11月に道路法を改正。歩行者利便増進道路(通称:ほこみち)制度が施行されています。地域を豊かにする歩行者中心の道路の構築のため、各道路管理者が指定した道路のうち、オープンテラス等の施設を誘導するために指定された特例区域では、道路占用がより柔軟に認められるというものです。すでに、御堂筋(大阪市)や三宮中央通り(神戸市)などで同制度が適用されています。積極的に活用したいものです。

カウンターを利用して外とつなげる

 駅の中にあるカフェのカウンターを店の外とつなげた例。カウンター席は窓に面して設置されることが多く、外をゆったりと眺めるのに格好の席です。この事例では、カウンター席の窓を折戸でオープンにし、建物の外とつながるよう工夫しています。畳んだ折戸は片側に寄せれば、開放感はさらに高まります。店の外側からはスタンド式のカウンターとして利用できるように、カウンターと椅子を高く設定しているのがポイントです。

「PRONT IL BAR」を外から見たところ。店の外側はカウンターを介してスタンド席として機能する。腰壁は内側と外側の色をそろえて統一感を出した

カウンター席を設ける場合は、壁ではなく窓に面して配置したい。圧迫感がなく開放的な印象となる。テーブル席を設ける場合は、椅子を移動させれば何人のグループにも対応できるように、レイアウトに柔軟性をもたせている

カウンター席のディテール。座ったときにスタンド席に立つ人と視線がずれすぎないように、カウンターを高めの位置に設定。室内側にはスマホなどを充電できるコンセントも用意

「PRONT IL BAR」設計:BaNANA OFFICE

 

②につづく

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