欲しくなる! 北欧ヴィンテージ家具の豆知識

日本の住宅に相性抜群な北欧家具。ただ、ひとくちに北欧家具といっても、さまざまな地域のものがあります。そこで、建築知識ビルダーズで「おすわり講座」を連載している建築家の小谷和也さんと一緒に、北欧家具のヴィンテージ家具を扱う「北欧家具talo」に行って、どんな違いがあるのか取材をしました。

マスタープラン 小谷和也氏
中古マンションのリフォーム、リノベーションに特化した兵庫県の一級建築士事務所。国産材や漆喰などの自然素材を使った「木のマンションリノベーション」を手がける。自身も超のつく椅子マニア。現在、建築知識ビルダーズにて「小谷和也のおすわり講座」を連載中。

北欧家具talo
神奈川県伊勢原市にある、ヴィンテージの北欧家具を扱う家具屋さん。既製品ではなく、オーナーの山口さんが、点在するアンティークマーケットをまわって仕入れを行っている。200坪の倉庫に、主にデンマークとフィンランドから仕入れた家具が所狭しと並んでいる。

写真に納まらないくらいたくさんの家具が倉庫の中にびっしり!

伊勢原駅から車で約15分。のぞかな風景の中に巨大な白い倉庫が見えたら「北欧家具talo」に到着。外観から、所狭しと並べられた椅子やソファ、テーブルなどがちらっと見えて、大興奮! 早速なかに入りましょう。



フィンランドとデンマーク家具の違い
taloでは主に、フィンランドとデンマークの家具を扱っています。さて、北欧家具といっても国よって、家具そのものの考え方が違うといいます。フィンランドとデンマークの家具の違いをオーナーの山口さんにお伺いしました。



フィンランド家具はシンプル

山口さん「フィンランドの家具づくりは、シンプルかつ簡素。少ない部材で誰でも簡単に組み立てられる仕組みが考えられています。シンプルですが、機能性と合理性も兼ね備えています。言い換えれば、非常に実用性が高いということです。フィンランドは現在も、家具に限らず、プロダクトをデザインする上で実用性や合理性がベースになっているものが多いような気がします。フィンランドの椅子で有名なものといえば、フィンランドの建築家アルヴァ・アールトの椅子『スツール60』ですね。『スツール60』も、少ない部材で構成されています。そして、スタッキング機能に加え、椅子としてだけでなくサイドテーブルなど、幅広い使い方ができます。」

スツール60のLレッグ部分は、5枚のスリットに接着材を付けた薄板を入れて90度に曲げている


早速、小谷さんがアルヴァ・アールトの椅子「スツール60」をチェック! 写真は、「北欧家具talo」の展示品の中で最も古い1950年代のもの。天板の突板は劣化していますが、70年近く経っても使える堅牢さがこの椅子の魅力のひとつだそうです。

ヴィンテージのスツール60を観察中の小谷さん



フィンランドのヴィンテージ品は1960~70年代のものが多いため、この1950年代のスツール60はかなりレア!

1950年代のスツール60


山口さん「スツール60は、Lレッグの積層枚、ビスがマイナスかどうか、天板の小口から見える芯材の接続方法などである程度の年数が特定できます。ちなみに、1950年代のものは、Lレッグの積層数は4枚です。」

Lレッグの積層数が4枚

ビスがマイナスかどうかも見分けるポイント


フィンランド・ヘルシンキにある「Studio Aalto」の様子。スツール60だけでなく、アアルトがデザインした家具を見て、触れれるマニアにはたまらない場所


山口さん「うちではリペアやクリーニングも行っていますが、あえて経年変化した部分を残すこともあります。この『スツール60』でいうと、Lレッグの浮きは残しています。また、リノリウム張りであれば、下地の網目が出てきたりするのですがあえてそのまま残しています。年輪のような雰囲気を楽しめるのが、ヴィンテージ品のよさでもありますから。」


フィンランドのイルマリ・タピオヴァーラによる「ドムスチェア」。この椅子も合板をうまく構成してつくられている


北欧ヴィンテージ家具の王道、デンマーク
次に、北欧ヴィンテージ家具といったら外せない、デンマークの家具についてお伺いしました。

山口さん「デンマークは、長い歴史のなかで見ると比較的国が安定していました。なので、ほかの国と比べると家具職人が育つ環境がしっかりあったといえます。シンプルなフィンランド家具に比べると、造形的なのが特徴でしょう。デザイン性を具現化する上での職人自身の技術力や、企業がもっている技術が高い国といえます。技術の高さを学ぶため、維持するためにデンマークでは家具の学校が古くから存在します。

デンマークで有名なのは、コーア・クリント、ハンス・J・ウェグナーです。それぞれの経歴を見るとわかるのですが、家具職人としての資格をもち、そして家具デザイナーになっています。つまり、職人として家具のつくりかたを知り、その知識を生かしてデザインを行うので、細かな部分までのこだわりが強いのです。」

小谷さんお勧めのデンマーク家具、カイ・クリスチャンセン「No.42 」。撮影:小谷和也

taloでは、張地を新しくしてもらえる



小谷さんお勧めのデンマーク家具は、カイ・クリスチャンセンの「No.42 」。ファブリック部分が大きいので、座り心地がとても良いのだそう。日本でも人気の椅子。

小谷さん「ちなみに、出物が多いデンマークに比べ、種類の少ないフィンランド家具のヴィンテージを取り扱うところは国内では少ないのです。だから、taloは家具マニアにとっては宝の山です。」

ぜひ、ドライブがてら「北欧家具talo」で、ヴィンテージ家具がつくられた時代背景に思いを巡らせながら、世界に1つだけの家具を見つけてみてください。

北欧家具talo
住所:神奈川県伊勢原市小稲葉2136-1
営業時間:10時~18時
定休日:火曜

こちらの記事もおすすめ

【動画】高断熱・高気密住宅の施工の肝を押さえる!

動画2021/08/10

高断熱・高気密住宅をつくるためには、緻密な設計と精度の高い施工が欠かせません。建築知識ビルダーズのinstagram公式アカウントでは、施工のコツが分かる「現場動画」を随時アップしています。今回はそのなかから最新動画を6つご紹介します。

「“快適基準寸法”を生かす」スノーピークの家づくり③

住宅 建築2022/05/17

アウトドアブランドとして人気が高いスノーピーク。“衣・食・住・働・遊”のフィールドをあまねく網羅し、特に、住宅関連では“野遊びできる家。”をコンセプトに、規格住宅や街並みの監修を含むアーバンアウトドア事業を展開しています。今回は主に、外廻り空間をデザインするためのルールについて紹介します。

「自然との調和」寒冷地で別荘をつくる方法ー①

住宅 建築 インタビュー2022/09/02

自然豊かな北海道、特にニセコや富良野では、外国人の不動産投資が活況。自然と一体化したダイナミックな建築が数多く計画されています。今回は、外国人向け別荘の設計を数多く手がける須藤朋之氏(SAAD/建築設計事務所)に、建築計画や断熱・気密の考え方をお伺いしました。

【PR】【動画】350㎜幅の耐力壁で実現 圧迫感のない狭小建築

動画 住宅 建築 建材2021/06/19

間口の狭い木造2・3階建て戸建住宅の構造計画を行う場合に悩ましいのが、バランスのよい耐力壁の配置です。今回は、山田憲明構造設計事務所の山田憲明氏に、狭小建築における構造的な問題点とその解決方法をうかがいました。解説動画もご覧ください。

「子育て家族には戸建てが一番な理由」低気密低断熱住宅に住んだルポ③

連載2020/10/12

こんにちは。一級建築士の神長宏明です。私は高気密高断熱住宅を設計していますが、住んでいるのは【低気密低断熱住宅】です。連載3回目は、住んでみて分かった戸建て住宅の魅力をレポートしていきます。

Pick up注目の記事

Top