建築

美しいホテルリノベの法則~The rule of beautiful hotel renovation~(2)

ホテルでは、遊休状態の不動産をリノベーションするケースが少なくありません。今回は、ホテル・リノベーションのデザインを数多く手がけるSTAR・佐竹永太郎氏にその考え方をインタビュー。美しい写真とともに解説します。

ホテルのリノベーションを数多く手がける佐竹永太郎氏(STAR)。その事例を紐解いてみると、用途・デザインの多様性に気がつきます。「当社のミッションは、〝クライアントの課題を美しさで解決する〟ということ。言い方は少し乱暴かもしれませんが、建築家にありがちな作品性を押し付けるということではなく、クライアントの問題意識に寄り添った最適なデザインを提供するように、常日ごろから心がけています」(佐竹氏)。 

 したがって、STARには標準化された設計手法というものが存在しません。言わば、佐竹氏の仕事は、単なる建築の設計ではなく、建築をコアとする、クライアントのリブランディング(ブランドの再構築)ということになるでしょう。その作業を建築という視点から、法則として落とし込むと、以下のように説明できます。

3  客室の内装と広さを最適化

客室も共用部分と同様に、具体的な客層を意識した内装・設備の設計を行いましょう。このとき、客単価の大幅アップを望むのであれば、間仕切り壁を解体して2つの客室を1つの客室にする、という方法も考えられます。

外国人観光客を意識して設計した「椿ホテル」の内装。浮世絵を壁に用いるなど、非日常的な“和”を表現した


耐震補強に合わせて、2つの客室を1つの客室にして、温泉付きのスイートルームとした「INFINITO HOTEL&SPA南紀白浜」。客単価の大幅アップを実現した


4 外とつながる浴室を設ける

レジャーを主目的とするホテルであれば、浴室や露天風呂は集客を大きく左右する重要な要素。フォトジェニックな露天風呂や外部とつながる浴室は、SNSで拡散されやすく、ホテルの認知度を確実に高めてくれるに違いありません。オーシャンビューであれば、浴室や露天風呂が海へと続くような印象になるよう、お湯を外へかけ流すなど、ゲストを幻想的な世界へといざないましょう。

「安芸グランドホテル」の温浴施設を貸切露天風呂「望厳の湯」として改修。写真映えを意識して、海越しに厳島神社を望む絶景の露天風呂を計画し、同時に風呂の温泉化も実現。集客力の向上につなげた


「INFINITO HOTEL&SPA 南紀白浜」に設けられたクリエイティブ半露天風呂「昴」。浴室と外部の領域を曖昧にし、水面が海とつながっているように表現


「INFINITO HOTEL&SPA南紀白浜」のスパINFINITO「空」。ガラス間仕切越しの屋外にも浴槽を設け、室内と室外の一体感を高めた


5 細部までブランディング

冒頭でも説明したように、建築のデザインだけでは、クライアントのリブランディングとはなりえません。建築以外にもデザイン可能な要素は多岐にわたります。調度品の調達、ロゴやサインボードのデザインなど、ホテルの付加価値を高められる要素すべてに目を向けるのが、STARのスタイル。「私たちではすべてのデザインをワンストップで行います。それを実現するために、スペシャリストが集うteamSTARという設計スタイルを開発しました」(佐竹氏)。

 

「INFINITO HOTEL&SPA 南紀白浜」のライブラリーには、STARがセレクトした洋書が並んでいる


「INFINITO HOTEL&SPA 南紀白浜」ではボートのオールを活用したサインを製作


「INFINITO HOTEL&SPA 南紀白浜」の客室では、地元の偉人南方熊楠をイメージし、欧米博物学の古植物画を和の掛軸に仕立てた


「桜スカイホテル」の廊下。桜の木をイメージしたグラフィック(墨絵)を「3M ダイノック フィルム」(3M)に印刷した客室表示を使用


Afterwords ブランディングは自社の事務所から

STARは2005年10月設立。「INFINITO HOTEL&SPA南紀白浜」に代表される有名リゾートホテルをはじめ、ISETAN から納骨堂まで幅広い分野の建築デザインを行うデザインチーム。CEO の佐竹永太郎氏は東北大学を卒業後、北川原温建築都市研究所にてアートを切り口とした建築デザインに従事。現在は課題を共有し解決に導く建築家&クリエイティブディレクターとして企業トップから高く評価されています。

「STARLOUNGE」と呼ばれる自社オフィスは、むき出しとなったRCと無骨な大谷石、色鮮やかな木製建具が目を引きます。骨董・アートが美しくディスプレイされ、香りまでもがデザインされており、“ブランディング”という、客層や目的に合わせてトータルにデザインを提案するSTARの哲学が、その設えに見て取れるでしょう。

おわり

 

こちらの記事もおすすめ

工務店の社屋が熱い! 北海道でゼロエネ&快適オフィスリノベ

新着 建築 設備2020/11/19

全国の工務店の社屋を訪ね、これからの住まいについて考える不定期連載。記念すべき第1回は、札幌市の棟晶。精密機器メーカーの流通倉庫兼事務所だった築30年の鉄骨3階建てをリノベーションして、エネルギー負荷のない先進的な事務所に蘇らせました。

低気密低断熱住宅に住んでみたルポ①「家の性能より立地を優先」

新着 住宅 連載2020/10/09

こんにちは。一級建築士の神長宏明です。私は、エアコンを24時間つけっぱなしでも月々の光熱費が1万円以下で済む高気密高断熱住宅を設計していますが、住んでいるのは【低気密低断熱住宅】です。この連載では、なぜ低気密低断熱住宅に住むことにしたのか、そして実際の住み心地を数回に分けてレポートしていきます。

知ってた?土間つきリビングの魅力

新着 建築2020/06/19

昔は、日本家屋に普通にあった土間ですが、最近では「土間付きリビング」としての役割が注目されています。アウトドア用品や園芸用品を置いたり、子どもの遊び場にしたり、薪ストーブを置いたり・・・その使い方は家族によってさまざまです。今回は、田嵜建築設計事務所の田嵜さんの自宅の土間付きリビングを紹介します!

新常識!ウッドデッキは第2のリビング

新着 建築2020/07/08

気持ちのよい天気の日は、家にいても庭の緑や自然を感じたいですよね。 そんな時に大活躍するのが「ウッドデッキ」です。 洗濯物を干したり、家の中に置けない邪魔なモノを置く場所として利用したりするだけのイメ …

工務店の社屋が熱い!鹿児島の丘の上の工務店。衣・食・住を提案<動画あり>

住宅2020/11/02

鹿児島の工務店、粹家創房(いきやそうぼう)は、家づくりのほかにギフトショップやカフェの運営、オリジナルプロダクトの販売なども手掛けるオールマイティな工務店。なぜ、家づくりだけでない幅広い事業を手掛けているのでしょうか?代表の冨ヶ原さんにお話を伺ってきました。

Pick up注目の記事

Top