木造全体をグラスウールで包む
グラスウールを断熱材として事業展開する企業は国内に複数存在しますが、まずは御社の立ち位置について教えてください。
雨田氏(以下、敬称略)ーパラマウント硝子工業は1946年の設立から昨年75周年を迎えました。創業当初は造船や電気冷蔵庫での利用が主な需要でしたが、’64 年に住宅向けの断熱材として「ハウスロン」の販売開始、’84 年には国内初となる高性能グラスウール「太陽SUN」の製造販売も他社に先行するなどグラスウール断熱材のパイオニアとしての自負があります。とりわけ、寒冷地ではピンク色が高性能グラスウールの目印として、「太陽SUNシリーズ」が根強い人気を誇ります。
ほかの断熱材と比較したグラスウールの強みは、断熱性能に対するコストパフォーマンスの高さ。それが木造住宅で最も採用されている理由であり、2025年の新築戸建住宅省エネ基準適合義務化を控えたなか、エネルギー供給に関する不確定要因が増大する状況で、グラスウールへの果たすべき期待は一層大きくなるに違いありません。
そうしたなか、住宅用高性能グラスウールのリブランディングを行い、「ハウスロン」として集約しましたね。
雨田ー一言でいえば原点回帰です。「ハウスロン」という名称は住宅用グラスウールを発売した当初から長きにわたり使ってきたものであり、お客様からは思いのほか親しみを感じてくださっている、という実態に基づいた判断。「ハウスロン」に一本化することで、製品の認知度向上や販売促進につなげていきたいと考えています。
グラスウールは木造住宅の外壁や屋根では多用されていますが、床ではあまり採用されていませんね。
雨田ー残念ながら、床断熱の分野では木造住宅(枠組・軸組)におけるグラスウールのシェアは10〜15%程度です。しかし、他の断熱材にはない高い透湿性を有します。万が一、床断熱表面に水分を含んだ場合も、床下側に水分を放湿してくれるため、構造躯体の耐久性向上・長寿命化に寄与します。
しかも、床断熱用グラスウールはボード状でありながら、適度な柔軟性を持ち、躯体に追従し、加工性も優れているので、隙間なく施工できます。以上のような理由で採用も増えています。加えて、当社、 製造工場での加工によるJIS規格品としての床用グラスウールプレカット製品の供給も開始。現場加工の省略が可能になっています。
当社の製品としては、表面に撥水効果をもたせた「露断プレミア」、受け金具が不要でタッカー留めを行う「露断ピンレス」がありますが、今春すべてをノンホルムアルデヒド化。屋根・天井・壁向けの「ハウスロンZERO」と併用すれば、断熱層をまるごとノンホルムアルデヒド化できます。
吸音と不燃という付加価値
グラスウールには吸音効果や不燃性も期待できます。非住宅分野でも重宝しそうですね。
雨田ー当社では住宅向けのみならず、一般建築向けの製品ラインアップも充実させています。断熱特性を生かした製品では二重折板屋根専用断熱材「ポリラップ」やポリエチレンフィルムでパックした「内装パラダイス」などがあり、吸音特性を生かした製品としては表面にガラスクロスを張り、仕上げ材として使える「GCボード」や密度と厚さの種類が豊富な「フェザーグラス」などがあります。
最近の動きとしては、「内装パラダイス」の全製品を高性能品化したほか、密度10[㎏/㎥]で不燃材料の国土交通大臣認定を取得。これにより、すべての一般建築向け製品は不燃材料の認定を取得することになりました。近年では、非住宅の木造化も進んでいますが、断熱性能に加えて、吸音性能や不燃性能を併せ持つのはグラスウールならではの魅力。木造の宿泊施設や賃貸住宅などで能力を発揮するでしょう。
最後に、働き方が大きく変わるなかでユーザーとのコミュニケーションも大きな変容が求められていますね。
雨田ー対面での営業機会が少なくなるなか、円滑なコミュニケーションは大きな課題です。対策の1つとして2020年にYouTube「PARAチャンネル」を立ち上げました。グラスウールの製品紹介のみならず、省エネ基準関連の政策に関する情報などを解説した動画をアップロードしています。コンテンツを充実させる必要はありますが、オンラインセミナーの定期的な開催も計画しており、営業活動をより充実させる考えです。
本インタビュー記事は「建築知識2022年4月号」に掲載されたものです。