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【PR】「働くと暮らすが重なるまち」働き方とまちづくり③

コロナ禍を経て、リモートワークなどの柔軟な働き方が一気に浸透しました。この連載では、多様化する働き方やそれらを受け止めるワークプレイス、またその周辺を取り巻くまちの活動について紹介します。連載3回目は、IT企業をはじめとしたサテライトオフィスの誘致や移住が進む、徳島県神山町です。

“働く”と“暮らす”が重なる
心地よいつながりのあるまち神山町

徳島県は、2002年から全国屈指の高速インターネット環境を整え、県をあげてサテライトオフィスの誘致を進めています。

その中でも面積173㎢、人口4,6472020年国勢調査)の神山町では、これまで「NPO法人グリーンバレー」による「創造的過疎」をコンセプトとした取り組みなどで、移住者が増加し、脈々と外部人材を受け入れる土壌も築かれてきました。現在では15社のサテライトオフィスが整備され、地方創生の成功事例として注目を集めています。

中央を鮎喰川が流れ、山々に囲まれた大自然の町

こうした「グリーンバレー」が進めるまちづくりや、地方創生戦略の担い手である「神山つなぐ公社」の取り組みにより、町は常に変化し、移住者は大自然の中で働く魅力に加え、まちの変化が生み出すさまざまな人との交流や、心地よくつながれる豊かなコミュニティが醸成されているといった良さを感じています。

サテライトオフィス「えんがわオフィス」での七夕まつりの様子

 

「神山つなぐ公社」の地方創生への取り組み

グリーンバレーが培った土壌を継承しつつ、行政と協働でまちづくりを行うのが「一般社団法人 神山つなぐ公社」。この組織は、2016年に神山町で始動した創生戦略「まちを将来世代につなぐプロジェクト」の中で、さまざまな構想をスピーディかつ柔軟に実現するため、行政から独立した組織として設立。代表理事は役場からの出向者(現在、馬場達郎氏)が務めています。

神山つなぐ公社 代表理事 馬場達郎氏(右)、神山つなぐ公社 業務執行理事 梅田學氏(左)

ここでの代表的なプロジェクトの1つが、子育て世代に快適な住まいを提供する「大埜地の集合住宅」プロジェクトです。「神山の資源を使い、まちの人が作る」をコンセプトとし、町産木材の認証制度を県内市町村で初創設、建設も地元の大工さんの手で行われました。また、外構の植栽を地域植生のものとし、採取・生育・築造・植え込みまでを地元の農業高校生の手で行っています。

大埜地の集合住宅

次の代表的プロジェクトとして「高校プロジェクト」も挙げられます。これは、町の人口減少によって町内唯一の高校が廃校となる危機が迫っていたことを受けて始めた取り組み。授業を見直し、高校がもつ専門性を生かしつつ、まち全体をフィールドに社会の現状や課題を学ぶカリキュラムを実施。学校の外に出て、地域の人との関わりの中でまちの困り事に触れ、その解決策を自分事として学ぶことで、自ら考える力も養われ、次世代の育成にもつながります。また、町内の中学校もこうした取り組みに感化され、これまで以上にまちで学ぶことに力を入れており、分野横断的な取り組みが行われています。

その結果、高校への進学希望者が増え、現状で廃校は免れています。このような地道な努力によって、徳島県内で過疎地域に指定される市町村の中で唯一、2019年、2020年と連続で人口が社会増となりました。

集合住宅の外構整備を行う高校生

神山町に移住された方に働き方と暮らしを聞く

神山町での働き方や暮らしについて生の声を聞くため、20179月に移住した西海千尋氏、20208月に移住した角南大雅氏、20213月に移住した中村明美氏に話を伺った(いずれも以下、敬称略)。

右から角南氏、西海氏、中村氏。町産木材で作られたコミュニティセンター「鮎喰川コモン」にお集まりいただいた

 

移住のきっかけと変化

角南 勤め先のIT企業が神山町にサテライトオフィスを開設したのがきっかけで東京から移住しました。幼少期に徳島の大自然の中で育ったのが記憶に残っていて、自分の子どもにもこういった環境に触れてほしい思いもありました。

西海 「神山塾(滞在型職業訓練プログラム)」の求人に惹かれて神戸から来ました。本当は半年間のプログラムが終わった後は、東京や大阪で働こうと思っていましたが、神山の居心地がよくて、気づいたら住み続けていました。今は、フリーランスとしてデザインや企画、ライティングなどの仕事を立ち上げながら、動画制作の組織でも働いています。

中村 徳島市から移住しました。コロナ禍の自粛期間中に、子どもを連れて山によく遊びに行っていたのと、市内の生活では気を遣う場面が多いことに疲れてしまって。それならいっそのこと、という気持ちで移住しました。今はフリーランスとして、ライター、コピーライティング、企業の広報のコンサルティングなどをしています。
 
ここに来てからは、五感がすごく喜ぶなと思います。山の緑の色合いの変化もよく分かるようになって目が喜んでいる感じがします。自然を感じにどこかに遊びに行かなくても、日常の中にあるので、気が楽です。わざわざリラックスする時間を設ける必要もないので、仕事を終わらせる時間も早くなった気がします。

西海 暮らしの中で自然に触れることで、クリエイティビティが解放される感覚があります。緑や自然の光を見ていると、自分が本当にしたいことに気づいたりします。あと、都市部で暮らしていた時は、ほしいものはお金で買って消費するのが当たり前でしたが、ここでは自分で何かしたり作ったりする人が多いので、お金の捉え方が変わりました。同時に、働くことの意味も変わったように感じます。

角南 振り返ると、東京にいた時は騒がしかった。たとえば、東京だと雪が降っても多少電車が止まるくらいですぐ会社に行けて、時間が止まらない感覚があったのですが、ここだと、雪が降ったら車が出せないし、自然や環境に合わせてその場にとどまるなど、生活と仕事が重なっています。

鮎喰川

神山での仕事・暮らし・人

西海 やったことのないことにチャンスをくれる町だと思います。私が神山に残ると決めた時も、先輩方にさまざまな仕事の機会をつなげてもらいました。地元の神戸では、職場の人、家族、昔からの友達など、それぞれ別個のコミュニティに属していましたが、神山町では、外から来る人との出会いもあり、いろいろな人との交流の機会があることで、違う視点を得られやすく、豊かな発想で自分の仕事に向き合えます。また、新しいお店や宿泊施設、オフィスや森にサウナまで自ら手がける人がいて、さらに神山まるごと高専の開校予定もあり、誰かがいつも何かやっていて、町全体としても常に変化があるのが面白いです。

中村 いろんなコミュニティの中にキーパーソンがいて、その人がいろいろな人をつなげる、そういうのを、誰もが自由にのびのびとやっています。外から来た人を上手に巻き込んでいく、しかも強引じゃなくてやんわりと、その人のよいところを生かしながら巻き込んでいく文化があります。なので、移住者が入って来やすい環境ではないでしょうか。あと特徴的なのは、田舎なのに適度な距離感があることですかね。移住して来た人に対して、出ていかないで、と引き留めるような雰囲気がなく、旅立っていく人も温かく送りだしている印象があります。それが心地良いと思います。

空き家活用宿「B&B オニヴァ」

自らも「まち」に参加する

中村 先日、自分のジャーナリストの経歴を生かして、中学校の子どもたちが将来の夢を言語化した作文を大人たちの前で発表する授業を担当しました。そういうところでも、子どもたちのためにできることをちょっとずつでも貢献していきたいと思っています。まちのみんなで子どもを育てられる環境なので、子育てしやすいと思います。

西海 子どものことは公共機関や教育機関がやる、と分断するのではなく、生活の延長線上で自然にやっている人が多いですよね。私自身も、来客時は、ちょっとでも町のことや面白い人を知って帰ってほしいから、できるだけ情報を伝えたり、紹介したりします。新しく来た誰かと、きっとこの人と会ったら面白いだろうなと思うと自然と体が動いてしまいます。

角南 現在、役場に週3で勤務しているのですが、自分の最終目標として、役場の人の時間をつくるための業務効率化をしたいです。具体的には職員1人あたり1日30分空けることを目標としていています。空いた時間で、住民のためのサービスを考える時間ができるんじゃないかなと思っています。

 

まちづくりの情報発信「CITY in CITY vol.33より抜粋)

テキスト:公益社団法人全国市街地再開発協会

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