断熱性能は省エネ基準の2倍
建築物省エネ法による省エネ基準への適合義務化が段階的に進められています。延べ面積が2千㎡以上の「道の駅ふたつい」はすでに適合義務化の対象となっており、一次エネルギー消費量を削減すべく、建物の断熱性能を高める必要がありました。
「道の駅ふたつい」の一次エネルギー消費量(BPIm)は0.91と、基準である1.0を下回っており、このうち一次エネルギー消費量が多くなりがちな空気調和設備(BEIm/AC)は0.71を達成しています。冬に暖房が停止したとしても、人体へのリスクが少ない室温12℃を確保できるほどの断熱性能となっています。
このような高い断熱性能を下支えするのは、木造住宅に広く用いられている部材・工法です。躯体(屋根・外壁)は高性能グラスウールでの充填断熱。アーチ屋根では、垂木間に150㎜厚の断熱層を形成しています。
断熱
アーチ屋根のディテール。現しとしたアーチ梁の上弦材は、母屋・垂木越しに野地板(水平構面)とつながります。垂木間には高性能グラスウール16K 150㎜厚(太陽SUN/パラマウント硝子工業)を充填し、断熱性能を確保(上)。屋根仕上げはガルバリウム鋼板。谷折り部は漏水のリスクを考慮して、曲げ板金を熱圧着で増し張りしています(下)
窓については、熱の流出入が懸念される大きなカーテンウォールの設計がポイントになりますが、ここでも木造住宅用のアルミ樹脂複合サッシが主力となっています。ガラスは冬の熱損失防止と日射取得率確保の観点から、遮熱Low-E複層ガラス(Uw2 ・33 以下)を採用しました。
「住宅で使用される高さ約2m以下のサッシを組み合わせて、カーテンウォールを構成しています。その大部分はFIX窓ですが、必要な箇所は排煙上有効な開口部(突出し窓)としています[※]」(西方氏)。
※ 延べ面積が500㎡を超える特殊建築物では排煙設備を設置する必要がある[令126条の3]。この場合は、床面積500㎡以内ごとに防煙壁(間仕切壁もしくは垂壁)で区画し、区画部分には排煙口(排煙上有効な開口部)を設置する必要がある
「道の駅ふたつい」は木造住宅の最先端技術を駆使した、エコで快適な大規模木造建築。普及拡大が期待される地域密着型の木造建築について、“道しるべ”と形容できる存在感を示しています。
西方里見[にしかた・さとみ]
山田憲明[やまだ・のりあき]
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おわり
講演動画(山田憲明)—【建築知識】大径のJAS製材でつくる木造建築ー