木質空間の美しさを決める接合部の納まり
「meet tree NAKATSUGAWA」のインテリアは、現しになったCLTと軸組が軸になっています。その美しさを左右するのは接合部の納まり。接合金物が目立たないように、金物工法や製作金物を利用しています。

エントランス部分の軸組。ドア(右側)の高さを考慮しつつ、筋かいを組み、全面開口を実現している。小屋梁と柱、筋かいの取合い部分には、構造材の断面欠損が少なく、現しにしても接合部が美しく見える「テックワン」(タツミ)を採用している
CLTの屋根と軒先の納まり
CLTを水平構面とする2つの屋根が交差する「meet tree NAKATSUGAWA」。短手方向に3枚のCLTを並べて1つの大きな面を構成しています。ファサード側は、柱の外側に壁を立てて、既製品アルミサッシによるカーテンウォールを形成。視線に入りやすい1階の軒樋は隠し樋としています。

屋根の仕上げはガルバリウム鋼板立はぜ葺き。CLTの上に垂木を設けて、断熱層(60㎜厚)と通気層(30㎜厚)を確保している。通気層の上に野地板を張り、防水層を形成したほか、柱の外側に壁とサッシを納めてい る。一般的な在来軸組構法では、 柱にサッシ枠を取り付ける半外付け納まりとしているが、柱とサッシを離すことで外壁の厚みを抑えることができた。柱と外壁(サッシ)の奥行き分だけ、基礎立上りの奥行きを広げている。基礎は改修を考慮して布基礎。土間コンクリートの上に防塵塗装を施した

軒天井を見上げると唐草の内部に小口が現しになったCLTが確認できる

CLTを下地とする隠し樋の納まり。CLTと垂木などを覆うように屋根同材のガルバリウム鋼板を張り込み、シート防水でカバーしている。鼻隠しの納まりも工夫。CLT特有の小口を強調するため、小口面を露出する選択肢もあるが、雨仕舞いを考慮して、CLTの小口が完全に隠れてしまわないように(見上げた時にCLTの小口が見えるように)、通気層を設け、断面をガルバリウム鋼板でカバーしている

バタフライ屋根と片流れ屋根の取合い。CLTの高い剛性を生かして、バラフライ屋根側は長手方向に1,100㎜、短手方向に900㎜、片流れ屋根側は長手方向に650㎜跳ね出しており、軒天井を見上げると、現しになった木曽ひのきが確認できる。軒先とけらばは、雨仕舞いを考慮して一定のクリアランスを設け、ガルバリウム鋼板で包みこんでいる。バタフライ屋根の接合部はCLTどうしを突き付けた後に、それによって生まれる段差をなくすため、現場で削って形状を整えている
中津川の魅力を発信する「meet tree NAKATSUGAWA 」
「meet tree NAKATSUGAWA」では、木曽ひのきの葉から抽出された精油を成分とするボディケア商品を販売しています。一般的に、ヒノキの葉は伐採時に廃棄されるものの、「meet tree」は葉に含まれる、①リラクゼーション効果のある物質(モノテルペン・Dリモネン・γ−テルピネン)、②睡眠促進効果のある物質(酢酸ボルニル)、③殺菌効果のある物質(α−カジノール)に注目。シャンプーやハンドクリームなどの開発に成功しました。市場に多く流通する石油由来のボディケア商品よりも、人体に優しいのが特徴です。カフェでは、地元で採れた食材を利用したスイーツが味わえます。
A ヒノキの精油から生まれたコスメブランド「meet tree 」

シャンプーやコンディショナー、ボディーソープなどをはじめ、商品のラインナップを順次拡充している。グレーの塗り壁は「ジョリパット アンティークストーン/H19- 65B」(アイカ工業)。塗り厚を5㎜として天然石のような雰囲気を表現。扉の小口面にも塗り込み、その質感を高めている
B 季節ごとに味わえる中津川産のスイーツ

日本有数の名産地である中津川産の栗を使用したオリジナルのモンブラン。ザクザク&サクサクした食感のパイとタルト、自家製のカスタード、純正生クリームの上に、搾りたての和栗ペーストをたっぷりとかける。9月~12月にかけて提供
おわり
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林業家・丸山大知氏と建築家・成瀬友梨氏+猪熊純氏の対談は
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意匠設計:成瀬・猪熊建築設計事務所/構造設計:木講堂/施工:丸山木材工業