神長ファミリーのプロフィール
父:神長宏明(39歳)栃木県でラファエル設計を主宰する一級建築士。2児の父。趣味は、仮面ライダーのTVを鑑賞。一番面白かったライダーは「龍騎」。ヴィジュアル系の音楽が好きで、よく聞くのは「Raphael」。ラファエル設計のネーミングの由来になった。週末は、双子の子どもたちと公園や牧場で遊ぶ。
母(43歳):趣味はクラシックバレエ鑑賞。教室にも通っている。
双子(6歳):フラフープやダンスが最近のブーム。父の影響か、仮面ライダーのカードゲーム集めも好き。
なぜ、低気密低断熱住宅に住んでるの?
■すべては愛する双子のため!
編集部:神長さんは、高気密高断熱住宅をつくるためのシミュレーションや計算を、かなりマニアックかつ緻密にされてますよね。そんな“高気密高断熱マニア”な方が、なぜ真逆の住宅に住み始めたのでしょうか?
神長(敬称略):すべては、可愛い6歳のエンジェル(双子)のためです。家の性能よりも、まずは戸建て住宅に住まわせてあげたいという思いがありました。
きっかけとなったのは、新型コロナウイルス感染症です。私は結婚してから14年間で3回ほど引っ越しましたが、ずっと賃貸マンション暮らしでした。そんななか、新型ウィルス感染症があり、幼稚園も自粛の状況で、家族4人が過ごす場所としてマンションは手狭に感じたのです。家に長い時間居ると隣家への騒音が気になり、子どもたちがのびのびと過ごしにくい環境でした。以前に子どもの泣き声で苦情がきたこともあったので。
また、温熱環境の観点で見ると、鉄筋コンクリートのマンションは高気密(窓まわり以外)ですが、冬はエアコン暖房の影響で空気が乾燥して喉がやられ、子どもたちは月1回は風邪をひいてしまうような生活でした。
そこで、普段自分が設計していている高気密高断熱の家を、愛する家族のために新築しようと思い立ったのです! 来年(2021年4月)で双子たちが小学生になるので、家を建てるタイミングとしてはベストだと思いましたが…。
編集部:…しかし住んだのは“低気密低断熱住宅”! 一体なにがあったのでしょうか?
神長:私は長男なので、もともと実家(鹿沼市)へ戻り、二世帯住宅を建てる予定でした。
しかし、祖母(93歳)が、亡き祖父が建てた築45年の無断熱かつ新耐震基準前の家を取り壊すことに大反対したため、実家に戻って新築という機会を失ったのです。もちろん、断熱リフォームの考えもあったのですが、耐震性にも問題があり、費用的な面で断念しました。祖父が建てた家で過ごせることは感謝していますが、冬のお風呂の寒さは修行か!、と感じるものです(苦笑)。
■よい学区で子どもを育てたい!
編集部:実家の建て替え計画を断念し、新築戸建てを建てるための土地探しを始めたのですね。土地探しには何を重視しましたか?
神長:まずは、子どもたちに通ってもらいたい小中学校の学区で探しました。銀行の支店長さんや、学習塾を運営している方に聞いて、おすすめの学校(学力、治安も含め)を教えてもらいました。その中から、妻の出身校がある学区が周辺環境にもなじみがあったので、その辺りで土地を探すことにしました。小学校が近いというのも考慮しました。
■2度被害にあい、災害は日常的に起こることを確信
編集部:そのほか優先されたことはありますか?
神長:災害の影響を受けにくいことも考えました。実は、2019年10月の台風の影響で近くの大きな川が氾濫して、小学校の体育館に避難して一夜を過ごすという経験をしました。また、2011年の東日本大震災時は、部屋の散乱と計画停電を経験したこともあって、「災害時にも安心であること」は重要視しました。
神長:住まい周辺の治安も大切ですね。安い賃貸マンションに住んでいたときは、ゴミ捨て場が荒れていたり、パトカーを時々見かけたりしてちょっと不安だったので、安いアパートが近くにある立地は避けました。あと、大通りから離れていること。夜、とても静かです。
次に、駐車場の確保ですね。私は車での移動が多いので、高速道路の出入り口に近いことも考慮しました。最後に、実家まで車で30分程度の時間で帰れることも考えました。
■土地が見つからない! そして、選んだのは…
編集部:まとめると①学区、②災害リスクの有無、③治安、④交通量、⑤駐車場の確保、⑥インターチェンジ、⑦実家までの距離 という項目を重視しながら探されたんですね。
神長:いろいろ土地の条件を挙げましたが、最終的に条件に見合う土地が見つかりませんでした。小学校に入った後の転校は避けたかったので、今年着工の新築は諦めて賃貸物件をその学区内で探すことにしたのです。そして、見つけたのが4LDKの庭付きの賃貸一戸建てです。この家に暮らすのは2年間と期限を設けて、その間に新築を立てるための土地を探そうと計画を変えました。
編集部:マンションに住みながら土地を探すのではなく、双子たちの成長と、家族の安らぎを考えて選んだ場所で暮らすことを優先させたのですね。そして、その賃貸物件が“低気密低断熱住宅”なのですね。
神長:そうなんです。築29年の低気密低断熱の家です。いつもは高気密高断熱の設計ばかりしているのですが、せっかく住むので低気密低断熱の実感をデータに基づいてまとめることにしました。まずはわが家の概要です。
■家賃:約9万円/月(3250万円のローンを組んだときと月の返済額は大体同じ)
■立地:栃木県宇都宮市 最寄り駅から車で15分
■築年数:築29年(1991年8月竣工)
■延べ床面積:125.44㎡(37.94坪)
土地と間取りだけを見れば、条件にピッタリな家だと思います。断熱性能は、築年数と天井断熱材の状況から昭和55年基準と推定しました(昭和55年区域区分Ⅲ・栃木県・Q値4.7)。無断熱ではなく、断熱材は気持ち程度入っている状態です。
次回は、この家の真夏の住み心地についてお話します!
連載(2)はコチラ
テキスト:神長宏明(ラファエル設計)