水処理を”設備”として提供する
水―それは21世紀を生きる人類にとって非常に大きな課題です。水資源が豊かな日本も無関係ではありません。確かに、現状では生活用水に困っている地域は多くはありません。しかし、上下水道を支えるインフラの老朽化問題や、人口が減少するなかでインフラの維持管理・更新のための財源と人材をどう確保していくかという課題が年々顕在化しています。
現実として、2018年の水道法改正によって、外国資本を含む民間企業が水道事業に参入可能になっており、実際に海外企業との連携をスタートさせた自治体もあります。生活用水をどのように確保するのか、身近な問題として改めて考える必要があるでしょう。
こうした社会問題の解決が期待されるプラットフォームを紹介しましょう。2014年に誕生したベンチャー企業WOTAによるAIを活用した水処理自律制御技術です。
水の問題を解決するWOTAの技術
WOTAの代表を務める前田瑶介氏は、その背景を次のように振り返ります。
「大学(東京大学工学部)では、建築の水廻りに関心を抱いて勉学に励んでいました。なぜなら水廻りが建築設計の自由度を大きく左右しているからです。東日本大震災の体験に加え、水の問題への興味が深まった面もありました。現在、上下水道の維持管理には巨大な〝施設〞が必要で、維持管理を行う人材にも経験に基づく高度なスキルが求められます。施設ごとにレシピは異なります。それは職人技の世界。人口減少に伴う将来的な財政課題も予想されています」。
「一方、AIを活用すれば、巨大な〝施設〞だけでなく、小型で移動可能な水処理技術を小さな〝設備〞として提供することができます。水の再生利用が容易になれば、災害対策はもちろん、水のインフラが整備されていない地域での建築や、水廻り設計の簡素化による建築設計の自由度向上にもつながるなど、さまざまな利点を見出せす」。