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「人と水の制約をなくす」―超小型水再生処理設備②―

水は私たちの生活に欠かせない資源。しかし、その資源を社会に広く供給するには、莫大なコストがかかります。しかも、排水の使いまわしが難しいのも水ならではの問題。今回は、水の再生技術を"設備”として展開するWOTAの技術・製品を紹介します。排水の再生率は何と98%以上にも達します。

用途と業務の拡大が進行中

 それでは、WOTAが取り組む水処理自律制御技術の中身を見てみましょう。①:水処理の状況をリアルタイムに検知するセンサー技術(IoT)、②:①のデータをもとに水処理の最適解を判断する水処
理の自律制御アルゴリズム(AI)、③:蓄積された過去データを生かしたアルゴリズムの改善(BIG DATA)、という3つの技術の緊密な連携によって成立しており、大幅な小型化とコストダウン(従来の水処理施設に比べて約10万分の1以下)、安定的な品質管理&向上を実現しています。

 

AIを活用した水再生技術の概念

WOTAが開発した水再生技術は、各工程が水質センサーとAIによってリアルタイムで制御されている。使用した水の98%以上を再生できるため、100ℓの水があれば、100人の人がシャワーを浴びることが可能。通常は1人当たり40~50ℓ使用するので、水の利用効率は約50倍に高められる

 

 実際に処理される水は雑排水(通称:Gray water)。設備内に装備された、膜濾過・塩素添加・深紫外線照射で浄化されます。水再生率は98%以上。使用した水のほとんどが再利用可能です。水質もWHO(世界保健機関)の飲料水水質ガイドラインに準拠するなど、高い安全性を確保しています。

 WOTAでは2つの製品をリリースしています。まずは2020年グッドデザイン大賞を受賞した自律分散型水循環システム「WOTA BOX」。雑排水をキャスター付きのボックス内で再生処理する製品で、移動しながら、屋外シャワーキットや貯水タンクとともに使用することが可能です。2018年7月の西日本豪雨の際に岡山県倉敷市真備町で使用されるなど、多数の災害現場で活躍しています。加えて、屋外スポーツなどのイベントやキャンプ場などのレジャー施設などでも採用実績を伸ばしています。

 

災害対策に最適な「WOTA BOX」

 

「WOTA BOX」の内部。砂やほこり・色・臭い・イオン・細菌を除去するフィルターや、塩素添加、深紫外線照射といった水処理の機能が内蔵されており、水の状態によってそれぞれの機能が臨機応変に作動する

本体の外形寸法はW820×D455×H933㎜で、重量は82kg。キャスター付きなので移動・運搬も容易。水タンクやシャワーテント、脱衣テントなどの屋外シャワーキットも展開しており、シャワーテントは約15分で設営可能

 

 続いては2020年にリリースされた水循環型手洗い機「WOSH」。ドラム缶と木目調のカウンターがスタイリッシュな印象を与え、商業施設などにも導入が進んでいます。スマートフォンの深紫外線照射機能付きで、手を洗っている間(約20秒)に、表面についた細菌やウイルスを99.9%以上除去できる、という特徴も備えています。

 

街並みに潤いをもたらす「WOSH」

 

本体の外形寸法はW707×D596×H1,063㎜で、重量は80kg(乾燥状態にて)。キャスター付きなので楽に移動・運搬できる。ドラム缶の白い筐体とシンプルなロゴ、木目調のカウンター、スタイリッシュな水栓金物で構成されており、お洒落な商業空間にマッチするデザインとなっている

「WOSH」の内部構造。活性炭(2本)とRO膜のフィルター(1本)が計3本が内蔵されているほか、塩素添加や深紫外線照射も用いて水をきれいに再生する。約20ℓの水を500回以上(500~1,000回)使用することが可能。フィルター交換の目安は1,000~2,000回がめど

 

 「将来的にはさらなる利用拡大を見込んでいます。技術的には雑排水(Graywater)だけではなく、下水(Blackwater)の水処理技術も実用化したいと考えています。AIで制御する水処理の工程に微生物の状態管理が含まれてくるため、雑排水よりはハードルが高いものの、これがクリアできれば、限られた水資源をより有効に活用できるようになります。他方、水を利用する家電への組み込みなど、さまざまな用途を想定して、日々活動を行っています」(前田氏)

 建築の世界を超えて無限の可能性が広がるWOTA。2021年5月にはソフトバンクと資本・業務提携を結ぶなど、その歩みを着実に進めています。これからの活動にも注目しましょう。

 

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