「国産の製材を使う」在来軸組でつくる木の保育所①

国産材(JAS製材)を用いた非住宅の木造建築は注目すべきトレンドの1つ。ここでは、 古川泰司氏(アトリエフルカワ一級建築士事務所)が設計を手がけた「わらしべの里共同保育所」を紹介します。主として埼玉県産材を用いた準耐火建築物で、燃えしろ設計を活用した木のインテリアが特徴的です。

子どもの開放的な木の家

 在来軸組構法による木造の保育所「わらしべの里共同保育所」。この建物は、社会福祉法人わらしベ会理事長 長谷川佳代子氏の「子どもたちのための木の家がほしい」という切実な願いで建てられたものです。設計にあたったのは、木造住宅を数多く手がけてきた古川泰司氏(アトリエフルカワ一級建築士事務所)です。

 長谷川氏は「新しい園舎は、木のなかで子どもが生き生きと過ごす素朴な空間であってほしいと思っていました。古川さんの著書『木の家に住みたくなったら』(エクスナレッジ)を書店で目にし、相談しました」と語ります。

 

3・4・5歳児室の内観。約7.2×14.5mの一室空間は、越屋根となっており、天窓と高窓で光と風を得る。越屋根を支える小屋組は、棟木・小屋束・小屋梁・垂木・くも筋かいで支えられる和小屋。棟木が負担する鉛直荷重を支えるため、中央部分に2本の通し柱(棟柱)を設けた。スパンは梁間方向・桁行方向ともに最大6m未満となっている。構造材として使用している埼玉県産(秩父)のスギは節ありの1等材[※1]

 

 その想いを受けた古川氏は「一人ひとりの子どもたちの個性を大切にする姿勢に、1本ごとに個性のある木を生かす木の家のつくり方が重なりました。その結果、均質に加工された大断面集成材ではなく、無垢材を用いて建物を設計することにしたのです」と振り返ります。

南側に道路があることを考慮して、敷地の北側に向けてエントランス・エントランスデッ キ、3・4・5歳児室を配置しているのが大きな特徴。木製引込み戸を開放すれば、北側に 広がる園庭と一体となる。中庭からの採光・通風と併せて、北側と棟部の開閉式天窓、高窓からも十分な光と風を得られる。建物は中庭を中心とした回廊型の間取りとなっている。建築基準法上の制約としては防火・避難がある。防火では、防火上主要な間仕切壁[令114条][※2]、避難では防煙区画[令126条の3][※3]を必要な箇所に配置

 

 特に、広さ約7.2m×14・5m、天井高約7mとする3・4・5歳児室は、露しとした柱や梁、垂木といった架構とあいまって、おおらかでリズミカルな印象を生み出しており、北側に広がる園庭と畑に面した3・4・5歳児室のガラス引戸を全開すると、室内と外部が一体の空間となり、子どもたちは室内外の境目なく自由に走り回れます。

 古川氏は「子どもは遊びの達人です。冬でも外で泥だらけになり、次の瞬間にはシャワーを浴びて部屋で絵本を読んでいる。達人の遊びを邪魔しないような空間を心がけました」と語ります。

 

Information

 「わらしべの里共同保育所」が生まれたきっかけにもなった『木の家に住みたくなったら』(2011年)は2021年6月、『木の家に住もう。』として大幅に改定されて出版されています。

 

 

「本の内容の見直しに当たっては、“木を切る”こと、すなわち“木を使う”ことの大切さを強調しました。それは次世代の森を育てるということ。その想いを表現すべく、木を育てる男の絵を付け加えています」(古川氏)

 

取材・文=加藤純・建築知識 建物写真=傍島利浩 書籍写真=平林克己

 

※1 大小の節がたくさんあり、若干の死に節や虫食いなどがある。ただし、実態としては、一等材のなかにも節なしのものが混ざっていたり、より見た目のよくないものが混ざっていたりする。ここでは、一等材のなかでも見た目の悪いものについては、壁のなかに隠すように選別した
※2 保育所(児童福祉施設)では居室とそのほかの共用部分[令114条2項]、建築面積が300㎡を超える建築物(この建物の建築面積は723.34㎡)で、小屋組が木造である場合は、桁行間隔12m以内ごと[令114条3項]に、小屋裏まで達する準耐火構造の間仕切壁(防火上主要な間仕切壁)で区画する必要がある
※3 延べ面積が500㎡を超える特殊建築物では排煙設備を設置する必要がある(この建物の延べ面積は789.17㎡)。この場合は、床面積500㎡以内ごとに防煙壁(間仕切壁もしくは垂壁)で区画し、区画部分には排煙口を設置する必要がある(1階の床面積は686.70㎡)

 

②につづく

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