「建築知識」で木造を学ぶ
「建築知識」は、執筆に協力する前からよく読んでいました。大学卒業後は、大高正人氏の事務所に入って大型の公共建築設計やランドスケープデザイン仕事をしており、木造の実務経験がまったくなかったので、木造建築は「建築知識」で学んだといっても過言ではありません。
今から10数年前くらいは、木造建築(在来軸組構法)に関する教科書的なものは「建築知識」くらいしかありませんでしたから。
特に、〝1間間グリッド構法〞の提唱者である吉田桂二さんが監修された「1995年5月号―[木造住宅]架構×デザイン読本」の「架構グリッドプランニング手法の基本編」などは、穴があくほど読みました。現在、〝カタチが決まるまで間取りを描くな〞を提言している私の礎にもなっている特集号ですね。
加えて当時は、木造住宅の設計経験が浅かったこともあり、「建築知識」と工務店から木造建築の技術を学んでいましたね。なかでも、木構造の特集は大変役に立ちました。2000年代中盤の頃は、〝4号特例廃止〞(結局廃止になりませんでしたが)という動きもあり、「建築知識」では「2009年2月号」から「2009年4月号」にかけて、3号連続で木構造の特集が組まれていました。
なかでも、「2009年3月号―[木造]構造計算イラストガイド」では、梁の断面を意匠設計者自らが、許容応力度計算を用いて算定にするに当たり、その数式の解説が穴埋め問題のように編集されていたので、とても重宝しましたね。
「建築知識」の特集全80頁を監修
私が初めて「建築知識」で執筆したのは、その当時数年に1回くらい特集が組まれていた営業特集「2009年10月号―設計事務所・工務店の[集客力]を高める方法」です。〝ブログを毎日更新すると仕事が獲れるか?〞というテーマで書きました。
SEO対策として、ホームページよりもブログに力を入れること、作品紹介にとどまらず、設計のノウハウを惜しげなく公開すること、の重要性について説いています。
ほかにも木造の架構、特に屋根・小屋組のみに特化した「2015年11月号―誰も教えてくれない 屋根と小屋組のセオリー+DVDビデオ」や「2017年11月号―飯塚豊から見た最高の住宅工事」などで協力しています。
後者は現場監理の仕事の流れから、実際の現場で確認すべきチェックポイント、トラブルの回避方法に加え、設計監理者が工事中にやるべき事務所仕事を「事務所work 」としてまとめました。特集を丸ごと監修したので特集の80頁を繰り返しチェックしなければならず、とても大変だった思い出がありますね。
ほかの号の特集では、下屋や階段の納まりなども書きました。ウソは書けないと思い、どの特集でも一生懸命書いた覚えがあります。元は読者だったのがいつのまにか著者側になって不思議な感じです。
最近の「建築知識」は、イラストを多用した紹介方法に変わってきていますよね。私たち設計者にとっては少々分かりにくい部分もありますが(笑)、新しい表現にチャレンジすることは、裾野を広げるためにも必要なことだと思います。ただ、初心者向けの内容が少なくなく、プロからするともう少し突っ込んだ内容が欲しいこともあるので、編集者の更なるスキルアップにも期待したいです。
最近ではSNSなどで、さまざまな情報を分かりやすく発信するインフルエンサーも増えているので、60年の歴史のある「建築知識」という紙媒体としては、確かな情報を分かりやすく丁寧に伝えることが求められているのだと思います。
※ 本インタビュー記事は「建築知識2021年7月号 ありがとう! 800号記念特集 最高に楽しい間取り」に掲載したものです。
②につづく
「建築知識」通巻800号記念特別インタビュー:“住まい”の設計は無目的を旨とすべし。―増田奏―はこちらから。
「建築知識」通巻800号記念特別インタビュー:片づけ〞の善し悪しは空間の強度で決まる。ー鈴木信弘ーはこちらから。
飯塚 豊[いいづか・ゆたか]
1966年東京都生まれ。一級建築士。法政大学デザイン工学部兼任講師。’90年早稲田大学理工学部建築学科卒業。’90〜2003年大高建築設計事務所に在籍、大高正人氏に師事する。’04年 i+ i 設計事務所を設立。’11年より法政大学デザイン工学部兼任講師に就任。主な著書に『間取りの方程式』「建築知識2017年11月号―飯塚豊から見た最高の住宅工事』(エクスナレッジ)など
Infomation―Vol.1 見るだけで設計が上手くなる!?飯塚豊の設計5つの手順
飯塚豊さんによる設計セミナー 「飯塚豊のカタチが決まるまで間取りを描くな 基本編」(2020年8月5日開催)のアーカイブ動画です。 再生回数約27,000回の人気動画。美しい佇まいの家をつくりたい方は必聴です!