「構造から美しい空間を考える」お洒落で落ち着くカフェ空間のつくりかた③

慌ただしい日常を離れて、ゆったりと時間を過ごせるカフェ。「カフェのような家に住んでみたい」という需要も高まっています。ここでは、カフェ界を牽引する「スターバックスコーヒージャパン」に究極のカフェ空間のつくりかたを徹底取材。そのポイントをまとめました。

はじめに

1971年に米国シアトルで開業した、世界規模で展開するコーヒーチェーン店のStarbucks。1996年8月、銀座に日本1号店をオープン。その後、全国で店舗数を増やし、2019年12月末時点の店舗数は1530店。ペーパーカップやタンブラーを手に街を歩くスタイルや、家でも職場でもない「サードプレイス」の提案など、そのときどき空気を感じ取り、新たな価値を生み出してきました。その付加価値は、他のコーヒーチェーン店とは一線を画す、建築&インテリアへのこだわりからも感じられる違いありません。ここでは、そのエッセンスを3回に分けて紹介します。

 

 

5 スタバが考える カフェの構造

地方に多い一軒家型の店舗は、周囲の環境に合わせたデザインを心がけ、その地域になじむようにする工夫が必要です。特に古い街並みが残る地域では、周りの環境に違和感なく溶けこむようなデザインを目指しましょう。なお、木造と鉄骨造では空間のつくりがまったく異なるため、理想のカフェ空間に合わせて構造を検討する必要があります。鉄骨造は柱のない大空間を実現できるものの、そのぶん空間を隔てるものがなく、空間にメリハリをつけることは難しいものです。他方、木造には柱が必要ですが、設計の工夫次第で柱をうまく使えば、空間をさりげなく区切ることができます。

 

【木造の場合】

登り梁と柱による、シンプルな片流れの軸組フレームを3.6 mピッチで配置し、空間のアクセントにも使用した「スターバックスコーヒ一敷島公園店」[※]。2020年3月にオープン。軒裏に跳ね出す登り梁に、建築のダイナミズムを感じる

 

 

木造は、空間に柱が出てきてしまうが、上手く使えば空間をさりげなく区切ることも できる。柱の廻りに回遊動線が生まれる

垂木を露しにしたスターバックスコーヒー一宮富士店」[※]。正面の壁とカウンターの腰壁を縦羽目板張りとして、前者はスポットライトで、後者は間接照明でライトアップしている

 

※ 構造材にはそれぞれ下記を採用している。
〈スターバックスコーヒー敷島公園店〉柱:ベイマツ集成材、柱(外部):ベイマツ無垢材、梁(化粧):ベイマツ集成材
〈スターバックス一宮富士店〉柱:スプルース・ロッジポールパイン集成材、梁:オウシュウアカマツ集成材、母屋(化粧):ベイマツ集成材、母屋:オウシュウアカマツ集成材、垂木(化粧):SPF

 

【鉄骨造の場合】

「スターバックスコーヒー川越鐘つき通り店」は無柱空間を実現。ダイナミックな和のデザインとした。建物の奥に裏庭が設けられており、壁面いっぱいをスチールによるカーテンウォールとして、植栽に視線を導いている。内壁の仕上げ材には「SOLIDO type F coffee」(ケイミュー)を使用。スターバックスで使用したコーヒーの豆かすを適度に主原料であるセメントに混ぜ、茶色みがかった絶妙なグレー色となっている。床はメンテナンス性 を考慮して、コンクリート(30㎜厚)のうえに、防塵塗装とすることが多い。適度なヒビ割れは“味”と捉えている

ファサードは、古い面影を残す街並みに合わせて木造風に。屋根には重量のある瓦を採用、外壁と格子は西川材(埼玉県産のスギ材)を下見板張りとし、オーセンティックな和のデザインに仕上げている

鉄骨造の場合、スパンを飛ばすことができるため、柱のない大空間をつくることができる

庭は店の奥だけではなく、店の中央部にも設けられており、屋内でも外の開放的な雰囲気を十分に楽しむことができる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり

 

 

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