前回は、地域性と周辺環境の読み取り方について当校が生徒に伝えていることを解説しました。(前回はこちら)
今回は、その考え方を取り入れて実際に建築した住まい「利根川沿いの家」を紹介します。
自然とつながる
中2階ウッドデッキの家
「利根川沿いの家」は、大人2 人暮らしの生活を楽しむ家として設計。広い玄関土間や各部の連続性など、SOHO で仕事をする人や多趣味でアクティブな人もフレキシブルに使える工夫を凝らしました。
また、終の棲家かあるいは二拠点生活の別荘としても使えます。自然と向き合う静かな暮らしや、誰かを招くようなにぎやかな生活など、さまざまな楽しみ方を想定しています。
建設地は群馬県の利根川沿いにあり、市街から少し外れの自然を身近に感じられるロケーションです。
変形敷地に合わせてDK 部分を川の方角に約57 度振り、北東方向に開放。三角形のデッキを突き出し、自然を積極的に感じる形状となっています。
すぐ脇を通るサイクリングロードからシャープな印象の家の全景が見渡せます。
住まいの最も大きな特徴は、スクエア型のアイランドキッチンを中心に置いた中2階部分です。このダイニングキッチンは三角形の広いウッドデッキへとつなげることで、音、光、風の自然を感じる開放的な空間となりました。2階リビングスペースはスケルトン階段とスチール格子で空間を連続させています。ソファに座りアイレベルの変化を楽しみながら、テクスチャのある壁に囲まれたくつろげる場所が用意にしました。
住宅に画一的な正解はない
間取りの点からみれば、スキップフロアである「利根川沿いの家」は、決して高効率な間取りではありません。それよりも優先したのは絶好のロケーションを生かした生活の豊かさ。比較的温暖な土地であったため、自然の恵み(日射し、風、雨など)を目や耳や肌で感じられることをよしとする考えもアリと答えを出しました。
当校が考え、生徒に伝える「住宅」は「製品」ではありません。違いとして現れるのは、空間の独自性、空気感。材料やディテールの味わいや手仕事のよさ。規格住宅にハマらない家族像やライフスタイルに応える住宅をつくることです。
そもそも住宅は、個(住人と代弁者である設計者)の考えを汲んだもっとわがままなものであって良い筈ではないでしょうか。
連載②「地域性を読み取る」はこちら
取材先「学校法人フェリカ学園 フェリカ家づくり専門学校(※)」
建築・インテリアのプロフェッショナルを育成するための学校。学校側が土地を購入し、設計・施工までを行う超実践な家づくりの教育で注目を集めています。
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※フェリカ建築&デザイン専門学校は2022 年4 月より名称を上記に変更する
[公式サイト]https://felica.ac.jp
[所在地]群馬県前橋市南町2-38-2
[TEL]0120-343-750