神長家の概要
■家賃:約9万円/月(3,250万円のローンを組んだときと月の返済額は大体同じ)
■立地:宇都宮駅から車で15分
■築年数:築30年(1991年8月竣工)
■延べ床面積:125.44㎡(37.94坪)
■断熱性能:築年数と天井断熱材の状況から昭和55年基準と推定(昭和55年区域区分Ⅲ・栃木県・Q値4.7)。無断熱ではなく、断熱材は気持ち程度入っている状態
子どもの温熱環境と大人の温熱環境は違う!
今回は、サーモ画像を使って子どもが感じている寒さを可視化してみました。
この記事を読んで、子ども目線でも温熱環境を考えてみてください。
子どもが風邪を引きやすい理由
下記は無断熱の実家(栃木県鹿沼市)の廊下の赤外線写真で、1歳のときの息子が写っています。写真は5月下旬のものですが、温度ムラがはっきり現れています。
ドアの高さは1.8mなのですが、息子の身長は80cmくらいです。
見て分かるように、大人の顔の温熱領域は黄色帯ですが、子どもは背が低いほど真っ青帯の領域にいます。
冬も当然同じ温熱領域になるので、子どもがいつも鼻水を垂らしているのは、大人よりも寒い温熱領域で生きているからです。
また、床が冷たければ大人はモコモコスリッパをはけますが、子供は保育園などでも「裸足」が多いのではないでしょうか。
娘が1歳の時、保育園の廊下に出るときに「抱っこ抱っこ」と必死に懇願してきました。いつもは歩いているので理由を聞くと、「あんよ冷たい」という発言をしたので驚きました。
「こんな冷たい床なんて、歩けるわけがない」と、1歳児が感じるわけですね。寒い時期に抱っこと懇願するお子さんは、もしかしたら床が冷たくて不快感を、強烈に感じているのかもしれません。
低気密低断熱のわが家でも実測!
2022年1月11日16時40分頃のわが家のリビング(暖房設定温度22℃)です。
大人の身長である170㎝(SP10~13)あたりで20℃くらいです。一方、サーモ画像のなかにいる7歳の息子の身長は約118㎝で、顔付近の100㎝(SP6~7)あたりは18℃台。大人がいる環境より1~2℃低いですね。
ちなみに、身長60㎝くらいの幼児で検討すると、16.5~17.4℃(SP2~3)の領域にいます。大人と比べると4℃も違う部分があるのです。
叱られる子どもと叱る親
子どものころ、冷蔵庫のドアを開けっぱなしにして母親に怒られた経験はありませんか?
それと同じで、冷暖房しているリビングなどの開け放たれたドアを見て、「ドアを開けっぱなしにしないで!寒いでしょ!(暑くなるでしょ!)」って子どもを叱っていませんか?
この家に引っ越してきて毎冬、口を開けば「寒い寒い」が口癖になってしまった妻。引っ越して初めての秋、妻が双子たちにこんな言葉を発していました。「これから寒くなるから、ドアを開けたら閉める習慣をつけてちょうだい」と。
高気密高断熱住宅では、部屋のドアを開けっぱなしにして、寒さや暑さの問題から叱られることはまずありません。むしろ、開けっ放しはグッジョブなのです。
2019年12月22日暖房20℃設定で床や壁・天井の表面温度は22℃~24℃以上の高性能住宅の様子です。ドアを開けっぱなしの奥の部屋は手前の部屋とほぼ同じ温度なので、ドアを閉めなくても怒られることはありません。
■コラム■夫婦の夜のスキンシップ(高性能住宅に住むと子どもが増える!?)
猫や魚、昆虫などの生き物たちと同じで、適切な温熱環境下で生活できない限り、さまざまな行動が停滞すると思っています。
たとえば、生殖活動である夜のスキンシップ。暑くてベタベタ、寒くて服を脱ぎたくないという温熱環境下で、夫婦のスキンシップは円滑になるのでしょうか? 日本における少子化問題は、「服を脱ぐには寒すぎる」という家の環境にも原因があると個人的には思っています。特に女性は、男性より寒さを感じやすい生き物です。
嬉しいことに私が設計した高気密高断熱住宅に引っ越した後に、家族が増えた方もいらっしゃいます。
私たちが快適だと感じる環境は、風邪をひかない、ドアを開けっぱなしにして叱られない以外にもたくさんの恩恵と笑顔を人に与えているのではないでしょうか。
次回は、「低気密低断熱住宅の洗濯物事情」についてお話します。
テキスト:神長宏明(ラファエル設計)
前回の記事:「過酷な冬の住環境」低気密低断熱住宅ルポ⑮