LIXILメンバーズコンテストとは、全国14,000社以上の工務店・住宅会社が加盟するLIXIL「Good Living友の会」の会員が競い合う業界最大級の住宅施工例コンテスト。
今年で30回目の開催となりました。
審査では、建て主にとっての「いい住まい、いい暮らし」をいかに実現しているかが評価されました。書類審査で、新築・リフォーム部門それぞれ優秀な事例が3点選出され、2022年2月3日の公開審査で大賞作品が決定しました。
【新築部門】敷地条件を読み解き、周辺環境を生かした住宅が大賞に
新築部門で大賞に輝いたのは、暮らしの工房の「風景と暮らす池畔の家」(新潟県妙高市)。
窓の向こうに四季折々の美しい池の風景が広がる住まい。プランニングにあたって、この恵まれた風景を暮らしの中にどのように取り込むかということが大きなポイントになりました。
池の向こうまで見渡せるリビングのソファからの目線、そして池全体を見渡す2階の窓からの目線と2つの軸線を設定し、それに合わせて建物に角度を付けて、不整形な敷地に馴染ませるように建物を配置しています。そこにできた隙間に、アプローチをつくったり、植栽をすることで、より身近に自然を感じられるように工夫しました。
家族構成:夫婦+子ども2人
所在地:新潟県上越市
床面積 :1F 48.78㎡ 2F 74.45㎡ 合計:123.23㎡
構造・規模:木造2階建て
断熱性能:UA値 0.36、C値 0.2
「周辺の環境がよかったので、いかに景色に溶け込むかを考えて外観をつくりました。また、恵まれた景色を家のなかに存分に取り込めるよう、プランを工夫しました」(暮らしの工房・岡沢公成さん)
審査員からのコメント
伊礼智氏(建築家)
「ここ近年、工務店の設計力アップは目覚ましいものがあります。暮らしの工房さんも、その中の一人です。総合力があって、どこから見てもいい佇まいだと感じられる住宅です。」
前真之氏(東京大学 大学院准教授)
「最新の高断熱窓『エルスターX』を使ってしっかり断熱しているのが分かります。薪ストーブでの暖房計画は、平面計画と併せて3次元的に考えられるとより良いと思いました。」
古橋 宜昌氏(エクスプランニング 代表取締役)
「庭のある暮らしの豊かさ、素晴らしさを感じ取れる作品でした。それと、北庭の提案も素晴らしいと思います。植物は太陽の方向に向かう性質があるので、北庭に植えた植物は部屋側に向いてくれるので、植物の姿がきれいに見えるんです。涼しいので夏も楽しめるので、ぜひ今後も北側の提案をしていってもらいたいと思います。」
【リフォーム部門】古民家のつくりと暮らしを受け継いだ住宅が大賞に
リフォーム部門は、ネヌケンの「日野町の古民家」(滋賀県蒲郡)が大賞に選ばれました。
リフォーム前は天井裏にアライグマが住み着くほど老朽化が進んでいた江戸期の茅葺きの古民家。一度は建て替えを検討したものの解体はせず、リフォームを決意したそう。構造を補強して耐震性能を確保、外壁や屋根、床下に断熱材を入れて住み心地を向上させました。
昔ながらの「田の字」の間取りはあえて残して、個室をつくらないプランとしたことが特徴。家族がそれぞれの個室に籠ることなく、囲炉裏のあるリビングやダイニングに自然と集まるようにしています。
襖で簡単に仕切れるので、将来的にもフレキシブルな使い方ができます。
家族構成:夫婦+子ども3人
所在地:滋賀県蒲郡
床面積 1F:150㎡
合計:150㎡
構造・規模:木造1階建て
「田の字型プランをあえて残し、暗くなりがちな奥の部屋への光の入り方などを特に工夫しました。」(ネヌケン・根縫徹也さん)
審査員からの講評
古橋 宜昌氏(エクスプランニング 代表取締役)
「スクラップ&ビルドが繰り返されているなかで、この事例のように古民家を再生して残していこうという取り組みをされているのは素晴らしいことです。
残念ながら、今、古い家をリフォームする際に、庭をコンクリートなどで埋めて“庭じまい”する例も増えてきています。そうすると、次の世代に庭のある生活を継承できなくなってしまいます。
古い家を改修すると同時に、庭にも手を入れられると、より一層よい家づくりが提供できるのではないかと思います。」
木藤 阿由子氏(建築知識ビルダーズ 編集長)
「古民家改修の評価や審査で特に大事にしていることがあります。“せっかく受け継いだのだから、さらに次の世代へ引き継がれていく可能性が感じられるどうか”です。
この事例は、多くの古民家改修では排除されてしまう田の字型プランをあえて残し、一方で思春期の子どもが過ごせる小さな部屋もちゃんと用意されていて、この家で育った3人の息子さんたちのうち、必ず誰かは受け継いでいくだろうと想像できたことが、大きな評価ポイントです」
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