間取りから始める人は要注意!美しい住宅の設計法とは

設計が上手い人のつくった家は、一目見ただけで素敵だなと思う何かがあります。一方、設計があまり上手くない人がつくった家は、どこかその場に馴染んでいない感じがするものです。その違いは何か。もしあなたが「間取り最優先」で設計しているなら、要注意。3人の建築家の手法を紹介しましょう。

かたちから考える  飯塚豊

 「間取りを優先すると住宅は美しくならない」そう言い切るのは、ベストセラー『間取りの方程式』(エクスナレッジ)や『新米建築士の教科書』(秀和システム)の著者の飯塚豊さんです。間取りを優先にすると立面や断面が後回しになり、美しさだけでなく構造や住みやすさにも支障が出てくるからです。飯塚さんは周辺環境や気候風土、敷地条件にあった「かたち」を考えることから始めるといいます。もし、あなたが間取りから考えていたら、まずは設計の手順を見直してみるとよいでしょう。

下記は、飯塚さんが考える「美しく設計するための正しい手順」です。全部で10項目ありますが、最初の5つは準備段階。残りの5つは、準備段階で整理した情報を具体的なかたちに落とし込む、いわば解法(設計)。

飯塚さんが考える美しく設計するための正しい手順

  1. 構法を決める
  2. 素材を選ぶ
  3. 事例を調査する
  4. テーマを設定する
  5. 条件を整理する 
  6. 屋根からかたちを考える
  7. 中間領域のかたちから考える
  8. 窓の配置を検討する
  9. 架構を想定する
  10. 間取りを描く

こうして導き出されたかたちによって、間取りも魅力的になっていくのです。

伊礼智の住宅デザイン学校

『伊礼智の住宅デザイン学校 10人の建築家が教える設計の上達法』p14

 

余白から考える  丸山弾

東京都中野区で生まれ、現在も中野に事務所をかまえる丸山弾さんは、子どものころから住宅密集地や細い路地を歩くのが好きだったといいます。どんなに建物に囲われていても、ふと視線が抜ける場所はあるもので、その変化を楽しむ感覚が都会暮らしの中で育まれていきました。そんな丸山さんが設計で大切にしているは「余白」。敷地を見て、余白を探しながらプランニングするそうです。視線の抜けも余白が生み出すものの1つ。どんなに住宅密集地でも余白をあきらめない丸山さんの設計は、のびやかで落ち着きのある空間をつくりだします。

伊礼智の住宅デザイン学校

石神井の家(2016年)


伊礼智の住宅デザイン学校

『伊礼智の住宅デザイン学校 10人の建築家が教える設計の上達法』p36


身体スケールから考える  八島正年

大きな空間=気持ちのよい空間とは限りません。それぞれの床面積にあった天井高さがあるし、使う人にとって居心地のよい大きさがあります。八島正年さんは、小さな保育施設の仕事をきっかけに「身体スケール」を大切にするようになったといいます。それは、大きな木の下に四畳半ほどの園舎で、子どもたちの「身体寸法」と「動作寸法」の2つのスケールからデザインを解いていったそうです。園舎は、大人にとっては狭く、使いづらいサイズでしたが、子どもなら10人入っても遊べる空間です。「身体スケールをきちんと考えられれば、空間の大小に関わらず心地よい空間ができることを学んだ」と八島さん。無理のない、端正な佇まいは、このような視点から生み出されるのでしょう。

伊礼智の住宅デザイン学校

『伊礼智の住宅デザイン学校 10人の建築家が教える設計の上達法』p130

 

アプローチの仕方は、建築家によってさまざまですが、間取りから考えないことで周辺環境や住まい手の個性に合った住宅が生み出されているようです。本記事は、書籍『伊礼智の住宅デザイン学校 10人の建築家が教える設計の上達法』(エクスナレッジ)の一部を再編集してまとめたものです。もっと詳しく知りたい!と思った人は、ぜひ読んでみてください。

詳細はこちら

こちらの記事もおすすめ

安っぽさを払拭!ワンランク上のシェアハウスがおしゃれすぎる!

住宅2021/01/29

最近、人気テレビ番組の影響もあって増えてきたシェアハウス需要。もはや「安い」というメリットだけでは魅力が不十分になりつつあり、居住者を増やすにはひと工夫が必要です。今回の記事ではとことん快適性・心地よさにこだわったシェアハウスの事例をご紹介します。

「蒸し暑さの犯人は湿度」低気密低断熱住宅ルポ⑱

連載2022/10/25

こんにちは。一級建築士の神長宏明です。私は、エアコンを24時間つけっぱなしでも月々の光熱費が1万円以下で済む高気密高断熱住宅を設計していますが、住んでいるのは【低気密低断熱住宅】です。この連載では、低気密低断熱住宅の住み心地を数回に分けてレポートしていきます。18・19回は、夏の湿度と快適さの関係を解説します。

【PR】屋根断熱が生み出す 美しい断熱住宅の秘密ー施工編ー

2023/05/29

「越屋根の家」(設計:リオタデザイン)は、その名が示すように“屋根”の美しさが際立つ木造住宅。しかし、その美しさを実現するには、断熱・遮熱対策が欠かせません。ここではポリイソシアヌレートフォーム断熱材「サーマックスRW」による断熱・遮熱とデザインの可能性について解説します。

「それぞれの居場所をつくる」お洒落で落ち着くカフェ空間のつくりかた④

2020/06/30

慌ただしい日常を離れて、ゆったりと時間を過ごせるカフェ。「カフェのような家に住んでみたい」という需要も高まっています。ここでは、うちカフェの第一人者「cafenoma」に究極のカフェ空間のつくりかたを徹底取材。そのポイントをまとめました。

「手に触れる部分の寸法と素材の選定」お洒落で落ち着くカフェ空間のつくりかた①

2020/07/07

慌ただしい日常を離れて、ゆったりと時間を過ごせるカフェ。「カフェのような家に住んでみたい」という需要も高まっています。ここでは、カフェ界を牽引する「スターバックスコーヒージャパン」に究極のカフェ空間のつくりかたを徹底取材。そのポイントをまとめました。

Pick up注目の記事

Top