ホテルのリノベーションを数多く手がける佐竹永太郎氏(STAR)。その事例を紐解いてみると、用途・デザインの多様性に気がつきます。「当社のミッションは、〝クライアントの課題を美しさで解決する〟ということ。言い方は少し乱暴かもしれませんが、建築家にありがちな作品性を押し付けるということではなく、クライアントの問題意識に寄り添った最適なデザインを提供するように、常日ごろから心がけています」(佐竹氏)。
したがって、STARには標準化された設計手法というものが存在しません。言わば、佐竹氏の仕事は、単なる建築の設計ではなく、建築をコアとする、クライアントのリブランディング(ブランドの再構築)ということになるでしょう。その作業を建築という視点から、法則として落とし込むと、以下のように説明できます。
3 客室の内装と広さを最適化
客室も共用部分と同様に、具体的な客層を意識した内装・設備の設計を行いましょう。このとき、客単価の大幅アップを望むのであれば、間仕切り壁を解体して2つの客室を1つの客室にする、という方法も考えられます。
4 外とつながる浴室を設ける
レジャーを主目的とするホテルであれば、浴室や露天風呂は集客を大きく左右する重要な要素。フォトジェニックな露天風呂や外部とつながる浴室は、SNSで拡散されやすく、ホテルの認知度を確実に高めてくれるに違いありません。オーシャンビューであれば、浴室や露天風呂が海へと続くような印象になるよう、お湯を外へかけ流すなど、ゲストを幻想的な世界へといざないましょう。
5 細部までブランディング
冒頭でも説明したように、建築のデザインだけでは、クライアントのリブランディングとはなりえません。建築以外にもデザイン可能な要素は多岐にわたります。調度品の調達、ロゴやサインボードのデザインなど、ホテルの付加価値を高められる要素すべてに目を向けるのが、STARのスタイル。「私たちではすべてのデザインをワンストップで行います。それを実現するために、スペシャリストが集うteamSTARという設計スタイルを開発しました」(佐竹氏)。
Afterwords ブランディングは自社の事務所から
STARは2005年10月設立。「INFINITO HOTEL&SPA南紀白浜」に代表される有名リゾートホテルをはじめ、ISETAN から納骨堂まで幅広い分野の建築デザインを行うデザインチーム。CEO の佐竹永太郎氏は東北大学を卒業後、北川原温建築都市研究所にてアートを切り口とした建築デザインに従事。現在は課題を共有し解決に導く建築家&クリエイティブディレクターとして企業トップから高く評価されています。
「STARLOUNGE」と呼ばれる自社オフィスは、むき出しとなったRCと無骨な大谷石、色鮮やかな木製建具が目を引きます。骨董・アートが美しくディスプレイされ、香りまでもがデザインされており、“ブランディング”という、客層や目的に合わせてトータルにデザインを提案するSTARの哲学が、その設えに見て取れるでしょう。
おわり