断熱改修は吹付け硬質ウレタンフォームが合理的
一般的に、2 0年以上前に建てられたマンションの断熱性能はかなり低いので、スケルトン・リノベーションを行う場合は、断熱改修を行うようにしています。使用する断熱材は、ボード系断熱材もしくは吹付け硬質ウレタンフォームのいずれか。気密性の確保や施工スピードを考えると、吹付け硬質ウレタンフォームがお薦めです。「代々木上原I邸」では、熱伝導率0.026W/m・K の「アキレスエアロンF R – F O」(アキレス)を使用して断熱を行いました。
窓の断熱改修はインナーサッシが基本
マンションの窓は共用部分に該当するので、原則的には交換できません。断熱性能を高めるには、既製品のインナーサッシ(ペアガラス)を取り付けるのが最も合理的です。既存のシングルガラスを含めて、ガラスが3層になるので、断熱性能を効果的に高められます。ポイントはサッシの色。室内の雰囲気を考慮しながら、色を選択しましょう。窓のある壁面全体に造作のフレームを廻して、インナーサッシの存在感を小さくするのも常套手段の1つです。
サッシを残してガラスのみを交換する方法もある
管理組合の承認が得られた場合に限りますが、サッシを残してシングルガラスを真空ガラスに交換する方法もあります。ただし、ガラスの単価が高いほか、サッシ部分の断熱性能は変わらないので、費用対効果はそれほど高いとはいえません。手間はかかるものの、サッシ部分については、断熱塗料を張って対処する方法もあります。
各務謙司さん[カガミ建築計画/カガミ・デザインリフォーム]は、1級建築士およびマンションリフォームマネージャー。都心を中心とした高級マンション・リノベーションの設計提案を得意としています。工事費が1,000万円を超える高額リノベーションの実績は100件を超える。主著に『世界にひとつだけのプレミアム・リノベーション』『最新版 驚異のリフォーム・リノベーション術』(いずれもエクスナレッジ)。自身のブログ「建築家が考えるプレミアムリフォーム・リノベーション」を通じて精力的に発信しています。
※ 吹付け硬質ウレタンフォームとは、ポリイソシアネートとポリオール、触媒、発泡剤などを混合したウレタン原液を発泡して成形した断熱材。いくつかの種類があり、建築用としては主に「JIS A9526 A種1H」と「JIS A9526 A種3」の2種類がある。前者は30倍発泡、後者は100倍発泡の断熱材。30倍発泡は、断熱性能(熱伝導率)および施工性において、100倍発泡よりも優れている