建築 連載

「建築のなかに緑を!」緑が豊かにする家と街並み①

植栽やランドスケープなどの〝緑〞を軸に据えた建築デザインを得意とする古谷デザイン建築設計事務所。建物内部を含めて、〝緑〞の要素が生かされています。今回は、代表作の1つでもある木造3階建て戸建住宅「インターバルハウス」を紹介します。

 「インターバルハウス」(古谷俊一/古谷デザイン建築設計事務所)は、東京の大森町(大田区)に建つ木造3階建て戸建住宅。木造賃貸住宅リノベーションの象徴的な存在「大森ロッヂ」(ブルースタジオ)、東京建築賞 優秀賞を受賞した「運ぶ家」(古谷俊一/古谷デザイン建築設計事務所)と路地を跨いで向かい合う敷地にあります。建物のコンセプトは「運ぶ家」と同じく、2階の外周に大きな半屋外空間を設けつつ、150㎜角の柱を現しとしています。そのデザインからは〝都市木造〞の可能性を感じるでしょう。

 建物の魅力を高めつつ、街並みにも豊かさをもたらすのが緑。地面だけでなく、テラスや室内にまで、常緑樹や落葉樹、果樹など、多種多様な緑が建築と絡み合っています。これは、緑を軸とする建築やランドスケープをライフワークとする古谷氏の真骨頂です。

建物全体が個性豊かな緑で包み込まれている「インターバルハウス」の外観。2 階・ 3階の外壁を45°振ることで、建物の4隅に半屋外空間を創出。同時に街並みへの視線の抜けも確保している。外壁は1 階がモルタル仕上げ。2階が「エクセレージ・親水14木目調」(ケイミュー)仕上げ。淡いグレーと緑・外部柱とのコントラストは実に鮮やか

「インターバルハウス」は、「ケイミュー施工事例コンテスト」(現「KMEW DESIGN AWARD」)で最優秀賞(竹原賞)を受賞。街並みへの配慮と植栽の豊かさ、それを引き立てる木目調の窯業系サイディングの使い方が高く評価された。画像は、審査委員長である建築家 竹原義二氏とケイミュー ケイミュー代表取締役 社長 木村均氏との対談『日本の屋根 ─ “カラーベスト”60年の歩み、これからの夢。』(建築知識2021年3月号掲載)から。詳しい内容はこちらからも。

「『インターバルハウス』という名前から想像できるように、この建物は街並みに開かれた存在と考えています。実際に、建物の前を通り過ぎる多くの人が、日々表情を変える緑に目を止めてくれます」。

準防火地域に建つ木造3階建て戸建て住宅(在来軸組構法)。建物は45分準耐火建築物(イ準耐)として設計されている。準耐火建築物において、柱・梁などの軸組を現しにするには、構造材の外部に燃え代を確保する必要がある。ここでは、柱(JAS集成材)の断面を150㎜角とし、外周部に35㎜の燃え代を確保した。柱は150㎜角。過酷な外部環境に耐えられるよう、柱には適切な防腐処理を施している

 緑によってつながる建築と街並み。このとき、建築は緑を描くキャンバスに。外壁の基調色が淡いグレーとされているのは、そのためです。

古谷俊一氏(建築家、造園家)は1974年東京都生まれ。’97年明治大学理工学部建築学科卒業。 2000年早稲田大学大学院石山修武研究室修了、 同年IDÉE、’06年UDSを経て、 ’09年古谷デザイン建築設計事務所設立。 ’20年京都芸術大学客員教授。代表作に「深大寺ガーデン」「東京クラシック 森のクラブハウス 馬主クラブ棟」「渋谷MODI」「大森ロッヂ 運ぶ家・インターバルハウス」 。日本空間デザイン賞大賞、環境・設備デザイン賞 最優秀賞、日本建築設計学会賞など受賞歴多数。著書に『みどりの建築術』(枻出版社)

写真=水谷綾子

②につづく

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