木々に覆われた小さなコンクリート住宅
住宅街を歩いていくと、一画だけ青々と木々が茂っている家が見えてきます。角に植えられた大きなケヤキの木陰に車が停められ、近づくと緑の中から小さなコンクリート住宅が顔をのぞかせます。
建築家・阿部勤さんの自邸「中心のある家」は、1974年竣工。延床30坪のコンクリート住宅は、堅牢でありながら開放的につくられ、年月をかけて木々と一体になった佇まいは、どこか異国情緒が漂います。
この中で営まれてきた積年の暮らしがこの家の体温となって、建築に命を与え続けてきました。そのため、築46年経った今が最も美しいのではないかと思うほど、家の中のどこを撮っても艶やかな空気が流れています。
2017年に公開された映画『蝶の眠り』(チョン・ジェウン監督)では、中山美穂さん演じる小説家の家のロケ地にもなりました。阿部さんは撮影の間の数カ月、友達の家を転々としていたそうですよ、笑。
大小2つの正方形がつくる固定概念にとらわれない生活空間
この家は、大小2つの正方形を重ねで描かれたプランが特徴。四隅に生み出された小さな空間は、壁に守られながらも、外とのつながりを感じられる、なんとも心地よい場所になっています。
年月に証明された建築だけが放つ色気と貫禄、そしてどんな来訪者も受け入れる包容力を持ち合わせた、まさに名作住宅。そんな「中心のある家」の内部空間を、動画で体験いただけます。編集部がスマホで撮影したものですが、誌面では伝え切れなかった阿部さんの暮らしぶりが垣間見られる内容となっています。
ぜひ、『建築知識ビルダーズ41号』(手描きプラン掲載)と『建築知識ビルダーズ42号』(小川重雄撮り下ろし写真掲載)と合わせてご覧ください。