「インターバルハウス」(古谷俊一/古谷デザイン建築設計事務所)は、東京の大森町(大田区)に建つ木造3階建て戸建住宅。木造賃貸住宅リノベーションの象徴的な存在「大森ロッヂ」(ブルースタジオ)、東京建築賞 優秀賞を受賞した「運ぶ家」(古谷俊一/古谷デザイン建築設計事務所)と路地を跨いで向かい合う敷地にあります。建物のコンセプトは「運ぶ家」と同じく、2階の外周に大きな半屋外空間を設けつつ、150㎜角の柱を現しとしています。そのデザインからは〝都市木造〞の可能性を感じるでしょう。
建物の魅力を高めつつ、街並みにも豊かさをもたらすのが緑。地面だけでなく、テラスや室内にまで、常緑樹や落葉樹、果樹など、多種多様な緑が建築と絡み合っています。これは、緑を軸とする建築やランドスケープをライフワークとする古谷氏の真骨頂です。
建物全体が個性豊かな緑で包み込まれている「インターバルハウス」の外観。2 階・ 3階の外壁を45°振ることで、建物の4隅に半屋外空間を創出。同時に街並みへの視線の抜けも確保している。外壁は1 階がモルタル仕上げ。2階が「エクセレージ・親水14木目調」(ケイミュー)仕上げ。淡いグレーと緑・外部柱とのコントラストは実に鮮やか
「『インターバルハウス』という名前から想像できるように、この建物は街並みに開かれた存在と考えています。実際に、建物の前を通り過ぎる多くの人が、日々表情を変える緑に目を止めてくれます」。
準防火地域に建つ木造3階建て戸建て住宅(在来軸組構法)。建物は45分準耐火建築物(イ準耐)として設計されている。準耐火建築物において、柱・梁などの軸組を現しにするには、構造材の外部に燃え代を確保する必要がある。ここでは、柱(JAS集成材)の断面を150㎜角とし、外周部に35㎜の燃え代を確保した。柱は150㎜角。過酷な外部環境に耐えられるよう、柱には適切な防腐処理を施している
緑によってつながる建築と街並み。このとき、建築は緑を描くキャンバスに。外壁の基調色が淡いグレーとされているのは、そのためです。
古谷俊一氏(建築家、造園家)は1974年東京都生まれ。’97年明治大学理工学部建築学科卒業。 2000年早稲田大学大学院石山修武研究室修了、 同年IDÉE、’06年UDSを経て、 ’09年古谷デザイン建築設計事務所設立。 ’20年京都芸術大学客員教授。代表作に「深大寺ガーデン」「東京クラシック 森のクラブハウス 馬主クラブ棟」「渋谷MODI」「大森ロッヂ 運ぶ家・インターバルハウス」 。日本空間デザイン賞大賞、環境・設備デザイン賞 最優秀賞、日本建築設計学会賞など受賞歴多数。著書に『みどりの建築術』(枻出版社)
写真=水谷綾子