4. 屋根の勾配・葺き方
3寸以上の勾配が確保できるのであれば、基本的に横葺きとすることがほとんどです。縦葺き(立はぜ葺き)に比べて、軒先の水平ラインをキレイに見せられるからです。棟部の納まりも立はぜがない分、棟換気の形状が複雑にならず、背丈の低いノイズレスな設えとなります。
さらに、板金職人の技量によっては、究極の美しさが得られます。特殊施工に長けた熟練の板金職人に施工をお願いできる場合は、現場に加工機を持ち込んで、継目のないシームレスな横葺き屋根にすることも[A]。
立はぜ葺きでも、軒先部分に生じるはぜの凹凸が目立たない特殊なはぜ“しののめはぜ”という葺き方で納められます[B]。横葺き屋根と同等のノイズレスな軒先となります。
A 横葺きの場合
B 縦葺き(立はぜ葺き)の場合
5. 既製品の雨樋を利用した内樋
軒樋の意匠性は非常に難しい問題です。屋根と同素材の既製品を使用すれば軒樋の存在感はあまり気にならないのですが、さらに存在感を抑えたい場合は、内樋を検討することもあります。
ただし、造作による内樋は防水層の形成や屋根板金の折り返しなどを入念に検討する必要があるなど、防水性について少なからず懸念が残ります。そこで有効なのが軒先部分にスリットを設け、既製品の軒樋を差し込むという方法です。躯体と一体になった内樋よりも安全で、しかも外からは軒樋が見えないので、軒先をシャープに見せられます。
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