性能派と意匠派がぶつかり合っていた2015年
日本エコハウス大賞は、2015年に「2020年の省エネ基準義務化に向けて、性能と意匠を両立した美しい日本のエコハウスを提唱する」ことを目的に創設しました。
ことの発端は2014年、閣議決定された「エネルギー基本計画」の中で「2020年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準への適合を義務化する」という方針が掲げられたことでした。それまでも省エネルギー基準は存在しましたが、あくまで指標だったため、義務化することに反発する声は相当ありました。
すでに長期優良住宅制度などによって省エネルギー基準は周知されていましたし、技術的には決してハードルが高いものではなかったと思います。しかし、コストアップへの抵抗と強制される(制約を受ける)ことへの反発が強かったのでしょう。
次第に住宅業界では「デザインを追求した家は寒くて暑い」という性能派と、「性能を追求した家は野暮ったい」という意匠派の主張が真っ向から対立し、互いに相手を「本質ではない狭義なことにこだわっている」として相容れない状態になっていきました。しかし、冷静に考えれば「性能と意匠のどっちが大事か」という議論はナンセンスもいいところ。「プロならどっちもしっかりやって!」と思わずにはいられませんでした。
性能派も意匠派もアプローチの仕方が違うだけで、住み心地のよい家をつくるという目的は同じ。両者の知見を合わせれば、高性能で美しい家が実現できるはず。業界内で罵り合っても何も生まれません。切磋琢磨して、よい家を追求していこうよ――そんな想いとともに日本エコハウス大賞はスタートしたのです。
住宅の断熱性能がぐっと上がった5年間
2015年から2019年まで日本エコハウス大賞は全5回開催しました。このころ住宅業界では、断熱性能の向上に関するセミナーや勉強会が全国各地で開催されるようになり、実務者の意識も高まっていきました。
日本エコハウス大賞でも、2015年の初回こそ省エネルギー基準(断熱等級4)の家が応募作品の過半数を占めていたものの、2017年には上位基準であるHEAT20・G1を達成した住宅が過半数を占めるようになりました。2018年、2019年にはG2レベルも珍しくなくなり、意匠のレベルも高い「真の良質な住宅」といえるものが多数応募されました。まさに住宅業界にとって「断熱成長期」だったといえる5年間でした。
第1回(2015年)~第5回(2019年)の受賞作品はこちら
ちなみに性能と意匠の両立だけでなく、施工や経営、地域貢献など総合的に優れたスーパー工務店が全国に登場したのもこのころです。彼らが地域の家づくりを牽引して、各地の住宅の質の向上を図ったと言っても過言ではないでしょう。
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なぜ、第5回目で終わりにしたのか
回を重ねるごとに応募作品のレベルがあがっていったことは、主催者として涙が出るほどうれしいものでした。2019年にはもう「高性能な家はダサい」とか「意匠派の家は寒くて暑い」というレッテルを貼る人もいなくなり、私たちが目指した「2020年の省エネルギー基準義務化に向けて、性能と意匠を両立した美しい日本のエコハウスを提唱する」という目的を達成したという実感もありました。
同時に、これ以上、性能と意匠の両立を追求しても、重箱の隅をつっつくだけの審査になりかねない…という懸念が出てきました。継続するには、私たちが「目指すもの」を見直す必要がありました。そう判断し、いったん幕を下ろすことを決めたのです。
そして2020年1月にシンポジウムで休止宣言した直後、新型コロナ感染拡大によって私たちをとりまく状況が大きく変化していきます。今思えば、あのとき幕を下ろしたのは必然だったのかもしれません。
「日本エコハウス大賞」を復活した理由(近日公開予定)に続く
第6回日本エコハウス大賞の公式サイトでエントリー受付中
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https://builders-ecohouse.jp/