空調のバランスを考える
店内の温度管理は、快適な店づくりの重要なポイント。空調の効きが悪かったり逆に効きすぎたりすると、せっかくの美味しい料理も台無しになってしまいます。
新型コロナウイルス感染症の流行によって、飲食店では換気の重要性が再認識されていますが、換気量が増えると必然的に空調設備の能力も増やさなければならなりません。空調に影響を及ぼさない熱交換式の第1種換気システムを導入したいところですが、導入コストの負担が大きいのが悩ましいところです。
飲食店で空調設備を選ぶ際には、冷暖房の熱負荷をベースに考えることが必須。飲食店はガスコンロやグリル、大型冷蔵庫など熱の発生源が多いからです。「エアコンが足りるか、心配で…」と過
剰に設置するのではなく、計画的に設置して快適で安全な空間を実現しましょう。
熱負荷に含まれるものをきちんと把握する
エアコンを選ぶ際には、熱負荷(その部屋で発生する熱の量)の計算が不可欠。熱負荷には右図のものが含まれます。飲食店は熱が発生する機器が多いのでこれらも考慮しましょう。
空調設備計画はクレームに直結しがち
一般的に、工期や費用が優先される飲食店の空調設備工事については、設備工事会社の判断によって空調設備(主に天井埋込エアコン)の仕様が決定されます。ところがその仕様は、飲食店のキャパシティー(床面積)に対して、ともすると過剰になりがち。その結果、①風量の増大に伴う来店客からのクレーム、②天井や窓・出入口での温度差による結露、③イニシャル・ランニングコストの増大、④インテリアデザインの陳腐化、といった問題を招いてしまいます。
その要因は、店全体の外気導入方法と熱負荷のバランスを考慮して設備設計を行っていないから。客からのクレームはリピート率の低下にもつながりかねません。上記の問題をクリアするためには、設備設計者の力を借りるのが望ましいでしょう。
山田浩幸氏(yamada machinery office[ymo])がコンサルティングに関わった大手飲食店チェーンの事例では、キャパシティー(厨房の温熱環境を含む)に見合った換気量・換気手法の検証や、
天井埋込みエアコンの仕様見直しおよび送風の詳細なシミュレーションを実施。上記に挙げたすべての問題を首尾よく解決しています。
改修前
改修後
解説=山田浩幸氏(yamada machinery office[ymo])