住宅 建築

【PR】「個性が現れる!内装材の選び方」建築教育のリアル④

この連載では、「実施設計を行い、実際に家を建てる」というユニークな授業を行うフェリカ家づくり専門学校(以下、同校)の教育現場を取材。連載4回目は、画一的にならないマテリアルのアイディアやカラーの選び方を紹介します。

同じ空間でも内装材で変わる

家づくりを学ぶ過程で、実物を体感する機会はとても重要。つくる工程を見ることは当然ながら、出来上がったものに対してどう感じるかも重要視したい。たとえば、3,640 ㎜ ×3,640 ㎜の空間を平面図上のただの四角と捉えてはいませんか? 同じ面積でも、天井の高さや視線の抜け、壁の仕上げ、色によって空間の印象は変わります。

コンセプトから実施設計、施工監理まで学生と一級建築士の教員が一丸となってプロダクトを進行する

学生が実際に家を建てる「家創りプロジェクト」の指導で最も厄介なのは内装材の選定です。数式のように1つの答えを出すのは困難であるため、予め決めたイメージに沿って内装材を選び、選定基準を明確にしていきます。

手順としては、①床・壁・天井の仕上材に求められる機能を学習します。②どのような製品があるのか調べ、比較検討を行います。③壁仕上げの大半はコスト重視でビニルクロスを選ぶことが多いですが、家全体を見渡して2〜3箇所はアクセントとなる壁を設けます。また、色やテクスチャで変化をつけることもあります。

描いた図面と実物を現場で答え合わせ

内装工事の現場で選定するときは、壁紙サンプルを並べて石膏ボードに当てます。そして、光の当たり方や、広面積に張られた状態を想像しながら硬派なイメージになるものを選びます。

「家創りプロジェクト」で実際に建てた「利根川沿いの家」は、スキップフロアで中2階のDKと2階リビングが連続しています。この家では、DKとリビングのオープンな空間の中心にあるL字の壁をアクセントとしました。開放的である一方、落ち着かない空間になってしまう可能性もあったため、L字の壁を重量感のあるマッスな壁面に見立て引き締める効果を狙いました。

候補に単色のグレーや黒色マット塗装も挙げられたが、手仕事の風合いを再現した(経年や色の深みがある)織物調クロスに決定した

マネしたい!内装アイディア11

ここでは、「利根川沿いの家」で実際に採用したさまざまな内装の組み合わせを紹介します。内装材の組み合わせを変えることで、個性豊かな空間が生まれました。

玄関土間から続くホールの床仕上げは、グレーの大判タイル。あえて、斜めに張ることで空間に変化をつけた

寝室にはオーク材のラスティックテイストを選びナチュラル感を出す。天井まで連続させることで、落ち着きのあるこもり感を演出した。床材はメンテナンスを考慮したウレタンマット仕上げ

ボーダータイルの目地幅を広く取り、ランダムに張ることでクラフト感を際立たせた。色温度の低い間接照明を当てることで、温かみのあるテクスチャを浮かび上がらせたRA

ビニルクロスだが、布や革のエイジング加工のように見える壁仕上げ。手すりから連続したフラットバーがまわり、硬派でワイルドな雰囲気となった

洗面カウンターを造作。置型ボウル、ミラーキャビネットは既製品を使用。エッジの効いたベベルタイルを引き立たせるために、目地をダークグレー色にした

階段下を利用した和の籠り空間。セルロース繊維でふわふわとした質感の壁材「シルクプラスター」を施工。小空間のためカラーも鮮やかなものを選択

和と洋が連続するフリースペース。シナ合板の目透かし張りに和紙畳、奥壁はデニム風の織物調クロスだが藍鼠色が和に馴染む。透け感のあるプリーツスクリーンで異素材をあいまいに仕切る

北向きのリビングには筒状トップライトを設置。筒の部分には太陽の陽射しをイメージしたビビッドな黄色のクロスを張り、室内に明るい印象を与える

工業系の硬派なイメージを出すため、階段手すりには建築資材の異形鉄筋を使用。握りやすく機能面も◎

玄関土間の壁面は有孔ボードとOSB合板で仕上げた。住まい手が自由にカスタマイズできるように、余白を残した

 

なかなか想像しにくい内装材の選定は、こうした実験的な進め方によって実地検証し答えを導き出しています。学生にとって結果(どう感じたか、失敗だったのかも含めて)を確認できることが重要で、「家創りプロジェクト」を通して成功体験を積み重ねています。

職人と現場で打ち合わせをする体験もする

 

連載③「地域性を取り入れた住まいの形」はこちら

取材先「学校法人フェリカ学園 フェリカ家づくり専門学校」

建築・インテリアのプロフェッショナルを育成するための学校。学校側が土地を購入し、設計・施工までを行う超実践な家づくりの教育で注目を集めています。
家創り実践科(4 年制)にて家づくりのAtoZ を学びたい学生を全国から募集。3 年次編入枠有り(対象:大学建築学部卒又は二級建築士所有者のみ)。
※フェリカ建築&デザイン専門学校は2022 年4 月より名称を上記に変更する
[公式サイト]https://felica.ac.jp
[所在地]群馬県前橋市南町2-38-2
[TEL]0120-343-750

こちらの記事もおすすめ

【PR】「図面を書く意味とは?」建築教育のリアル①

住宅 建築2021/11/30

「建築学科を卒業したにも関わらず、実務設計の知識がない!」と新人教育で嘆く実務者の声をよく聞きます。この連載では、「実施設計を行い、実際に家を建てる」というユニークな授業を行う学校法人フェリカ学園 フェリカ家づくり専門学校で教える教師に取材。連載1回目は、実践的な授業の中身と図面に描かれる線の大切さについてです。

検査済証のない建物の再生手法

2020/10/29

築年数の古い建物を改修する場合には、何かと法的な制約がつきまとうもの。今回は、数々のリノベーションを手がけ、「住まいのリフォームコンクール」で審査委員を務める中西ヒロツグ氏に、そのポイントを伺いました。

【PR】「高性能グラスウールの効果を徹底分析」木造の断熱改修②

住宅 建材2021/05/31

築40 年の木造戸建住宅を断熱改修。温熱環境の変化の実測結果をレポートします。今回は、温熱環境の改善と省エネ化の研究を第一線で行う前 真之氏(東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 准教授・博士[工学])に解説いただきます。

電気代を深堀りしたら見えてきた!① ウクライナ侵攻は我が家の電気代に影響するの?

連載2022/06/24

最近、電気代が高くなった・・・そう実感している人は少なくないでしょう。電気は、私たちの暮らしに欠かせないエネルギー。その価格に無関心ではいられません。この連載では、電気代を深堀りし、これからの住まいと暮らしを考えていきます。

「それぞれの居場所をつくる」お洒落で落ち着くカフェ空間のつくりかた④

2020/06/30

慌ただしい日常を離れて、ゆったりと時間を過ごせるカフェ。「カフェのような家に住んでみたい」という需要も高まっています。ここでは、うちカフェの第一人者「cafenoma」に究極のカフェ空間のつくりかたを徹底取材。そのポイントをまとめました。

Pick up注目の記事

Top