「建築知識」の連載「丸山弾の住まいのしつらえ方」がイラストのカラー化、写真を大幅に追加して書籍化しました。
たとえ兼建築実務者であっても、ほかの作家の図面から空間を読み解くのは難しいものです。そこで本書では建築家によるありったけの手描きのアイソメ図やパースを掲載しています。「ここまで考えていたのか」と誰もが唸る丸山弾建築設計事務所のこだわりポイントを、本書掲載のスケッチを使って少しだけ紹介します。
本書カバー。写真は「那須の家」のダイニング。
まずは配置から。この家は、南に田んぼが広がり、東には河原と空、西には山の遠景、北には屋敷森がある敷地に建っています。そこで南北は眺める窓。北側はキッチンに立ちながら屋敷森がうかがえる細長い水平窓としています。
共働き家庭では、平日のダイニング・キッチンは慌ただしい空間です。そのためすぐ隣にリビングを設けると、慌ただしい雰囲気が伝わってくつろげません。2部屋の間に緩衝空間を設けることで、リビングが落ち着ける空間になります。
木立に囲まれた別荘の階段。スキップフロアの各フロアの階段正面に窓を設け、外のカツラの木、クリの木を見せています。階段を上る人の視線を引き付けることで、階段も楽しい空間になります。
90点を超えるスケッチは、どれも図面や写真では伝わらない空間のつなぎ方、光の廻し方、風の通し方が描かれています。なぜそこに窓を設けたのか? 何のための段差? なぜ天井高に変化を付けたのか?などデザインの理由を考えながら、読んでみると楽しいです。ご一読ください。